S&P500月例レポート (2017年3月配信)
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
記憶に残る2月
記憶に残る2月となりました。減税と財政拡大への期待を背景に2月のS&P500指数は3.72%上昇し、年初来では5.57%上昇と、トランプ・ラリーは期待先行のトランプ・ホープ・ラリーへと引き継がれました。なぜそれほど印象深い月になったのかと言えば、2016年にS&P500指数は年明け1週目としては史上最悪を記録した後、1月と2月で5.47%下落したからです。結果的に、S&P500指数はこの1年間で22.33%の上昇、配当込みのトータルリターンはプラス24.98%となり、楽観ムードを反映して株価収益率(PER)は2016年の利益に基づくと22.2倍まで上昇しました。市場は19営業日中15日で上昇し、終値で最高値を更新した日は合計9日となりました。情報技術セクターは月初から15日連続で上昇し、19日中16日で上昇を記録しました。同じく注目に値するのは、由緒あるダウ工業株30種平均(NYダウ)が12日連続で終値での最高値を更新したことです。12日連続の最高値更新は1987年1月(ブラックマンデーがあった年)以来のことです。ニュースはトランプ大統領関連が引き続き圧倒的に多いものの、トップ記事は移民などの政治問題が中心で、税金は二番手の扱いです。それでも、減税に対する期待は市場を押し上げるのに十分でした。ただし、エネルギーセクターは例外で、2月は最も振るわず、2.73%下落しました(ニューヨーク証券取引所に上場しているすべての銘柄がプラスという訳ではありません)。M&Aに関するニュースは連日流れてきますが、医療保険大手2社の合併案は合意に至りませんでした。住宅市場は、支援材料となり得る3つの要因の1つである金利が上昇したにもかかわらず、改善を続けました。残り2つの要因は住宅ローン利子の所得税控除と不動産税の控除です。いずれも上限を設定することが検討されていますが、そうした情報に対する市場の反応を見ると、どちらも政治的に自殺行為だと考えられます。3月は忙しい月になりそうです。議会では法案審議が始まります。トランプ大統領が満足する内容になるかどうかは不明ですが、結束力がより強い議会少数派の民主党からはおそらく支持されないでしょう。所得税・法人税の減税に関する議論を開始する前に財源を確保する必要があるため、医療保険関連が最初の争点になるとみられます。議会運営をうまく進めるためには予算、そして債務上限にも考慮する必要があります。まさにこの債務上限問題によって、2013年には政府機関が16日間の閉鎖に追い込まれました。
中央銀行関連では、世界各国の中央銀行の大半が様子見姿勢に終始したようです。ただし、ブラジル中央銀行は政策金利を13.0%から12.25%に引下げました。5カ月間で4回目の利下げです。米国の連邦公開市場委員会(FOMC)は、1月31日~2月1日の2日間の会合で予想通りに政策金利を据え置き、議事要旨によるとセンチメントは「改善」し、「かなり早期の」利上げが見込まれると述べました。議事要旨の公表に続き、月末に複数の連邦準備制度理事会(FRB)高官が「早期の」利上げに言及した結果、3月14~15日のFOMCでの利上げ観測が高まっています。日本の2016年第4四半期GDP成長率は前期比年率1%と予想通りで、2016年通年では1.0%となりましたが、2015年の1.2%からは低下しました。1月の輸出は前年同月比1.3%増、輸入は同8.5%増でした。1月の中国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.5%上昇し、生産者物価指数(PPI)は6.9%上昇しました(6年ぶりの高水準)。米国の第4四半期のGDP成長率(改定値)は前期比年率1.9%で速報値から変わりませんでした(予想は2.1%増)。確報値は2017年3月30日に公表される予定です。基調的なインフレ率は上向いており、1月のPPIは前年同月比1.6%上昇、コアPPIは同1.2%上昇で、一方、CPIは前年同月比2.5%上昇、コアCPIは同2.3%上昇でした。2月の消費者信頼感指数は114.8に上昇しました(市場予想は1月の111.8から111.3に低下)。
