フィットネス型デイサービス「レコードブック」急成長
●別宮圭一氏
インターネットインフィニティー 代表取締役社長
団塊の世代が75歳以上に達し国民の3人に1人が後期高齢者となる2025年が間近に迫っている。いまや超々高齢化社会への対応は待ったなしの状況だが、そんななか、「健康寿命の延伸」を掲げ、新たなヘルスケア関連事業を展開しているのが今年3月、東証マザーズに新規上場したインターネットインフィニティー<6545.T>だ。フィットネス型デイサービス「レコードブック」をけん引役に急成長を遂げる同社の別宮圭一社長に事業内容を聞いた。
――まずは会社設立とヘルスケア関連事業を展開するまでの経緯を教えてください
別宮 当社の設立は2001年で、インターネットソフト開発を目的として設立しました。当初はソフトウエアの受託などを展開していたのですが、開業間もない頃、たまたま在宅介護会社のシステム開発を受託し、そこで初めて介護の現場を目の当たりにしました。当時の介護現場はIT化が非常に遅れており、働いている方々のITリテラシーも高くなく、その実状に驚きました。同時に、当社にとっては目の前の景色が、競合企業が少ないブルーオーシャンに見えたことも事実です。今後はヘルスケアや介護の事業領域で成長を図りたいと考えました。しかし、介護業界に対する知識はなく、人脈もない。そこで、私自身が介護士の資格を取り、実際に訪問介護事業に取り組んだのです。
――実際に介護事業に取り組み業界の知識を獲得しようとしたわけですね
別宮 そうです。実際に取り組んで気が付いたのが「ケアマネジャー」という有資格者の重要性です。ケアマネジャーは毎月1回、要介護者を訪問し、ケアプランを作る必要があります。介護保険サービスはケアプランがないと使えません。ケアマネジャーは、膨大な要介護高齢者の世帯と直接かかわっている介護保険制度のキーマンなのです。
そこで当社は、ケアマネジャーの業務支援に向けて05年に「ケアマネジメント・オンライン」というサイトを開設しました。同サイトでは、ケアマネジャーの書類作成のためのツールの提供や業務に関する質問ができるようなコミュニティー作りの支援などを行っています。現在、全国のケアマネジャーの60%の方に加入していただいています。この事業で築いたケアマネジャーの会員基盤を活用して、介護食の大手企業や製薬会社などと共同しシルバーマーケティング支援事業も展開しています。
――ケアマネジャー向けの情報サイトを作り、マーケティング事業を展開したわけですね。そこから、レコードブック事業の展開にどうやってたどり着いたのでしょうか
別宮 当社では、Web事業とともに、在宅サービスを展開していたのですが、やればやるほど介護専業大手と競合することになり、介護の領域をこのまま突き進むべきか悩みました。そんななか、我々のようなベンチャー企業が手掛けるべきなのは、「介護」ではなく「健康寿命延伸」のような分野ではないか、という想いが強まりました。介護の現場では、寝たきりとなる重度の要介護者を数多く見てきました。重度の要介護者にさせないために、もっとやるべきことがあると考えたわけです。そこで一気に軸足を介護予防に傾け、2011年から始めたのがレコードブック事業です。
レコードブックは、介護保険が使える高齢者向けのフィットネスクラブのようなリハビリ型デイサービスセンターです。日本にあるデイサービスセンターは、そのほとんどが重度の要介護高齢者を対象としており、同居する家族の負担軽減を目的に設置されています。当社のレコードブックは、要支援1~要介護2までの一般的に軽度者と呼ばれている方々を対象とし、3時間程度の運動支援を行っています。入浴や食事のサービスは提供しておらず、全く介護施設らしくないことが特徴です。当社のレコードブックのような、介護予防のためのデイサービスセンターは他にはほとんどありません。
――「フィットネスクラブのようなデイサービスセンター」というのは斬新なアイディアですね
別宮 いま団塊の世代の方々が高齢者となり、初めて介護認定をとられる人が急増しています。体のどこかが悪くなって要介護となるのですが、初めてデイサービスセンターに行くと、いかにもお年寄り向けの施設という印象を持たれ、次回からの利用を拒否する方がとても多いのです。そして、自宅にこもってしまい、要介護状態が進んでしまう。そんな負のスパイラルを断ち切りたいと考えたのが、レコードブックです。他のデイサービスセンターには行きたくないが、レコードブックなら行ってもいい、と言っていただける方がほとんどです。
――「レコードブック」の今後の店舗展開は
別宮 現在、首都圏などを中心に76店舗を展開していますが、今後数年はフランチャイズ(FC)も含め年間50店程度の新規出店を予定しています。日本7大都市への出店を進め300店舗を目指します。当社ではレコードブックの出店余地は、全国に1800~2000店舗はあるとみています。レコードブックは、当社の成長ドライバーとなっており、これらの事業を基盤に新たなソリューションの開発にも取り組んでいきたいと考えています。
――「レコードブック」以外の中長期的な成長戦略はいかがですか
別宮 「レコードブック」などを活用していただいたお客様が、定期的に体力測定したデータや記録などを「ヘルスケア・ビッグデータ」として活用させていただき、将来的にはIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの事業に活用できればと考えています。また、健康なアクティブシニア向けフィットネス事業の「スマートタイムズ」や「仕事と介護の両立支援サイト」などの事業も展開していきます。当社では、テクノロジーを活用した「健康寿命延伸」の実現ができればと考えています。よく聞かれるのですが、もしかすると将来的には、投資家の方々によりイメージしてもらいやすい社名に変えることはあるかもしれませんが、いまのところ社名変更は考えていません。
(聞き手・岡里英幸)
●別宮圭一(べっく・けいいち)
1972年4月生まれ。96年4月にアスキー入社。2000年サイトデザイン入社。01年、有限会社インターネットインフィニティー設立。取締役社長。04年、株式会社インターネットインフィニティー、代表取締役社長に就任。
●インターネットインフィニティー
2001年に会社設立。主にヘルスケアソリューション事業と在宅サービス事業を展開。ヘルスケアソリューション事業は、「ケアマネジメント・オンライン」を主力とするWebソリューション事業とレコードブック事業などを手掛ける。特に、リハビリ型デイサービス「レコードブック」が急成長している。17年3月に東証マザーズに上場を果たす。
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