S&P 500月例レポート(2018年4月配信)
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
2018年3月: 求めよ、さらば与えられん
求めよ、さらば与えられん ― いや、少なくとも発表はされました。関税の対象が全ての地域になるのか広範囲に及ぶのかは、舞台裏で交渉が進んでおり(北米自由貿易協定:NAFTA、EU、中国)、兵站(ロジスティックス)が練られている最中であるため、依然として不明です。
一方、ウォール街では交渉は行われず、投資家は具体的な内容のない報道に反応し、なぜか市場に悪影響が及ぶという前提で取引が行われました。ニュースは何もないものの ― 不透明感は市場の最悪のシナリオです ― 状況を悪化させたのは、これまでの上昇(強気相場は2018年3月9日に9年目に突入)に対する緩やかな値固め(というのが一部の見方)の持続と、ボラティリティの上昇です。ボラティリティは最低1%上昇した日が12日、最低1%下落した日は11日ありましたが、2017年はそれぞれ4日ずつでした。さらに2%台を見ると、2%以上の上昇は1日、2%以上の下落は5日あったのに対して、2017年は2%変動した日が皆無でした。
ウォール街では貿易戦争への懸念が高まり、相場は売られたものの落ち着きを保っており、仮にこれを急落に分類したとしても「相対的に」通常の急落と言えるでしょう。市場全体のトーンは依然として概ね楽観的ですが、保有銘柄の少なくとも一部を売却している向きがいるのは明らかです。というのは、貿易戦争はないだろうとの期待以外にも、2週間後に本格化する2018年第1四半期の決算発表で過去最高が更新されると、依然として期待されているからです。また、この季節は相場の押し上げ要因が多く見込まれることもあります(確か「期待しなければ失望はしない」という格言があった気もしますが)。
当局はソーシャル・メディア企業のFacebook(FB)に対する圧力を強めており、米上院はFacebookのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)をはじめ、Alphabet(GOOG, GOOGL)やTwitter(TWTR)のCEOに対して、個人情報の流出問題に関する公聴会で証言するよう要請しました。また、全米37州の司法長官や英国の当局も状況についての調査を行うことを発表しており、こうした動きはさらに広がるとみられます。
これまでプライバシー保護に関する問題への対応や規制が不十分な中、情報技術関連企業は成長を許されてきました。現段階では、ようやく「議論」が始まったばかりで、どのような法律が制定されるのか、ビジネスモデルにどのような影響があるのか、全く不明です。明らかなのは、この問題がしばらく続くという点です。多くのCEOがプライバシー方針に関する議論や対応に追われ、他の事業に集中する時間を奪われることになるでしょう。
●3月のまとめ
○3月のS&P 500指数は2,640.87で取引を終え、2月末の2,713.83から2.69%下落し(配当込みのトータルリターンはマイナス2.54%)しましたが、下落率は2月のマイナス3.89%(同マイナス3.69%)から改善しました。S&P 500指数は過去3ヵ月では1.22%下落と(同マイナス0.76%)、過去3ヵ月ベースでは2016年10月(マイナス2.18%)以来、第1四半期としては2009年第1四半期(マイナス11.67%。S&P 500指数の終値は797.87)以来の大幅な下落となりました。過去1年では11.77%上昇し(配当込みのトータルリターンは13.99%)、2016年11月8日の大統領選当日(終値2,139.56)からは23.43%(同26.96%)の上昇となりました。
S&P 500指数は3月中に最高値を更新することはなく、終値での最高値更新は年初来で14回となっています(直近の高値更新は2018年1月26日で2,872.87)。最高値の更新は2017年に62回あり(1995年の77回に次ぐ過去2番目の更新回数)、大統領選以降で84回となりました。ダウ・ジョーンズ工業株価平均は24,103.11ドルで取引を終え、2月の24,943.71ドルから3.70%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス3.59%)。2017年12月末の24,719.22ドルからは2.49%の下落となりました(同マイナス1.96%)。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均も3月中に最高値を更新することはありませんでした(年初来では終値で最高値を11回更新しました。直近の高値更新は2018年1月26日で26,616.71ドル)。最高値の更新は2017年に71回と過去最高を記録し(1896年以降、1995年は69回)、大統領選以降で99回となっています。