住宅市場は引き続き拡大し、1月の住宅着工件数、住宅建築許可件数、中古住宅販売件数(10年ぶりの高水準)には勢いがありました。一方で、新築住宅販売件数、中古住宅販売仮契約指数は予想を下回り、NAHB住宅市場指数も67の予想に対して65となりましたが、それでも拡大を示す50を依然として大きく上回りました。12月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は改善し、前年同月比で5.6%上昇しました。
雇用関連では、1月の雇用統計の非農業部門就業者数は22万7,000人増と、予想の17万5,000人増を大幅に上回りました。失業率は前月の4.7%から4.8%に上昇しましたがなお低水準にとどまっており、専門技術を持つ労働者の不足が引き続き報告されました。一方、ディスカウント百貨店のJ.C. Penney(JCP)は約1,000店舗中140店舗を閉鎖し、6,000人の早期希望退職者を募ると発表しました。
M&Aは活発で、医薬品・日用品メーカーのReckitt Benckiser(RBGLY)は乳幼児向け食品メーカーMead Johnson(MJN)を166億ドルで買収すると発表しました。食品メーカーKraft Heinz(KHC)は英国の消費財メーカーUnilever(UL)に買収を提案しましたが、先方から拒否されました。Kraftは合意を目指す意向を発表しましたが、数日後に断念しました。ハンバーガーチェーンのバーガーキングやドーナツチェーン大手ティム・ホートンズを傘下に持つカナダのRestaurant Brands International(QSR.TO)は、ファスト・フード・チェーンのPopeye’sを18億ドルで買収すると発表しました。すべてのM&A案件がまとまった訳ではありません。医療保険大手Aetna(AET)と同業Humana(HUM)は、独占禁止法上の理由から合併を差し止める判決を受け、340億ドル規模の合併を断念し、Kraft HeinzはUnlivelier(UL)に対する買収提案を取り下げました。また報道によると、欧州連合(EU)はLondon Stock Exchange(LNSTY)とDeutsche Boerse(DBOEY)の合併を承認しない見通しです。
決算関連では、S&P500指数構成企業の96%以上が2016年第4四半期の決算発表を終え、営業利益は低調だった2015年第4四半期から22.5%増益となりましたが、2016年第3四半期からは1.6%の減益でした。現時点で2016年第4四半期の数値は2016年末時点を7.3%下回っています。PERは引き続き高水準にあり、2016年の1株当たり利益(EPS)に基づくと22.2倍、2017年予想EPSに基づくと18.1倍です。業績見通しでは2017年は22.6%の増益、2018年は13.5%の増益が見込まれています。アナリストは新政権の政策の詳細が明らかになるのを待っており、業績予想に大きな修正はありません。しかし、トップダウンの分析を行うストラテジストやエコノミストは、所得税・法人税減税やレパトリ(利益還流)による広範な恩恵への期待を背景に、概ね予想を引き上げています。売上高全体は前年同期比4.5%増、前期比3.8%増で、2016年通年では2.1%増にとどまりました。売上高の拡大なしに最終利益を増やすのはますます難しくなっているため、購入・製造・支出を米国で行うというトランプ大統領の政策が、低迷する売上高の伸び(ただし2016年第4四半期は増加)に寄与することを多くの企業が期待しています。
個別銘柄のニュースとしては、ウォーレン・バフェット氏率いるBerkshire Hathaway(BRK.B)がApple(AAPL)の株式を買い増し、保有株式を1億3,300万株(約180億ドル相当)まで増やした一方、Wal-Mart(WMT)に対する持ち分を減らしました。写真・動画共有アプリSnapchatを運営するSnap(仮ティッカーはSNAP)は、予定されている新規株式公開(IPO)での自社の評価額を最大で220億ドルに設定しました。ホームセンター大手Home Depot(HD)の決算は予想を上回りました。消費者は住宅のリフォーム(これはより大きな話ですが)に対する支出を増やしている模様です。ディスカウントストア大手Wal-Mart(WMT)の決算は、既存店売上高の増加を背景に、純利益は前年同期から減少したものの予想を若干上回りました。同社は、オンライン小売り大手Amazon(AMZN)との競争に向けた投資を拡大しています。S&Pグローバル・レーティングは、Alphabet(GOOGL)の格付けについて、堅調な業績を理由にAAからAAプラスに引き上げた一方、Macy’s(M)の格付けを、業績不振を理由にBBBからBBBマイナスに引き下げました。