S&P500月例レポート(2017年1月配信)

S&P 500®

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
 

2016年12月: 踊るトランプ氏

 シャンパンの栓を開け、クラッカーを鳴らし、誰かれ構わず隣にいる人とハグしましょう(男でも女でも、民主党員でも共和党員でも、キャピタリストであろうとなかろうと、そして地球人だろうが宇宙人だろうが)。2016年は気楽な1年ではありませんでしたが、いつだって負け組よりも勝ち組について議論したり振り返ったりする方が良いものです。年明けは史上最悪の週でスタートし(1週間で相場は5.96%下落し、2月11日には年初来10.51%下落して年間の最安値をつけました)、さらに有権者の予想を覆す選択(Brexitと米国大統領選挙)を何とか乗り切った2016年は、全体として見れば勝ち組と言える1年となり、S&P500は9.54%上昇しました(配当込みのトータルリターンは11.96%)。2016年が後世に何によって記憶されるかと言えば、イベント予想がことごとく外れた年としてではないでしょうか。S&P500は終値としての史上最高値を18回更新しました。11月8日の大統領選投票日前に10回、そして選挙後に8回です。ダウ工業株30種平均(NYダウ)は、終値としての史上最高値を26回にわたり更新し(大統領選挙前に9回、選挙後に17回)、2万ドルまであと一歩と迫り、大台突破の期待を2017年につなげました(弊社は今年の大台達成を期待しています)。

 しかしながら、こうした宴を楽しんだのは明らかに米国の投資家に限られたようでした。世界の株式市場は、S&P Global Broad Market Index (BMI)でみると2016年に6.10%上昇しましたが、米国株の上昇分10.30%を除くと、上昇率は1.79%となっています。より詳細まで見てみると、大統領選挙後の株式市場のパフォーマンスは米国株に大きく左右されていました。11月11日以降のS&P Global BMIの上昇率は2.97%でしたが、同期間中の米国株の上昇分である5.46%を除くと、わずか0.36%の上昇に過ぎませんでした。大半の人にとって、こうした著しい上昇率の違いは、トランプ氏が次期大統領に選出されたことにその原因がありました。トランプ次期大統領は2017年1月20日に正式に就任しますが、その政策は米国の経済と雇用に焦点を絞ったものになると考えられます。国内の支出を拡大し、規制緩和を通じて経済を刺激し、海外から雇用を取り戻し、資本の回収(本国送金)を目指すと予想されます(とはいえ、これまでトランプ氏にまつわる問題を正確に予測することは困難でした)。

 米国市場はトランプ氏の政策に対する期待感から買われてきました。その一方で、一部の海外市場では売りが膨らみました。このような期待先行の相場では、その後に政策が確実に実行される必要があります。通常であれば、市場は2017年第1四半期(2月下旬から3月上旬)に現在の相場上昇を下支えする何らかの材料を確認する必要があると考えられます。それは立法を通じてか(2017年1月3日に、新たに選出された議員による新議会がスタート)、もしくは大統領令の発動によってかもしれないし(トランプ氏は2017年1月20日に大統領就任の宣誓を行う)、あるいは2016年第4四半期の決算内容 . 結果よりも2017年の見通しの方が重視される可能性も . であるかもしれません。大方の意見が一致すると考えられるポイントの1つとしては、2017年にはボラティリティが高まり、イベントを材料に各セクターが(サブセクターレベルまで)独自の値動きを見せるとの見通しが挙げられます。メディアの報道や政策が(良かれ悪しかれ)極端化するのに伴い、市場が乱高下する展開も予想されます。2017年の相場では銘柄選択が最も重要になるでしょう。インデックス(汎用型も特化型)は、上値余地を数ポイント分あきらめることで下値を固められるため、一部の投資のヘッジや下値の維持といった目的のために活用することになりそうです。

