ガイアホールディングス 郡山 龍代表取締役インタビュー

投稿:2012/03/16 15:14

櫻井英明のトップ放談 第12回

第2の創業に燃える
「知の時代」のトップランナー

ガイアホールディングス株式会社
代表取締役CEO
郡山 龍(こおりやま・りゅう)

1963年鹿児島県生まれ。早稲田大学在学中の86年にアプリックス(現ガイアHD)を設立。同年にマイクロソフトへ入社しビル・ゲイツ氏の下、OS2の開発責任者を経て、アプリックスを再始動。2011年にはグループ会社のジー・モード代表取締役社長にも就任。趣味はバイクとパン作り。
※株式会社アプリックスは2011年4月1日付で新設分割の方法で会社分割。これに伴い同日付でガイアホールディングス株式会社に商号変更。

組み込みソフトとモバイル端末向けコンテンツを主に事業展開するガイアホールディングス。「クラウド元年」と言われ、再びITが注目される中、トップに復帰した創業者の郡山代表にビジョンを伺った。

──御社の業態、企業理念は?

ガイアホールディングスは2011年4月に持ち株会社としてスタートしました。傘下には組み込みソフトのアプリックス、ゲーム関連のGモードなどがあります。グループ内の経営資源の有効配分により効率的な経営を行うとともに、グループ企業各社が提供するゲームやアニメーション等のエンターテインメント・コンテンツ・サービスと、それらのコンテンツサービスを快適にご利用いただくための技術、品質、先進的基盤を提供すること、それが、私たちが目指すものです。グループ内の各々の事業が高い補完性を持ち、グループ企業各社のコンテンツ、サービス、製品、技術等を有機的に連携することで、全世界の人々に新たなエンターテインメントを、そして新たなライフスタイルを提供できるものと考えています。
1986年に創業した際は「ソフトウェアの力であらゆる人々に幸せをもたらす」を共通の目的としていました。その後、グループ内の各事業ごとに分離した時期もありましたが、2009年に「モバイル」を主要ターゲットとして再度結集し、現在のガイアグループを形成しました。アプリックスのソフトウェア技術を基盤にして、Gモードのゲームを提供するという方向です。
アプリックスのソフトウェア基盤技術では組み込みソフトを通じて「物理的な豊かさ」を提供し、Gモードのコンテンツサービスを通じては「精神的な豊かさ」を提供する。結果的に、創業当時の目的であった「ソフトウェアの力であらゆる人々に幸せをもたらす」というキーワード通りの事業形態になりました。
ガイアグループは、「A Smile On Your Face.」というグループスローガンを掲げています。グループ各社が提供するコンテンツ、サービス、製品が、全世界の人々の喜びや笑顔につながるようにしたい、一人でも多くの人々に「心に笑み」を届けたい。それが私たちの願いです。そのためには、誠意を持って真摯にお客様の声を聞き、緊密に連携して、常にお客様の視点に立ち、お客様にとって価値のあるコンテンツ、サービス、製品、技術を提供し続けていくことが大切だと考えています。
私たちガイアグループは、グループ企業各社の強みや持ち味を最大限に活かしたシナジー強化を図り、グループ社員一人ひとりの「チャレンジ精神」と「スピード感」、そして、あふれる「夢」と「志」を源泉に、グループすべてのコンテンツ、サービス、製品、技術等を通じて全世界の人々に「心に笑み」を提供することを目指しています。

──中核となる事業は?

携帯電話やPC向けにソフトウェア基盤技術を研究開発し、販売することです。さらにその技術を利用する多くのコンテンツサービスを世界中の人々に届ける事業も展開しています。対象顧客は主に電子機器メーカーや通信事業者になります。組み込み向けJavaプラットフォーム「JBlend」は日本を始め、欧米でも広範に普及しています。国内の携帯電話市場においては9割以上の搭載率になっています。またスマートフォン向けのソリューション開発などで国内携帯通信事業者や携帯端末メーカーとは強力な関係を維持しています。

──現在の日本経済をどのように見ていますか?

ものを作って海外に売り込むことを仕事にしてきた親父の背中を見て育った身からすると、現状はものすごく変わったと思います。日本の技術を海外に出して外貨を稼いで来た歴史は、いまや逆の構図になったような感があり、複雑な思いですね。かつて世界の最先端を誇っていた日本の技術も、そうではなくなってきています。でもそれはこの国のメーカーの姿勢が世界標準になれなかったということ。海外の人には「日本の製品はオーバークオリティである」とよく言われます。例えば今、テレビに必要とされるのは「倍の性能のものを1.5倍の値段でつくる」ことではなく「欲しい性能のものをよそよりも安く作ること」でしょう。
ものごとの本質、あるいは消費感覚を忘れた製品づくりでは生き残れない。要は「消費者が自分のお金を出すか出さないか」。これからはこれが最も重要になるのではないでしょうか。

──御社の唱える「総合エンターテインメント」について

小説から始まる想像力をかきたてる世界観、コミックから始まるビジュアルな世界観、アニメから始まるダイナミックな世界観。エンターテインメントにはさまざまな形がありますが、当社では「ゲームから始まる多面性のあるリッチな世界観」を提供していきたいと思っています。ゲームというものは一度作ってしまえばアニメやグッズなどありとあらゆるものに応用が利きます。今年の夏には現本社の近くに大きなスタジオを開設する予定です。

──「ディープ・エンベデッド」という言葉については?

世の中の全てのものをインターネットにつなげるということです。近い将来、身の回りにあるすべての機器が繋がる世界が必ず来ると考えています。その世界を実現する技術を自分たちの手で作り出し、世の中を変えていこうという思いです。まずは「チョッとした不便」を「チョッとした便利」に変えていこうということなんです。そのためにネット上のクラウドとシームレスに融合する機能や、プロトコルなどすべての要素を組み込んだICチップを提供していきます。
当社はネットにつなげるためのソフトウェアの開発力には自信がありますし、半導体やモジュールなどのハードウェアの設計も手掛けていますから、まさにピッタリの業態なんです。例えば加湿器の水切れ感知など、何気ない便利さが多分これからは必要にされると思います。だから今は何にでもICチップを埋め込む試みをしている状況です。

──最終的な夢は?

結局、今後も一貫してソフトウェアを作り続けていきたい、ということに帰結します。これこそが当社のコア・バリューです。私は創業以来、何度も代表から離れたり就任したりを繰り返してきましたが、正直、今は一番楽しくて仕方がないんです。今は、本当に仕事がしたくてしょうがない。おそらく近いうちに、誰もついてこれない製品を作りだす自信がありますよ。今年のクリスマスには、当社の新製品が100種類以上使われている。そんな可能性が高いと思っているんです。
ですから、社内では今、ともかく「ガンガン行こう」、「気のすむまで働こう」と皆に言っているんです(笑)。

【取材メモ】

物静かな外見とは違ってエネルギッシュなコメントばかりの取材でした。「今は第2の創業期のような気がします」と、郡山代表の口からは、本当に次から次へと未来展望が語られました。
「半導体をそれだけで売っても利益は限られます。でも半導体を売るのではなくソフトを売るという付加価値をつければ値段は5倍でも10倍でも売れます。単体ではなく、組み合わることによって複合的な価値が生まれるんです。それがこのビジネスの魅力。だから愚直なまでにソフトウェアにこだわります」。
その未来展望が決して夢物語ではなく、少し先には現実化する予兆を感じました。
取材の最後の質問の「今年はクラウド元年ですか」に対して「そう考えています。クラウドもさまざまに組み合わせることで生きてきます。今、当社は体重計とかトースターとかさまざまなものに対して試みをしています。頭の中で考えたすべてのソフトウェアをつくりたいんです。これは宿命ではなくディスティニィなんです」。
今年の元旦の日経朝刊の1面見出し「知が開く未来へ」のトップランナーが今、目の前に現れた気がしました。

[ 会社概要 ]

社名:ガイアホールディングス株式会社
証券コード:3727
公開市場:マザーズ
上場年月日:2003年12月
設立:1986年2月
決算月:12月

●連結業績実績(2011年12月期)
売上高:105億200万円(前年比11.2%増)
営業利益:4億1600万円(前年比97.2%増)
経常利益:3億8400万円(前年比135.6%増)
通期利益:5億1000万円(前年比53.2%増)

●トピックス
組み込みソフトウェアの研究開発、販売およびPC向けソフトウェアの研究開発、販売を行う「ソフトウェア基盤技術事業」と、携帯端末向けゲーム・コンテンツの企画・開発・配信・運営を行う「コンテンツサービス等事業」を展開。今期にグループ入りしたアニメインターナショナルカンパニー制作映画「そらのおとしもの」もヒット。

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配信元: みんかぶ株式コラム