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは2月にS&P500指数構成銘柄について6銘柄の入れ替えを発表しました。商業施設向け不動産投資信託(REIT)のRegency Centers(REG)を医薬品サービスのEndo International(EMDP)に代えて新たにS&P500指数に組み入れ、また、3月に取引所運営のCBOE(CBOE)とバイオ医薬品企業のIncyte(INCY)を組み入れ、オフィス関連用品メーカーのPitney Bowes(PBI、S&P500指数の算出開始時からの構成銘柄)とエネルギー企業のSpectra Energy(SE)を除外することを発表しました。
その他の注目すべきニュースとして、ダコタ・アクセス・パイプラインの建設計画を進めるために必要な認可が下りました。ギリシャの金融支援をめぐる協議が再開され、新たな改革案(労働市場、年金、税制など)策定のための作業チームを編成することで合意しました。金融支援の次回トランシェ(910億ドル)の支払いは、2017年第3四半期末が予定されています。Amazonは英国事業で新たに5,000人を雇用すると発表しました。これにより同社の英国内の正規雇用者数は2万4,000人となる見通しです。Exxon Mobil(XOM)は原油価格の低調を理由に、2016年末時点の原油・ガスの確認埋蔵量の推定値を2015年比で15%引き下げました。
2月のS&P500指数は上昇が持続し、終値での史上最高値を9度にわたって更新するなど、非常に好調なパフォーマンスとなりました。株価の上昇は幅広い銘柄に及びましたが、市場全体にまでは広がっていません。市場が楽観ムードにある背景には、新政権が公共投資を重視する一方、規制には反対姿勢を取るとの見方が大きな材料となっていますが、今のところ、トランプ大統領率いる政権幹部はこの路線に沿った発言を続けており、議会による当初の反応もこの筋書きに沿っているように見えます。向こう数週間は政策の具体的な内容の発表が求められることになり、まず手始めに、3月26日に発表が予定されている2018年度予算案の概要で、医療保険制度がどのような扱いを受けるかが注目されます。4月28日には2017年度暫定予算が期限を迎えるため、予算が議会で承認されない場合や修正が行われない場合、現在の政府支出のペースを見る限り、政府機関が16日間閉鎖された2013年10月と同様の事態に陥る可能性があります。S&P500指数は2月に相次いで史上最高値を更新して前月末から3.72%の大幅な上昇となり(配当込みのトータルリターンはプラス3.97%)、年初来では5.57%の上昇(同プラス5.94%)、2016年11月8日の大統領選以降では10.47%の上昇(同プラス11.22%)、また、過去1年間では22.33%の上昇(同プラス24.98%)となりました。証券口座の支払い明細書を見て大喜びする投資家もいることでしょう。本稿執筆時点で、28日(取引終了後)のトランプ大統領による議会演説は無難なものになった模様で、3月の市場は引き続き上昇で幕を開ける可能性が高くなっています。ただし議員たちが述べているように、「私たちはツイッターですぐにつながる世界にいます」(でも、一体何とつながっているというのでしょうか)。
セクター別でみると、2月は11セクターのうち9セクターで月間騰落率がプラスとなり、1月の8セクターから増加しました(2016年12月は9セクター)。各セクターのリターンのばらつきは縮小しました。パフォーマンスが最低となったのは2.73%下落したエネルギーセクターで(1月は3.64%下落)、年初来でも6.27%下落と騰落率は最下位でした。同セクターは2016年に23.65%上昇しましたが、依然として2014年末の水準を11.40%下回っています。電気通信サービスセクターも0.39%下落し、下落率は1月の3.50%からは縮小したものの、業界内での競争の持続で利益が圧迫されていることを背景に、年初来では依然として3.87%下落しています。パフォーマンスが最も好調だったのはヘルスケアセクターで、新政権による修正によってオバマケア(医療保険制度)は同セクターにとって対処可能なものとなるほか、実施に時間を要するとの見方から2月は6.21%上昇し、年初来でも8.49%上昇しました。情報技術セクターは、月初から15営業日にわたる連騰を経て2月は4.87%上昇し、年初来では9.42%上昇と騰落率トップとなっています。上昇を主導したのは、過去最高値を更新したApple(AAPL、2月は12.89%高、年初来では18.29%高)でした。金融セクターも、「かなり早期」の段階での利上げと規制緩和(こちらは当面なさそうですが)が予想される中、1月のほぼ横ばい(0.12%上昇)の後、2月は再び上昇基調を回復し、5.01%上昇しました。