 2016年の各セクターの動向を振り返ると、11セクターのうち10セクターで年間騰落率がプラスとなりました。騰落率最下位はヘルスケアセクターで年間下落率は4.36%でした(大統領選挙後は0.95%上昇)。バイオ医薬品や処方薬の高い薬価をほとんどの人が非難対象としたからです。借入レバレッジが拡大している不動産セクターは騰落率がマイナスになるのをギリギリで回避し、年間騰落率は0.005%のプラスとなりました。金利が上昇し、こうした傾向が今後も続くとの見方が背景にはありました(とはいえ、金利は引き続き比較的低水準にあり、同セクターにとっては脅威ではなく費用)。騰落率首位は年間上昇率23.65%を記録したエネルギーセクターでした。原油価格が2015年終値の37.06ドルから45.4%上昇して53.89ドルとなったことが追い風となりました。ただし、エネルギーセクターは2014年末の水準を依然として5.47%下回っています。金融セクターも大統領選挙後の相場上昇のけん引役となりました。トランプ氏の勝利によって金融規制とTBTF(大き過ぎて潰せない)指定基準の緩和が進むとの期待感から選挙後に16.51%上昇し、年間騰落率は20.14%に達しました。2016年2月11日に株式市場が年初来安値を付けた当時の金融セクターの年初来騰落率は17.67%のマイナスでしたが(S&P500は同10.51%のマイナス)、その後に金融セクターは45.92%値上がりしたことになります。

 銘柄ベースでも株価上昇のすそ野が大きく拡大しました。年間騰落率がプラスとなった銘柄は362銘柄となり、そのうちの262銘柄が10%以上値上がりし(2015年の139銘柄から増加)、さらに159銘柄が20%以上値上がりしました(2015年の45銘柄から増加)。値下がりした銘柄数も2015年の282銘柄から141銘柄に減少し、そのうち10%以上値下がりした銘柄数は69銘柄(2015年の104銘柄から減少)、20%以上値下がりした銘柄は31銘柄となりました(2015年は120銘柄)。

 過去の1月相場の動きをみると、62.5%の確率で株価は上昇しています。月間騰落率がプラスとなった1月の平均上昇率は4.15%、マイナスとなった1月の平均下落率は3.96%となっており、これまでの1月の月間騰落率の平均は1.11%の上昇となっています。2017年1月には新議会がスタートした後に、新大統領が就任し、経済に対するアプローチも刷新され、70%の企業が決算報告と業績見通しの発表を行う予定です。意地の悪い言い方をするつもりはありませんが、2016年1月は散々な月でした。年明け初日に相場は1.53%値下がりし、その週だけで5.96%という過去最悪の下落を演じました。こうした流れは2月に入っても続き、2016年2月11日には年初来騰落率が10.51%のマイナスに達しました。足元では相場に対する楽観的な見方が広がっていますが、果たして2017年1月に相場はどのように動くのでしょうか?その答えはもうすぐ分るでしょう。どうぞ良い休暇をお過ごしください。そして新しい年の株式投資での健闘を願っています。


 S&P500指数関連では、昨年末にサンタクロースラリーは見られず、1年最後の週は1.10%の下落という、例年とは違う年末を迎えましたが、昨年はトランプラリーの効果により大統領選挙以降では4.64%上昇しています。12月は2,238.83で取引を終え、11月の2,198.81から1.82%(配当込みのトータルリターンは1.98%)上昇となりました。年間では、9.54%(同11.96%)上昇し、2015年の0.73%下落(同2.11%上昇)から大きく好転し、特に年初来で10.51%安となった2016年2月11日の底値から目覚ましい回復を見せました。

 11セクターのうち9セクターで月間騰落率がプラスとなり、S&P500が3.42%上昇した11月の7セクターを上回りました。12月は(11月と異なり)トランプ次期政権の掲げる「米国ファースト」のメッセージが広く浸透し、小幅ではありましたが市場全体が上げ潮に乗ったとみられます。中でも最も上昇したのは電気通信サービスセクターで、規制緩和に加えてアンチトラスト問題への懸念が軽減するとの予想から12月は8.09%、年間では17.81%、それぞれ上昇しました。11月に13.67%という際立った上昇をみせた金融セクターは、12月にさらに3.75%上昇しました。年間では20.14%の上昇となり、特に選挙以降だけで16.51%上昇しました。エネルギーセクターも2016年は文句なしの勝ち組で、年間では23.65%上昇、12月も1.80%上昇しました。ただし、2015年の下落分を全て取り戻すまでには至らず、2014年末比ではいまだ5.47%安の水準にあります。ヘルスケアセクターは12月に0.60%上昇しましたが、年間では4.36%の下落となり、年間騰落率では最低のセクターとなりました。不動産セクターは12月に3.80%上昇したおかげで、年間では0.005%上昇と辛うじてプラス圏に入りました。12月に最も不調だったのは素材セクターで、0.13%下落しましたが、年間では14.08%上昇して2016年を終えました。一般消費財セクターも12月に0.11%下落し、年間では4.32%の上昇でした。S&P500の中で最大の比重を占める情報技術セクターは12月に1.51%、年間では11.98%、それぞれ上昇しました。