○S&P 500指数の時価総額は3月に6,670億ドル減少して22兆4,960億ドルとなり、世界の株式市場の時価総額は1兆2,640億ドル減少して(このうち6,820億ドルが米国市場の減少分)53兆9,670億ドルとなりました。年初来では、S&P 500指数の時価総額は3,250億ドル減少し、S&Pグローバル総合指数の時価総額は8,230億ドル減少しました(このうち3,830億ドルは米国市場の減少分)。また、大統領選以降では、S&P 500指数の時価総額は4兆190億ドル増加し、世界の株式市場の時価総額は10兆410億ドル増加しました(このうち4兆8,390億ドルは米国市場の増加分)。
○米国10年国債の利回りは2.74%と、連邦公開市場委員会(FOMC)で25bpの利上げが実施される中、2月末の2.88%から低下して月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。
○英ポンドは2月末の1ポンド=1.3989ドルから1.4028ドルに上昇し(同1.3498ドル、1.2345ドル)、ユーロは2月末の1ユーロ=1.2336ドルから1.2303ドルに下落しました(同1.2000ドル、1.0520ドル)。円は2月末の1ドル=109.20円から106.41円に上昇し(同112.68円、117.00円)、人民元は2月末の1ドル=6.3489元から6.2990元に上昇しました(同6.5030元、6.9448元)。
○原油価格は2月末の1バレル=61.77ドルから5.2%上昇して64.96ドルで取引を終えました(同60.09ドル、53.89ドル)。米国のガソリン価格(全等級)は、3月末は1ガロン=2.764ドルと、2月末の2.676ドルから上昇しました(同2.589ドル、2.364ドル)。
○金価格は2月末の1トロイオンス=1,331.80ドルから0.2%下落して1329.40ドルで取引を終えました(同1,305.00ドル、1,152.00ドル)。
○VIX恐怖指数は2月末の19.85から上昇して19.97で月を終えました(同11.04、同14.04)。月中の最高は26.22、最低は19.60でした。
○ビットコイン(価格低下を背景に、市場の関心もやや失われました)は2月末の11,727ドルから下落して7,202ドルで取引を終えました(同13,850ドル、968ドル)。月中の最高値は11,694ドル、最安値は7,033ドルでした。
○ボトムアップベースで算出した1年後の目標値はS&P 500指数が3,010(現在値から14.0%上昇)、ダウ平均は27,718ドル(同15.0%上昇)と、相場が下落する中にあって、底堅さを維持しています。
●S&P500指数
願わくは2018年第1四半期が、2009年3月9日に始まり9年に及んだ長期上昇相場(この間の上昇率は290%、年率換算リターンは16.2%)の“終わりの始まり”ではなく、調整局面であれば良いのですが。少なくともウォール街と私自身はそうであって欲しいと思っています。
2018年1月26日に過去最高値を更新して以降、相場は(控えめな表現ですが)小休止状態です。2009年からの強気相場で、S&P 500指数は202回にわたり終値での最高値を更新しました(2016年11月8日の大統領選挙後では84回、今年に入ってからは14回過去最高値を更新)。そして、正式に調整局面に入り、2018年2月8日に株式市場は高値から10.16%下落しました(前回の調整は2016年2月の10.51%)。現時点ではレンジ内での値動きが続いており、直近の底値からは2.32%上昇したものの、依然として最高値からは8.08%下落した水準にあります。
第1四半期で見ると、S&P 500指数は1.22%下落し(配当込みベースのトータルリターンはマイナス0.76%)、2015年9月(マイナス6.94%)以降で初めて四半期騰落率がマイナスとなりました。
11セクターのうち、9セクターで騰落率がマイナスとなり、電気通信セクターがマイナス8.69%と全セクター中で最低のパフォーマンスを記録しました。なお、大統領選挙以降では3.14%のマイナスとなっています。金利敏感セクターの公益事業と不動産も振るわず、それぞれマイナス4.20%とマイナス5.79%となっています(ただし、大統領選挙後のリターンはそれぞれ2.76%と2.29%のプラス)。金融セクターの第1四半期のリターンはマイナス1.38%でしたが、大統領選挙以降では37.92%上昇しています。エネルギーセクターの四半期リターンはマイナス6.58%、大統領選挙以降でも原油価格が上昇したにもかかわらずマイナス2.39%となっています。
消費者関連の2つのセクターは対照的な動きとなりました。一般消費財セクターの年初来リターンは2.76%、大統領選挙後では28.92%上昇しています。背景には(減税と雇用機会の増加による)所得増が消費活動を一段と刺激するとの期待感があります。一方で、生活必需品セクターの四半期リターンはマイナス7.77%、大統領選挙後の騰落率は0.19%のプラスとなっています。
情報技術セクターもパフォーマンスがプラス(全セクター中で最高)となり、第1四半期は3.20%上昇し、大統領選挙後の騰落率も42.78%のプラスでトップとなっています(ただし、現在は売り圧力にさらされています)。