株価が上昇した銘柄は広範に及びました。値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を大幅に上回り、両者の差は前月から拡大しました。値上がりは382銘柄(平均上昇率は5.40%)と、1月の327銘柄(2016年12月は302銘柄)から増加した一方、値下がりは123銘柄(平均下落率は4.83%)と、1月の176銘柄(2016年12月は203銘柄)から減少しました。10%以上の上昇は1月の39銘柄から38銘柄(平均上昇率は13.62%)に減少しましたが、10%以上の下落は1月の16銘柄から17銘柄(平均下落率は14.92%)に増加しました。1銘柄が25%以上上昇した一方(1月は4銘柄)、25%以上下落した銘柄はありませんでした(1月は2銘柄)。2月の出来高は前月比0.5%増だった1月から3.6%増加しましたが、過去1年間の平均月間出来高を4%下回りました(ただし、5年平均を3%上回る)。月中の高値と安値の差で見た変動率は昨年1月の2.49%、12月の4.12%から4.40%に上昇しました(過去1年間の平均は4.27%)。1962年以降の年間変動率のチャートに2月と年初来の数値を加えると、今年初めの変動率は55年間で過去最低となったことが分かります。今後、政府の政策発表に伴い市場のボラティリティは高まることが予想されますが、今のところは非常に低い水準にとどまっています。
利回り、金利、コモディティは引き続き活発な動きを見せました。FOMCが利上げは「かなり早期」に行われるとの見方を示しつつも、3月13~14日の会合(この時期には政策の法制化と予算をめぐる動きが本格化する見通し)での利上げに向けた姿勢を後退させ、追加利上げは5月2~3日あるいは6月13~14日の会合になる可能性が高まったことを受けて、金利は低下しました。しかし、2月28日のFRB高官2人の発言を受けて、今や市場では3月利上げが再び有力視されるようになっています。
米国10年国債の利回りは1月の2.46%(2016年末は2.45%)から2.39%に低下して月を終えました。30年国債の利回りも2.98%と、1月の3.07%(同3.07%)から低下しました。外国為替市場の取引は活発で、ユーロは1月末の1ユーロ=1.0796ドルから1.0586ドルに下落して2月を終えました(同1.0520ドル)。英ポンドは1月末の1ポンド=1.2576ドルから2月末は1.2433ドルに下落しました(同1.2345ドル)。円はドルに対して1月末の1ドル=112.68円から下落して112.85円で2月を終えました(同117.00円)。人民元は1ドルに対して1月末の6.8817元から6.8692元に上昇しました(同6.9448元)。金価格は1月末の1,212.40ドルから1,253.40ドルに上昇しました(同1,152.00ドル)。原油価格は1バレル50ドル台前半のレンジで推移し、1月末の1バレル52.80ドルから54.15ドルに上昇して2月を終えました(同53.89ドル)。米国のガソリン価格は、1月末の1ガロン2.326ドルから2月末は2.314ドルに下落しました(同2.309ドル)。VIX恐怖指数は低水準で推移し、1月末の11.99から2月末は12.94に上昇しました(同14.04)。
参考情報|投資家が押さえておくべきポイント
【2月の概況】
トランプ・ラリーは2017年2月も持続し、S&P500指数は3.72%上昇(配当込みのトータルリターンは3.97%)、年初来では5.57%(同5.94%)上昇、3カ月のリターンは7.50%(同8.04%)、1年間のリターンは22.33%(同24.98%)となりました。
グローバル市場は引き続き、大統領選挙後の米国市場のラリーに対する出遅れを取り戻しています。大統領選から2016年末まででのグローバル市場の上昇分の89%(1兆1,300億ドル)が米国市場、残りの11%が(1,300億ドル)が米国を除くグローバル市場でしたが、この割合は年初来では米国市場が51%(1兆2,300億ドル)で米国を除くグローバル市場が49%(1兆1,900億ドル)、大統領選挙後では米国市場が64%(2兆3,600億ドル)でグローバル市場が36%(1兆3,200億ドル)となっています。