 トランプラリーが続いたことで、12月も値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を大きく上回りました。値上がりは302銘柄(平均上昇率は3.98%)と、11月の335銘柄からわずかに減少した一方で、値下がりは203銘柄(平均下落率は3.72%)と、11月の170銘柄から増加しました。10%以上の上昇は、前月の140銘柄から12銘柄(平均上昇率は11.98%)に大幅に減少し、10%以上の下落は12銘柄(平均下落率は13.19%)と、前月の18銘柄を下回りました。25%以上値上がりした銘柄はなく(前月は18銘柄)、25%以上値下がりした銘柄もありませんでした(前月は4銘柄)。年間でみると、362銘柄が値上がりし(11月時点の年初来では359銘柄)、そのうち262銘柄(同243銘柄)が10%以上上昇しました。一方、年間で値下がりしたのは141銘柄(同144銘柄)で、そのうち69銘柄(同68銘柄)が10%以上下落しました。12月の出来高は、前月比22%増だった11月に対して同17%減となり、過去1年間の平均月間出来高を10%下回りました。月中の高値と安値の差で見た変動率は4.12%となり、過去1年間の平均値である5.44%ポイントを大幅に下回りました(10月は2.60%、11月は6.25%)。

 S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは12月に、S&P500の構成銘柄について4銘柄を入れ替えました。医療サービスのAmSurg(AMSG)と不動産のMid-American Apartment Communities(MAA)を追加し、資産運用のLegg Mason(LM)と金属・ガラスのOwens-Illinois(OI)を除外しました。なお、AmSurgは12月1日付で同業のEnvision Healthcare Holdings Inc.を買収し、買収後は社名をEnvision Healthcare Corp(EVHC)に変更しています。

 利回り、金利、コモディティは活発な動きが続きました。経済の回復を受けて金利は12月および年間で上昇し、米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月に利上げを決定しました。米国10年国債の利回りは11月末の2.39%や2015年末の2.27%から上昇(価格は下落)し、2.45%で2016年の取引を終えました(2014年末は2.17%)。30年国債の利回りは3.07%と、11月末の3.04%から上昇しました(2015年末は3.02%、2014年末は2.75%)。外国為替市場の取引は活発で、米ドルは14年ぶりの高値となっています。ユーロは11月末の1ユーロ=1.0595ドルから1.0520ドルに下落して12月を終えました(2015年末は1.0861ドル)。英ポンドは11月末の1ポンド=1.2526ドルから12月末は1.2345ドルに下落しました(同1.4776ドル)。円はドルに対して11月末の114.41円から下落して117.00円で12月を終えました(同120.66円)。人民元は1ドルに対して11月末の6.8859元から6.9448元に下落しました(同6.4931元)。金価格は11月末の1,173.80ドルから12月末は1,152.00ドルに下落しました(2015年末は1,060.50ドル、2014年末は1,183.20ドル)。原油価格は大きく変動しましたが50ドル台を維持し、11月末の1バレル49.26ドルから53.89ドルに上昇して12月を終えました(同37.04ドル、53.27ドル)。米国のガソリン価格は、11月末の1ガロン2.154ドルから12月末は2.309ドルに上昇して月の取引を終えました(同2.034ドル、2.299ドル)。VIX恐怖指数は11月末の13.33から12月末は14.04に上昇しました(同18.21、19.20)。

参考情報
投資家が押さえておくべきポイント

 12月の重要ポイントは以下の通りです:

 2016年のS&P500は9.54%上昇、配当込みのトータルリターンはプラス11.96%と良好な結果に。

 2016年のスタートは順調ではありませんでした。S&P500は2月の底値(2月11日)までに年初来で10.51%下落しました。2016年の初日は1.53%下落、最初の1週間の下落率は過去最悪の5.96%でした。

→政策への期待から投資資金が米国に回帰、すなわち「バック・イン・ザU.S.」(ビートルズの「バック・イン・ザU.S.S.R.」ではありません)