個別銘柄の動きをみると、値下がりした銘柄数が値上がりした銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は208銘柄、このうち10%以上値上がりしたのは64銘柄、20%以上値上がりしたのは14銘柄でした。値下がりした銘柄数は296銘柄で、10%以上値下がりしたのが93銘柄、20%以上の値下がりは11銘柄でした。全銘柄の第1四半期の平均騰落率はマイナス1.16%となっています。
第1四半期の決算発表(大手銀行は4月13日からの予定)が始まる4月はS&P 500指数が試される展開が予想されます。4月中に指数構成銘柄の3分の2以上が決算発表を行うことになっています。アナリスト予想や会社発表の見通しを踏まえると、法人税減税を背景に好業績への期待感が強くなっています。
市場が注視しているのが、予想される自社株買いの増加(発行株数の減少)に起因するEPSの伸びに比べて、税率引き下げによるEPSの伸びがどの程度になるか、ということです。全般的に、あまりに期待感が強いために、記録的な四半期決算となっても市場に失望感が広がる可能性があります。また、4月に特に注意すべき点として、減税(2月分の源泉徴収税から実施)による所得増加分を消費に回す兆候が家計部門で確認できるかが挙げられます。
過去の実績を見ると、4月は63.3%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は4.26%、下落した月の平均下落率は3.35%、全体の平均騰落率は1.30%の上昇となっています。今後のFOMCのスケジュールは、2018年5月1-2日、6月12日-13日*、7月31日-8月1日、9月25日-26日*、11月7日-8日、12月18日-19日*(*は記者会見が行われる)となっています。
3月にS&P 500指数は2.69%と大きく値下がりしたものの(配当込みのトータルリターンはマイナス2.54%)、下落率は2月の3.89%(同マイナス3.69%)からはむしろ改善しました。この結果に1月に記録した5.62%(同5.73%)の大幅な上昇を加えると、2018年第1四半期にS&P 500指数は1.22%の下落となり(同マイナス0.76%)、四半期ベースでは6.94%下落した2015年第3四半期以来の値下がりとなりました。また、大統領選以降の上昇は23.43%(同26.96%)となっています。
3月は引き続き不透明感が漂い、日中のボラティリティは上昇し、相場と市場の雰囲気の方向性は目まぐるしく変化しました。ボラティリティは相場の変動が少なかった2017年(1%以上の上昇または下落となった日数は全体の3.2%)よりは大幅に高いながらも許容できる水準にとどまりましたが、過去に比べるとやはり高水準となっています(2008年は53%、年初来では38%でしたが、1928年以降の平均は19.1%)。ボラティリティが上昇したとはいえ、市場は冷静で、混乱した様子は見られませんでした。
3月は最高値の更新はありませんでしたが(直近の最高値は2018年1月26日)、再び調整局面入り(10%以上の値下がり)することもなく、広いレンジでの値動きとなりました。現在、S&P 500指数は最高値を8.08%下回る水準となっていますが、9年間に及ぶ強気相場とこれまでの上昇率(290%、年率16.23%、配当込みのトータルリターンは372%、年率18.71%)を考えれば、意外ではありません。
3月は引き続きセクター間の騰落率の差が大きく、最も値上がりしたセクターと最も値下がりしたセクターの騰落率の差は7.86%となりましたが、2月の11.23%、1月の12.34%からは大幅に縮小し、ここ2年間の平均である9.78%を下回りました。3月は11セクター中3セクターが上昇しましたが、相場が乱高下したため、11セクターが揃って上昇した週(3月29日までの週(30日はイースターの祝日)と3月9日までの週)と、揃って下落した週(3月23日までの週)がありました。一方、2月は全セクターが下落し、1月は8セクターが上昇しました。第1四半期を通して見ると、2セクターが上昇し、9セクターが下落しました。
3月は概ねリスクオフ相場となり、高利回り株が追い風を受ける中、最も高いパフォーマンスを示したのは公益事業セクターでした。同セクターは3月には3.40%上昇しましたが、年初来では依然として4.20%の下落となっています。不動産セクターは3.27%上昇しましたが、年初来ではなお5.79%の下落でした。エネルギーセクターは原油価格の上昇が追い風となり、1.55%上昇して3番目に高い上昇率となりましたが、年初来では6.58%の下落でした。電気通信サービスセクターは3月に1.12%下落したことから、第1四半期は8.69%の下落と、全セクターの中で最も低いパフォーマンスとなりました。
消費関連セクターも下落しましたが、下落率は全セクターの平均を下回りました。一般消費財セクターは3月に2.46%下落したものの、年初来では2.86%上昇してプラスのパフォーマンスを維持しました。一方、生活必需品セクターは3月に1.32%下落し、年初来では7.77%の下落となりました。
