日本アジア投資 松本守祥社長インタビュー

投稿:2011/10/12 16:53

これまで30年間の成果がようやく表れてきました
中国ストーリーのある日本企業と日本ストーリーのある中国企業に投資する

略歴
日本アジア投資株式会社
代表取締役社長
松本守祥(まつもと・もりよし)
 
1959年生まれ。1989年に、ジャパンライン株式会社(現商船三井)から日本アセアン投資株式会社(現日本アジア投資)に入社。2000年6月より取締役、2002年から海外業務管掌取締役としてJAICグループの海外投資を統括。2007年から2010年まではJAIC America, Inc.のPresident & CEOを兼任。2009年6月より現職。
 
──御社の業態は?

当社は1981年に経済同友会を母体として設立されました。以来、日本、アジアを中心にベンチャーキャピタルとして、起業家や企業経営者にエクイティの資金と経営支援を提供してきました。また、国内外の金融機関、事業会社、政府系機関等の多様な投資家をファンドの出資者として迎え、彼らとの密なコミュニケーションを通じてそのニーズを把握し、他社にはないユニークな投資機会を提供し続けています。現在では投資領域を拡大し、ベンチャー企業など我が国の新産業の担い手たちに加えて、今後も継続して高い成長を維持していく企業などにも、それぞれのステージに合わせた成長戦略を提案しています。
経営理念の一つは「日本とアジアを中心とする事業戦略を通じて、新しい産業を育成しまた産業の活性化を支援する」。さらに「起業家・事業者を支援しソリューションを提供することで長期の信頼関係に基づくパートナーとなり、もって新しい価値を社会に提供する」という言葉も入っています。

──今年は設立30周年を迎えられました

この30年間に経済のグローバル化は急速に進み、日本企業によるアジアでの事業展開が急拡大し、一方でアジア各地の企業による日本企業との提携ニーズも高まっています。今やアジア戦略の強化は全国各地域の中小・中堅企業にとっても避けることの出来ない大きな課題となっています。
そういう意味ではグローバルネットワークを持つプライベートエクイティのプレイヤーとして当社の果たすべき役割はますます大きくなっていくと考えます。だからこそ、30年という歳月の中で培われた当社の歴史と信頼はますます大きな意味を持ってくると確信しています。

──最近の投資状況は?

第1四半期の投資実行が8億3千万円でした。昨年は通期で32億円を投資しましたが、今年はもっと投資を拡大したいと考えています。元々、当社のような業務は長期スパンでみないと難しいビジネス。私は現在のアジア経済は拡大局面にあると見ています。
今、海外13地域の拠点で活動を行っていますが、中国本土だけで5拠点(上海・北京・瀋陽、蘇州、天津)、中国出身職員も本社勤務を含めてグループで21名を擁しています。(第1四半期末でグループ連結従業員数は130人)。
今期に入って増額または設立したファンドはDFJ-JAIC(4月)、CITIC国電(6月)、天津(8月)と合計約50億円。それから下期には瀋陽ファンド(約40億円を予定)の設立も予定しています。因みに前期に設立したファンドは1本で13億円でした。新しいファンドの設立には大体1年以上の時間がかかりますから、前期から取り掛かってきたものがようやく今期、具体化してきたのです。これまで大変厳しい環境下でもファンド募集を続けてきた成果がようやく現れてきました。現在、取り組んでいるプロジェクトも多く、来期にはこれらが芽を出してくるのではないかと期待しています。


──ファンドの状況について

日本国内はIPO市況もご承知のような状況なので、投資先企業のIPOを推進し、IPOによって投資回収する、という単純なビジネスは成立しなくなってきています。
一方で企業や銀行が投資に回せる余剰資金は、国内でも海外でも、枯渇している訳ではありません。当社のファンドでも、47億円のベンチャーキャピタルファンドのIF4号や、バイアウトファンドのJPE3号など投資余力が十分にあります。しかし現在は、お金以上の経営資源をいかに提供できるかどうかで、エクイティパートナーに選ばれるかどうかが決まるという状況になってきているのです。

──事業戦略について

そんな中、当社ではいわゆるベンチャー企業だけではなく、既に事業基盤を有し、次のステージへの成長機会を求める企業への投資を強化しています。例えば、中国ストーリーのある日本企業、日本ストーリーのある中国企業への投資などを中核的に拡大しようとしています。中国ではプライベートエクイティビジネスが大変過熱していて、IPOは活況ですが、近々IPOする、と言われている企業に投資をすると競争が激しく、高値掴みになってしまう可能性も少なくありません。
そういう意味では当社が新しく拠点をおいた瀋陽は、日本と非常に親和性が高く、まだまだこれから発展する地域です。私たちは中国政府のお墨付きを得て、有力企業へ他の投資会社より早くアプローチができるので、今すぐに成果は出ないかもしれませんが、中長期的にみて大変期待しています。

──分野を特化したものもありますね

分野における特化では、例えばバイオ・ヘルスケア分野やアグリベンチャーへの投資ですね。バイオでは産学官に専門家のネットワークを有し、ベンチャー企業の技術を求めている事業会社とも協働しています。
また、グループ会社のJAICシードキャピタル株式会社は、インキュベーション支援と、シードステージにあるベンチャー企業への投資を行なっていますし、現在運用中の、「アグリ・エコサポートファンド」では、新しい農業ビジネス・環境ビジネスへ投資しています。
そして目的における特化では、海外進出支援に注力しています。海外で事業展開する中小企業に対し、「中小企業グローバル支援ファンド」から投資し資金調達支援とグローバル化に必要なビジネス支援・育成を合わせて行うことにより、投資先企業の海外における競争力強化と更なる成長をサポートしています。

──他社との違い、今後の課題は?

独立系として、グループ関連企業の制約がないため、投資先企業にとって最適な布陣によるサポートを提供できるという点、そしてアジア全体に渡る投資体制です。既にアジア地域での拠点網と事業基盤が確立されているからこそ、出資者や投資先企業の様々なニーズに対応できるのです。
今後の課題は、第一に投資パフォーマンスの向上、次に旗艦ファンドの設立、そしてグロースエクイティ(事業基盤を有する持続的成長ステージの企業に対する一定規模以上の投資)。これらが、次の成長に向けての最重点施策であると考えています。

取材メモ

「中国とアジアそして日本との架け橋になる」と松本社長。「日本政府は、低成長の日本国内で完結する投資にこだわるのではなく、シンガポールのように国家として収益性の高い投資を行うことで、高成長を目指す必要があるのではないでしょうか。そして、御社がその先駆けとしての地位になることが必要では?」の質問を松本社長は否定されませんでした。
アジア地域へのベンチャーキャピタルのパイオニアとしてのこれまでの同社の歴史と蓄積。そして過去の種まきの成果がいつ花開くか? 同社の未来に期待したいと思います。

会社概要および業績

社名 日本アジア投資株式会社
証券コード 8518
公開市場 東証1部
上場年月日 1996年9月
設立 1981年7月
決算月 3月
連結業績予想(2012年3月期)
公表せず
連結業績 (2011年3月期)
営業収益11,764百万円(前年同期比38.8%)、営業利益1,154百万円、経常利益111百万円、通期純利益-2,039百万円
トピックス
8月に中国の政府系投資ファンド等と共同で、環境関連技術などの産業分野の企業に投資を行う中国人民元建てファンド「天津ファンド」を設立。

 
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配信元: みんかぶ株式コラム