 ○グローバル市場は米国市場に対する出遅れを取り戻し、12月にパフォーマンスが改善しました。

→2016年第4四半期は0.87%上昇しましたが、米国の3.58%の上昇を除外すると1.97%の下落

→2016年通年では、グローバル市場は6.10%上昇しましたが、米国の10.30%の上昇を除外すると1.79%の上昇

→過去3年間では、グローバル市場は3.97%上昇しましたが、米国の19.94%の上昇を除外すると10.00%の下落

 ○政策に対する期待を背景に、記録更新が相次ぎました:議会は1月3日に開会、トランプ新政権の発足は1月20日

→規制緩和、追加利上げ、インフレの加速により、金融セクターは12月に3.75%上昇、大統領選挙以降では16.51%上昇、2016年通年では20.14%上昇

→12月の上昇相場で11セクターすべてが上昇

→2016年:エネルギーセクターは23.65%上昇しましたが、2014年の水準を5.47%下回りました。ヘルスケアセクターは4.36%下落

 ○航空機メーカー大手BoeingとLockheedがトランプダンス(値下げ交渉)の幕開け役となりました。交渉はまだ継続しています。

 ○トランプ次期大統領のツイートをフォローすべきです。さもないと、取引で遅れをとるでしょう。

→今年も年初に下落するか:2016年第1週の特筆すべき出来事

 ○2016年の最初の5日間は、S&P500やNYダウにとって過去最悪のスタートとなりました。具体的には、投資家はS&P500の下落により1兆500万ドルを失い、グローバル市場が1兆5,900万ドル下落したことにより、合計で2兆6,400万ドルを失いました。

→最高値更新

 ○S&P500は終値で史上最高値を12月にさらに4回更新し、2016年通年では18回更新(2015年は10回、2014年は53回)

 ○NYダウは終値で史上最高値を12月に9回更新(2016年は25回、2015年は6回、2014年は38回)

→2万ドルを試す展開:ゴールドマンサックス出身のトランプ次期政権の閣僚はNYダウを2万ドルに押し上げるでしょうか

→12月のパフォーマンス

 ○S&P500は11月の2198.81から1.82%上昇し、2238.83で取引を終えました(2015年末は2044.94)。NYダウは11月の19,123.58から3.34%上昇し、19,762.60で取引を終えました(2015年末の17,425.03から13.42%上昇)。

 ○原油価格は11月の49.26ドルから9.4%上昇し、53.89ドルで取引を終えました(2015年末の37.06ドルから45.4%上昇)。

 ○米国10年国債利回りは11月の2.39%から2.45%に上昇して取引を終えました(2015年12月は2.27%)。

 ○金価格は11月の1,173.80ドルから1.2%下落して1,152.00ドルとなりましたが、2015年末の1,060.50ドルを8.67%上回っています。

 ○英ポンドは対ドルで11月の1.2526ドルから1.2345ドルに下落し(2015年12月は1.4776ドル)、ユーロは対ドルで1.0595ドルから1.0520ドルに下落し(同1.0861ドル)、円は対ドルで114.41円から117.00円に下落しました(同120.66円)。

 ○VIX恐怖指数は11月の13.33から14.04に上昇して取引を終えました(2015年末は18.21)。

→OPECと非OPEC諸国は原油の計画生産量の削減を決定


→2016年第3四半期確報

 ○2016年第3四半期のEPSは予想を上回りましたが、第4四半期と2017年のEPS予想は従来予想が据え置かれました。

 ○企業は引き続き自社株買いを行っていますが、ペースは鈍化しています。ただし、第4四半期にはペースが加速する可能性があり、2017年に予想される資金の還流によって自社株買いが拡大することも考えられます。

 ○第3四半期の設備投資は前期比では概ね横ばい(ノイズ程度)でしたが、前年同期比では4.7%減少しました。

→エネルギーを除くS&P500構成企業の設備投資は、前期比2.3%増、前年同期比4.7%増

 ○企業が保有する現金残高は過去最高を大幅に上回り(1兆4,900万ドル)、第2四半期と比べて8.2%も増加しました。現金残高の上位5社は引き続き全てIT企業が占めています。

→FOMCは予想通り12月に利上げを決定しました。

 ○2017年については、インフレの加速が予想される中で3回の利上げが示唆されています。

→トランプ次期政権による公共投資と減税がインフレ率の押し上げにつながる可能性があります。

→この点に関しても、トランプ氏からツィッターで何かしら発言があるかもしれません。

→成立した買収案件と白紙になった案件

 ○Twenty-First Century Fox(FOX)は、英有料テレビ大手Sky plcの未保有株式61%を総額146億ドルで取得する意向を発表しました。

 ○日本のビール大手アサヒグループホールディングス(ASGLY)は、ベルギーの同業Anheuser Busch Inbev(BUD)の欧州ビール事業の一部を78億ドルで買収することで合意したと発表しました。