3月は医療保険制度と18年度予算案をめぐって、マーチマッドネス(3月の熱狂)が繰り広げられることになるでしょう。トランプ大統領は国防費を540億ドル(約10%)増額する案を提示しており、その財源として国務省などの予算を37%削減することを提案しています。予算教書は3月半ばに議会に提出される予定です。
政治的な対立は深まりつつあります。民主党員が団結の道を探る(「resist(抵抗しよう)運動」)一方で、共和党員からは政策に対する反対意見が上がっており、今後その声は高まることが予想されます。
【2月の重要ポイント】
好むと好まざるとにかかわらず、2月も結局はトランプ月間
==> 株式市場は上昇
○2017年2月27日までに米国を除くグローバル市場は2.83%上昇し、3.90%上昇した米国市場には及びませんでしたが、世界全体の株価を1.68%押し上げました。
・新興国市場は引き続き出遅れを取り戻す展開となり、2月は3.90%上昇、年初来では9.19%の上昇となりましたが、大統領選後の上昇は4.69%にとどまりました。
・先進国市場は2.72%上昇しましたが、米国市場を除外すると1.13%の上昇でした。また、選挙後は9.15%上昇しましたが、米国市場を除外すると5.95%の上昇でした。
・S&P500指数の2月のリターンは3.72%の上昇、選挙後は10.76%の上昇となりました。
○S&P500指数は史上最高値を9回更新し、時価総額が20兆ドルを超え、NYダウも終値での史上最高値を12日間連続で更新しました(1987年1月の12日間連続とタイ記録)。
・VIX恐怖指数は低水準で推移し、12.94と前月比で上昇して2月を終えました(1月は11.99)。
・FOMCが「かなり早期」の利上げを示唆した中で、金利は低下しました。
==> トランプ大統領と政府高官
○イランが最近、弾道ミサイル発射実験を行ったことを受けて、大統領はイランに対し追加制裁を科すことを通告しました。
○トランプ大統領は2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)の見直しを開始する大統領令に署名しました。
○米連邦控訴裁判所が一部の旅行者とすべての難民の入国を制限する大統領令の即時復活を求める司法省の要求を退けたことから、大統領は米国最高裁へ上訴するとみられていました。大統領は差し止めを受けた大統領令に代わり、新たな大統領令を発行すると予想されます。
○トランプ大統領は習近平・中国国家主席との電話会談において、米国の「一つの中国」政策(台湾を国として認めない)を確認しました。
○大統領は一部の医療保険制度の改革を3月半ばに発表することを明らかにしました(減税による歳入減を別の財源で補う税収中立の観点から、税制改革に先立って医療保険制度関連の予算調整が必要)。税制改革はその調整が済んでからとなります。大統領の予算教書は3月13日に議会に提出される「見通し」です。
○ムニューシン財務長官は2017年8月までに税制改革を行う意向であることを明らかにしました。
○大統領は非国防分野の予算削減に言及した際、2018年度(10月~9月)の予算案で国防費を540億ドル(約10%)増額する案を提示しました。
==> 最高値更新
○S&P500指数は終値としての史上最高値を9回(年初来では12回)更新しました。金曜日の終値では3週連続過去最高値を更新し、2,363.64で2月の取引を終えました。
○NYダウは12日連続で終値としての史上最高値を更新し、月末終値は20,812.24となりました。これはブラックマンデー(1987年10月19日にNYダウが22.61%下落)があった1987年の1月に記録した12日連続の最高値更新に並びました。
==> 2017年2月のパフォーマンス
○S&P500指数は1月の2,277.87から3.72%上昇、2016年11月8日終値の2,139.56からは10.47%上昇して2,363.64で取引を終えました。NYダウは1月の19,864.09から4.77%上昇し、20,812.24で取引を終えました。
○原油価格は1月の52.80ドルから2.2%上昇、2016年年末の53.89ドルからは0.1%上昇して54.15ドルで取引を終えました。
○米国10年国債利回りは先月の2.46%から2.39%に低下して取引を終えました(2016年12月は2.45%)
○金価格は1月の1,212.40ドルから3.0%上昇、2016年年末の1,152.00ドルからは8.4%上昇して1,253.40ドルで取引を終えました。
○英ポンドは対ドルで1月の1.2576ドルから1.2433ドルに下落(2016年12月は1.2345ドル)、ユーロは対ドルで1.0796ドルから1.0586ドルに下落(同1.0520ドル)、円は対ドルで112.68円から112.85円に下落しました(同117.00円)。
○VIX恐怖指数は1月の11.99から12.94に上昇しました(2016年年末は14.04)。
○ボトム・アップ分析によるS&P500指数の1年後の目標株価は2,564(現行水準から7.4%の上値余地)、NYダウは21,928(現行水準から5.4%の上値余地)。
==> 各国中央銀行は様子見姿勢
○ブラジル中央銀行は過去5カ月間で4回目となる利下げを実施し、政策金利を13.0%から12.25%に引き下げました。
○しかし、大半の中央銀行は米国(トランプ大統領)の動向を注視しつつ、これまでの政策を維持しました。
・FOMCは「かなり早期」の利上げを示唆し、現時点では3月14日~15日のFOMC会合での利上げが有力視されています(本稿執筆日の28日に状況が一変しました)。
==> 2017年2月の配当は前年同月比で6.30%増、年初来では6.35%増
==> 2016年第4四半期EPS速報(96%以上が発表済み)
○2016年第4四半期のEPSは低調だった2015年第4四半期と比べて22.5%増加しましたが、2016年第3四半期からは1.6%減少しました。
○EPS予想は2017年が22.6%の増益、2018年は13.5%の増益が見込まれています。
・アナリストは政策の詳細が明らかになるのを待っており、業績予想に大きな修正はありません。
・政策がまだ成立していないことから、企業の業績見通しは一層の不透明感を示しています。
・しかし、トップダウンの分析を行うストラテジストやエコノミストは、所得税・法人税減税やレパトリによる広範な恩恵への期待を背景に、概ね予想を引き上げています。
○66%の企業が予想を上回っています(過去平均は67%)。
○50.1%の企業で売上高が予想を上回り、売上高全体は前年同期比で4.3%増収となりました。2016年通年では2.1%増収、2015年は前年比3.1%の減収でした。
==> 成立した買収案件と白紙になった案件
○医薬品・日用品メーカーのReckitt Benckiser(RBGLY)は乳幼児向け食品メーカーのMead Johnson(MJN)を166億ドルで買収する計画を発表しました。
○ドーナツチェーンのティム・ホートンズとハンバーガーチェーンのバーガーキングを傘下に持つカナダのRestaurant Brands International(QSR.TO)はファスト・フード・チェーンのPopeye’sを18億ドルで買収すると発表しました。
○医療保険会社Aetna(AET)と同業Humana(HUM)は、独占禁止法上の理由から合併を差し止める判決を受け、340億ドル規模の合併を断念しました。
○医療保険会社Anthem(ANTM)と同業Cigna(CI)の480億ドル規模の大型合併は、裁判所から差し止められました。Cignaは計画を白紙撤回し、Anthemに対して18億5,000万ドルの違約金と130億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こしました(険悪な事態に陥る可能性も)。
○食品メーカーのKraft Heinz(KHC)は英国の消費財メーカーUnilever(UL)に買収提案を行いましたが、先方から拒否されました。Kraftは合意を目指す意向を発表しましたが、数日後に断念しました。
○報道によれば、EUはLondon Stock Exchange(LNSTY)とDeutsche Boerse(DBOEY)の合併を承認しない見通しです。
==> 1月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比22万7,000人増と、予想の17万5,000人増を大幅に上回りました。
○失業率は、市場予想が横ばいの4.7%だったのに対して、1月は4.8%に上昇しました。
○労働参加率は12月の62.7%から62.9%に上昇しました。
○週平均労働時間は前月比横ばいの34.4時間でした。
○時間当たり賃金は、前月比では予想を下回る0.1%増(予想は12月の25.97ドルから26.00ドルへ0.3%増)、前年同月比では2.5%増加しました。
==> グローバル経済では
○中国国家統計局が発表した1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、2016年12月の51.4から低下して51.3となりました。非製造業PMIは54.5から54.6に上昇しました。
○日本の2016年第4四半期のGDP成長率は予想通り前期比年率1%となりました。2016年通年の成長率は1.0%となり、2015年の1.2%から低下しました。
○1月の日本の貿易赤字額は96億ドルとなりました。輸出は前年同月比1.3%増、輸入は同8.5%増となりました。
○1月の中国のCPIは前年同月比で2.5%上昇、またPPIは同6.9%(6年ぶりの高水準)上昇しました。
○ユーロ圏の2016年第4四半期のGDP成長率は前期比0.4%となり、1月のCPIは前年同月比1.8%上昇しました(欧州中央銀行(ECB)のインフレ目標値は2.0%)。
○英国の2016年第4四半期のGDP成長率は速報値の前期比0.6%から同0.7%に上方修正されました。
○OPECの月次報告によると、加盟国は減産合意を(概ね)遵守しており、産油量は3%減少しました。
==> 経済指標関連では
○2月のマークイット製造業PMIは予想の55.5には届かず、54.3となりました。1月のISM製造業景況指数は予想の55.0を上回る56.0となりました。
○1月のマークイットサービス業PMIは12月の53.9から上昇して55.6となりました。ISM非製造業景況指数は56.5と、予想の57.0を下回りました。
○基調的インフレ率は上向いており、1月のPPIは前月比0.6%上昇し(予想は0.3%上昇)、前年同月比1.6%の上昇となりました。コアPPIは前年同月比で1.2%上昇しました。
○1月のCPIは予想の前月比0.3%上昇に対して0.6%上昇しました。前年同期比は2.5%上昇となりました。コアCPI(食品とネエルギーを除く)は前年同期比2.3%上昇となりました。
○米国の1月の輸入物価指数は前月比0.4%上昇(予想は0.2%上昇)、前年同月比3.7%上昇となりました。輸出物価指数は前月比0.1%上昇(予想通り)、前年同月比2.3%上昇となりました。
○12月の建設支出は前月比0.2%減、前年比では4.2%増となりました。
○1月の鉱工業生産は前月比0.3%減(予想は前月比横ばい)、設備稼働率も12月の75.6%から75.3%に低下しました。
○2016年第4四半期の労働生産性は前期比年率で1.3%上昇しました。単位当たり労働コストは1.7%の上昇となりました。
○12月の製造業新規受注は予想の前月比0.9%増に対し、同1.3%増という力強い伸びを見せました(11月は2.3%の低下)。
○1月の景気先行指数は予想の0.4%上昇に対し、0.6%の上昇となりました。
○2016年第4四半期のGDP成長率の改定値は速報値と変わらずの前期比年率1.9%となりました。予想では速報値を上回る2.1%が見込まれていました。確定値は2017年3月30日に発表予定です。
○1月の自動車販売台数は予想通りに2016年12月の年率換算1,840万台から減少して、同1,760万台となりました。
○1月の小売売上高は予想の前月比0.1%増を大幅に上回る同0.4%増となりました。自動車を除いた売上高は予想の前月比0.5%増に対して、同0.8%増となりました。
○1月の財の貿易収支は692億ドルの赤字となりました。輸出が0.3%減少したのに対し、輸入は2.3%増加しました。
○1月のNFIB中小企業楽観度指数は、2016年12月の105.8を下回る104.5と予想されていましたが、12月を上回る105.9となりました。
○トランプ大統領は2018年度(10月~9月)の防衛費を540億ドル(約10%)増額する方針を明らかにしました。また、国防費以外の分野ではコスト削減を進めると述べており、国務省予算を37%削減すると報じられています。大統領の予算案は3月半ばに明らかになる見通しです。
○2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は、1月の111.8を下回る111.3の予想を上回って、114.8となりました。
==> 住宅市場関連では
○2月のNAHB住宅市場指数は1月の67から低下して65となりました。とはいえ、引き続き拡大を示す50を大きく上回っています。