情報技術セクターは、Facebookの個人情報流出問題(これは今やソーシャル・メディア全体の問題となりつつあります)と利益確定の動きを示す兆候の両方から圧力を受けて、3月は3.95%下落しましたが、年初来ではなお3.20%上昇しており、全セクターの中で最高のパフォーマンスとなっています。金融セクターは3月に3.95%下落したため、年初来のパフォーマンスはマイナスに転じ、1.38%の下落となりました。
銘柄の変動をみると、3月は引き続き値下がりした銘柄数が値上がりした銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は193銘柄(平均上昇率は4.02%)となり、2月の88銘柄からは改善しましたが、1月の381銘柄を下回りました。このうち10%以上値上がりした銘柄数は8銘柄(平均上昇率は16.62%)で、2月の12銘柄を下回りました(1月は85銘柄)。3月に値下がりした銘柄数は312銘柄(平均下落率は4.31%)で、2月の417銘柄(1月は124銘柄)を下回りました。
年初来では、208銘柄(2月は272銘柄)が上昇(平均上昇率は8.68%)し、そのうち64銘柄(2月は91銘柄)が10%以上値上がりしました(平均上昇率は18.25%)。値下がりしたのは296銘柄(2月は232銘柄)で(平均下落率は8.07%)、10%以上値下がりした銘柄数は93銘柄(2月は91銘柄)(平均下落率は14.90%)、このうち6銘柄が25%以上値上がりし、2銘柄が25%以上値を下げました。
●企業業績
2018年の企業業績の見通しは引き続き改善しており、四半期と通年ベースで過去最高を記録すると強く期待されています。近々始まる第1四半期決算の業績予想は年初来で4.9%引き上げられています。これまでのところ、決算期がずれる企業のうち19社が既に発表を終え、そのうち事前予想を上回った企業は16社、予想を下回ったのは2社、予想通りだったのは1社でした。売上高に関しては、18社のうち14社が予想を上回りました。2018年通期への期待感は依然として強く、業績予想は7.1%引き上げられています。
密かに懸念されるのは期待感が強すぎるかもしれないことで、四半期決算が過去最高を更新しても、投資家は満足しない可能性があります。決算シーズンは2018年4月13日(金)に始まります(過去を振り返ると、13日の金曜日に市場は56.2%の確率で上昇しており、全体の平均が52.2%であることを考えれば、多少運が良い日と言えるかもしれません)。まず、Citigroup(C)、JPMorgan Chase(JPM)、Wells Fargo(WFC)などの大手銀行の発表を皮切りに、4月末までには3分の2以上の企業が決算発表を終える見通しです。従来、決算シーズン中は業績動向が相場の流れを決めます。
●トランプ大統領と政府高官
トランプ大統領は鉄鋼とアルミニウムの輸入品が補助金によって米国で不当廉売(ダンピング)されているとして、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課すことを命じる大統領令に署名しました。国内の政治的圧力は強く、関税発動を受けて批判的な見方(および利害関係)が浮上しました。
欧州の数ヵ国が想定される報復関税のリストを発表しましたが、リストには議会と政治的なつながりを持つ米国地域の生産品も対象に含まれています。中国も報復措置をとることをほのめかしています。カナダとメキシコはNAFTA交渉が続く限り、関税の対象から除外されます。EUは鉄鋼とアルミニウムの関税の対象から一時的に除外されており、その間に米国との交渉を行います。それ以外に関税の対象から除外されたのはアルゼンチン、オーストラリア、ブラジルで、韓国は米国の新たな鉄鋼関税からの恒久的な除外を求める交渉を行った最初の国となりました。
貿易戦争をめぐる動きはこれだけにとどまらず、トランプ大統領は中国からの輸入品に600億ドル相当の関税を課すことを命令し、中国企業による米国のテクノロジー企業への投資を制限するための提案を60日以内に公表するようムニューシン財務長官に指示しました。ただし、これは中国との交渉の窓口であるというのが大方の見方です。これを受けて、中国は米国からの輸入製品128品目に対する関税を発表しました(交渉次第では変更される可能性があります)。この措置は2段階からなっており、実際に実施されればそれぞれ30億ドルと19億ドル相当の影響が予想されます(2段階での実施とすることで、交渉の時間を稼ぐことができます)。