 ○特殊ガスメーカーのPraxair(PX)は、2年間にわたり交渉の撤回と再開を繰り返した後、ドイツの産業ガス大手Linde AGとの合併で合意しました。今回の合併により、時価総額650億ドル規模の企業が誕生することになります。

 ○Johnson & Johnson(JNJ)によるスイスのバイオ医薬品会社Actelion(ALIOY)に対する買収交渉は、買収価格を理由に一度打ち切られた後、再開されました(新たなトランプダンスを踊っています)。

→Yahoo!の中核資産を48億ドルで買収することを計画していた通信サービス大手のVerizon(VZ)は、Yahoo!がユーザー情報の二回目の漏えいを公表したことを受け(5億件のユーザーアカウントに影響)、買収価格の引き下げまたは買収撤回の可能性を検討していると報じられました。

→11月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比17万8,000人増と予想の17万人増を上回りました。ただし、10月分は従来発表の16万1,000人増から14万2,000人増に下方修正されました。

 ○失業率は4.9%から4.6%に低下し、2007年以降の最低水準を付けました。

 ○労働参加率は前月の62.8%から62.7%に小幅低下しました。

 ○週平均労働時間は横ばいの34.4時間でした。

 ○平均時給は前月の25.92ドルから25.89ドルに0.1%減少しました。

→企業によるレイオフの発表が続きました。

 ○イタリアの大手銀行UniCreditは、138億ドル相当の増資計画と不良債権の証券化による売却(187億ドル相当)に加え、1万4,000人の人員削減を発表しました(向こう3年間に実施)。

→住宅市場は引き続き概ね明るい材料となりました。

 ○12月のNAHB住宅市場指数は予想の63(11月も63)を大幅に上回る70となりました。

 ○11月の住宅着工件数は年率換算109万戸と、10月の134万戸ならびに予想の123万戸を下回りました。住宅建設許可件数も同120万1,000戸と予想の124万戸を下回りました。

 ○11月の中古住宅販売件数は予想の年率換算554万戸に対して、561万戸となりました。

 ○11月の新築住宅販売件数は予想の年率換算58万戸に対して59万2,000戸となり、10月の56万3,000戸から増加しました。

 ○10月のFHFA住宅価格指数は前月比0.4%上昇と予想の0.5%上昇を下回りましたが、前年同月比では6.2%上昇しました。

 ○10月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比5.6%上昇と予想よりも強い伸びとなり、2カ月連続で過去最高を更新しました。ただし、住宅ローン金利上昇の影響はまだ指数に反映されていません。

 ○11月の中古住宅販売仮契約指数は前月比0.5%上昇の予想に反して、同2.5%の低下でした。今回の急低下は市場にとってサプライズとなり、エコノミストの間では、これまでの実際の金利上昇と今後の(さらなる)金利上昇の見通しが要因にあるとみられています。


→経済指標関連では

 ○11月の消費者物価指数(CPI)は前月比では予想通り0.2%上昇、前年同月比では1.7%上昇しました。コアCPI(食品とエネルギーを除く)も前月比では予想通り0.2%上昇、前年同月比では2.1%上昇しました。

 ○11月の生産者物価指数(PPI)とコアPPIはともに予想の前月比0.2%上昇に対して同0.4%上昇し、前年同月比ではPPIが1.3%上昇、コアPPIが1.6%上昇しました。

 ○2016年第3四半期の労働生産性(非農業部門)は前期比年率3.1%上昇(予想は3.3%上昇)した一方、単位労働コストは同0.7%上昇(予想は0.3%上昇)しました。その結果、生産性が低下した一方、コストが増加しました。

 ○11月のマークイット製造業PMIは54.1と予想の53.9を上回り、ISM製造業景況指数も53.2と予想の52.3を上回りました。

 ○11月のマークイットサービス業PMIは10月の54.8から54.6に小幅低下しました。一方、11月のISM非製造業景況指数は57.2と、予想の55.5(ならびに10月の54.8)を上回りました。

 ○2016年第3四半期のGDP確報値は前期比年率3.5%増と(過去2年間で最高)、予想の3.2%増を上回りました。2016年第4四半期のGDP速報値は2017年1月27日に発表されます(改定値は2月28日、確報値は3月30日に発表)。