○1月の新築住宅着工件数は予想の年率換算123.2万戸を上回る124.6万戸となりました(ただし、12月の改定値127.9万戸は下回っています)。住宅建築許可件数も予想を上回りました。予想の年率換算123.3万戸に対して128.5万戸となりました。
○1月の中古住宅販売件数は前月比3.3%増加し、年率換算569万戸と10年ぶりの高水準となりました。予想は558万戸でした。前年比では3.8%増となりました。
○1月の新築住宅販売件数は年率換算55万5,000戸と、予想の57万6,000戸を下回りましたが、12月の53万6,000戸は上回っています。
○一方、1月の中古住宅販売仮契約件数は前月比2.8%減少し、予想の1.1%増を下回る失望的な結果となりました。
○12月のFHFA住宅価格指数は予想通り前月比0.4%上昇し、前年同月比でも6.1%上昇と好調です。
○12月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は前月比0.3%上昇し、前年同月比では5.6%の上昇となりました。
==> S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、商業施設向けREITのRegency Centers(REG)を新たにS&P500指数に組み入れた一方、医薬品サービスのEndo International(EMDP)を同指数から除外しました。また、3月に取引所運営のCBOE(CBOE)とバイオ医薬品企業のIncyte(INCY)を組み入れ、オフィス用品メーカーのPitney Bowes(PBI、S&P500指数の算出開始時からの構成銘柄)とエネルギー企業のSpectra Energy(SE)を除外することを発表しました。
==> 個別企業では
○食肉加工大手のTyson Foods(TSN)は、証券取引委員会が同社の家禽の価格設定に係る癒着行為に対する申し立てについて、現在実施中の調査に関連していると思われる召喚状を送達したことを明らかにしました。
○バフェット氏が率いるBerkshire Hathaway(BRK.B)はApple(AAPL)の株式を買い増し、保有株数は1億3,300万株(約180億ドル)となりました。同社はWal-Mart(WMT)に対する投資を減らしました。
○通信大手Verizon(VZ)は数年前に一度断念したデータ利用制限なしの定額プランの提供を開始しました。業界内での競争への対応を迫られての動きで、AT&T(T)もこれを受けて事業戦略の見直しに着手しました。
○Snapchatを運営するSnap(仮ティッカーシンボル: SNAP)はIPO価格を220億ドルに設定しました。
○ホームセンター大手のHome Depot(HD)の決算は予想を上回りました。消費者は住宅のリフォーム(これはより大きな話ですが)のための支出を行ったと思われます。同社はまた配当を引き上げ、自社株買いの規模も拡大しました。
○Wal-Mart(WMT)の決算は、既存店売上高の増加を背景に、純利益は前年同期から減少したものの予想を若干上回りました。同社はAmazon.comとの競争のために投資を拡大しています。
○ディスカウント百貨店のJ. C. Penney(JCP)は、約1,000店舗中140店舗を閉鎖し、6,000人の早期希望退職者を募ると発表しました。
○S&P レーティングはAlphabet(GOOGL)の格付けについて、堅調な業績を理由にAAからAAプラスに引き上げた一方、Macy’s(M)の格付けを、業績不振を理由にBBBからBBBマイナスに引き下げました。
==> その他の注目材料は以下の通りです
○ダコタ・アクセス・パイプラインの建設計画を進めるために必要な認可が下りました。
○ギリシャに対する金融支援をめぐる協議が再開され、新たな改革案(労働市場、年金、税制その他)を推進する作業チームを編成することで合意しました。次回の融資は2017年第3四半期末に実施される予定です。
○Amazon(AMZN)は英国事業で新たに5,000人を雇用すると発表しました。この結果、同社の英国内の正規雇用者数は2万4,000人となる見通しです。
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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