米政権内では主要ポストの交代が相次ぎました。トランプ大統領は早朝に発信したツイートで、ティラーソン国務長官(Exxon Mobilの前CEO)の更迭を発表し、後任にマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官を充てるとともに、CIA長官の後任には現副長官のジーナ・ハスペル氏を指名しました(両人事とも議会承認が必要)。また、ツイートで、デービッド・シュルキン退役軍人長官を解任し、後任に大統領専属医のロニー・ジャクソン氏を指名しました。ゲーリー・コーン国家経済会議議長の後任人事(同氏は自らの辞任を表明)に関するツィートはありませんでしたが、大統領は3月14日に、CNBCのコメンテーターで保守系エコノミストのラリー・クドロー氏を後任に起用しました。また、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任し、元国連大使のジョン・ボルトン氏を後任に任命しています。
米上院は銀行規制緩和法案を承認しました(賛成67、反対31)。今回の法案は、ドット・フランク法による中小銀行に対する規制を修正するもので、今後予想される下院案との調整が図られることになりますが、トランプ大統領は署名による法制化の意向を示しています。市場では、今回の規制修正案は中小銀行が対象であるものの、正しい方向に向かう一歩であり、大手銀行に対する規制修正の前触れと受け止められました。上下両院は、2018年9月30日までを期限とする、両党が合意した1兆3,000億ドル規模の歳出法案を承認しました。以前にトランプ大統領が法案に署名する意向を示していたため、大半の議員は2週間の休会のためワシントンを後にしましたが、大統領は法案に不満を表明。ただし、最終的には法案に署名しました。
北朝鮮が米国と協議を行うため、核開発プログラムを凍結する用意があると表明しました。これを受けて、米国は協議開始には核開発の凍結が条件になるとの見解を示しました。その後、トランプ氏に協議のための訪朝を要請し、核・ミサイル開発を停止する用意があるとの北朝鮮のメッセージを、韓国が米国に伝えました。トランプ大統領は非核化協議のため、北朝鮮の金正恩最高指導者と会談を行うことに合意しましたが、具体的な会談の日程(当初は2018年5月までとされた)や場所は依然として未定です。さらにその後、金正恩氏が米国との協議を控えて中国を訪問し(最高指導者就任以降初の外遊)、習近平国家主席と会談しました。また、北朝鮮と韓国は2018年4月27日に韓国で南北首脳会談を開催することを発表しています。
●利回り、金利、コモディティ
米国10年国債の3月末の利回りは、FOMCが25bpの利上げを行う中、2月末の2.88%から2.74%に低下しました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。
外国為替市場では、英ポンドは2月末の1ポンド=1.3989ドルから1.4028ドルに上昇した一方(同1.3498ドル、1.2345ドル)、ユーロは2月末の1ユーロ=1.2336ドルから1.2303ドルに下落しました(同1.2000ドル、1.0520ドル)。円は2月末の1ドル=109.20円から106.41円に上昇し(同112.68円、117.00円)、人民元も2月末の1ドル=6.3489元から6.2990元に上昇しました(同6.5030元、6.9448元)。
原油価格は2月末の1バレル=61.77ドルから5.2%上昇して64.96ドルで取引を終えました(同60.09ドル、53.89ドル)。米国のガソリン価格(全等級)は、3月末は1ガロン=2.764ドルと、2月末の2.676ドルから上昇しました。金価格は、2月末の1トロイオンス=1,331.80ドルから0.2%下落して1,329.40ドルで取引を終えました(同1,305.00ドル、1,152.00ドル)。VIX恐怖指数は月中の最高が26.22、最低が19.60となり、2月末の19.85から19.97に上昇して月を終えました(同11.04、14.04)。
予想されていた通り、パウエルFRB議長率いる新体制の下、FOMCは25bpの利上げを決定し、全会一致でフェデラル・ファンド金利(FF金利)の誘導目標を1.50%から1.75%に引き上げました。四半期毎に公表されるドット・プロットではメンバーの強気度が高まり、今年は4回の利上げ(今後さらに3回)が示唆されました。2019年のドット・プロットの中央値は2.9%(2017年12月の2.7%から上昇)で3回の利上げが示唆され、2020年の中央値は3.4%(同3.1%)で2回の利上げが示唆されました。FF金利の長期見通しは12月の2.8%から2.9%に引き上げられました。
また、FOMCの見通しでは、GDP成長率は2018年が2.7%(12月予想の2.5%から上昇)、2019年が2.4%(同2.1%)、2020年が2.0%(据え置き)と予想されています。失業率に関しては、2018年に3.8%に小幅低下した後、2019年と2020年は3.6%になると予想されています(失業率の長期見通しは4.5%)。コアインフレ率の見通しは、2018年は1.9%に据え置かれた一方、2019年と2020年はともに2.0%から2.1%に引き上げられました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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