→トランプ氏とダンスを踊る。

 ○トランプ氏は米国企業による雇用の海外移転にさらに警告を発し、海外移転を行う企業は高関税による「報復」を受けることになると発言しました。

 ○トランプ氏とソフトバンク(SFTBY)の孫正義社長が会談し、ソフトバンクが米国で総額500億ドルの投資を行い、5万人の新規雇用を創出することを発表しました。また、Apple(AAPL)のサプライヤーである台湾企業のFoxconnは、米国事業の拡大に向けた協議の初期段階にあることを明らかにしました。トランプ氏による米国の雇用重視に関する当初の見通しは、空調大手Carrierとの合意で守られたのち、これらの動きによってさらに裏付けられています。

 ○トランプ氏による次期政権の閣僚人事(議会承認が必要)とアドバイザーの任命(議会承認は不要)が進んでいますが、国務長官に石油大手Exxon Mobil(XOM)のレックス・ティラーソン最高経営責任者(CEO)が指名されるなど、企業関係者が多数名を連ねています。

 ○トランプ氏は、政府プロジェクトでのコスト管理に関して、防衛機器メーカーのBoeing(BA)とlockheed Martin(LMT)を批判したのち、両社のCEOと個別に会談を行いました。会談後の発言からは、両社がコストの改善に取り組むことが示唆されています。しかし、トランプ氏は、LockheedのF-35戦闘機の高コストを考慮し、BoeingにF-18戦闘機の「コスト算定」を要請したことを会談後にツィッターで明らかにしています。こうした結果、市場では「トランプ氏とのダンス」という新たな言葉が生まれています。

 ○トランプ氏一色となったメディアの報道は、米タイム誌が同氏を2016年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に選んだことでさらに盛り上がりました。タイム誌はトランプ氏をアメリカ合衆国ならぬ「アメリカ分断国(The Divided States of America)の大統領」と評しています。

 ○極めて対称的に、オバマ政権は全長1,200マイル(1,931キロメートル)、建設費用38億ドルのダコタ・アクセス・パイプラインの建設に関して、パイプラインの完成に必要な土地の利用権を認めない判断を下しました。政府のエンジニアによると、今後代替ルートが検討される見通しです。

→S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、医療サービスのAmSurg(合併に伴う社名変更でEVHC)と不動産のMid-American Apartment Communities(MAA)をS&P500指数に組み入れた一方、資産運用のLegg Mason(LM)と金属・ガラスのOwens Illinois(OI)を同指数から除外しました。

 ○2016年は27銘柄が新たに組み入れられた一方、26銘柄が除外されました。2015年は組み入れ銘柄が27銘柄、除外銘柄が25銘柄でした(同一企業の複数のクラス株式は個別にカウントされるため、構成企業数が500社であることに変わりはありません)。

→その他の注目材料は以下の通りです。

 ○Boeing(BA)は、イランとの間で総額166億ドルの航空機売却契約を締結した一方、Delta Air Lines(DAL)からドリームライナー18機、総額40億ドルの購入契約の取り消しを受けました。

 ○イランはAirbus(EADSY)との間で、旅客機の購入契約で最終合意しました。購入機数は従来合意の118機から100機に縮小され、契約額も従来の250億ドルから180億ドルに修正されました。

 ○トランプ次期大統領は政府のコストをめぐる発言を続け、航空・防衛システム大手Lockheed Martin(LMT)が米軍から受注しているF-35戦闘機のコストは高すぎると批判しました。

 ○米金融当局は、大手銀行Wells Fargo(WFC)が「生前遺言」のテスト(銀行に対する公的支援なしに景気の悪化を乗り切るためのプランの一つ)で基準を満たさなかったと発表し、同行の事業活動に制限を課しました。Wells Fargoは2017年3月までに計画を再修正する必要があります。

 ○ゲームメーカー任天堂(NTDOY)が新発売した「スーパーマリオラン」に対する評価は、(良く言っても)あまり盛り上がっていません。

 ○大手電機メーカー東芝(TOSYY)の株価は、同社が米国の原子力事業で数十億ドル規模の減損が発生する見通しであると発表したことや、ムーディーズとスタンダード&プアーズがともに信用格付けを引き下げたことを受けて、12月に34.2%下落しました。

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ハワード・シルバーブラット
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このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム