S&P 500®月例レポート

S&P 500®

背後に隠れている人やGAAPの数値は気にするな

 ボスに呼ばれた時、クビを言い渡されると思いました。ところがボスは私に、状況は逼迫しているし、売上高は伸び悩んでいるし、対策を講じるよう外部からの圧力もあるが、「明日になれば太陽は昇るさ」と言いました。そこで私は、とりあえず6.3%カットしておくことにしました。そして「明日になって太陽が昇った」後、元に戻すタイミングについて話し合うためのミーティングをセッティングしよう(いいレストランを探しておけ)とボスは言いました。私はボスの部屋を出ると階下のバーに行き、シャンパンを注文しました。職があることが本当にうれしかったのです。実際には、この話は私のことではなく(少なくとも今のところは)、ウォール街における米国企業利益の予想に関する話です。

 S&P500構成銘柄の2016年第1四半期の利益予想は、決算発表シーズン前に10%以上引き下げられていたため、実際に第1四半期のEPSが発表されると、全体で前年同期比6.3%の減益になったとはいえ、決算発表を終えた企業(全体の70%が発表)の73%以上が予想を上回る結果となりました。バーで祝杯を挙げたというストーリーと同様に、市場では株価が上昇し、S&P500は2,100の水準を回復し(年初来初めて)、ダウ工業株30種平均も1万8,000ドルの大台に乗りました。73%もの企業で利益が予想を上回り(過去平均である全体の3分の2より多い)、S&P500は終値の史上最高値(2015年5月21日の2,130.84)が射程圏内に入り、まさに「明日になれば太陽は昇る」の歌詞通りになろうとしています。ここで言う「太陽」とは2016年下半期を指し、第1四半期を底に第2四半期に上向き、第3、第4四半期には過去最高益を更新するというシナリオ通りに進んだ場合、株価が最高値を更新しないはずはありません。この無謀な「夢」にもいくつかの利点があります。金利は低水準にとどまり(年初来では低下しています)、最も強気な予想でも年内の利上げは最大で2回(各0.25%)と予想されています。企業が保有する現金は過去最高に近い水準にあり、社債を発行しやすい環境で(金利以上に利益還流という観点から、欧州やアジアではなおさらです)、コスト削減策は継続されています(貯蓄志向も続いています)。自社株買い戻しはEPSを力強く押し上げ、2015年第4四半期にみられた予想外のEPS上昇は2016年第1四半期も続いています(以前から、利益管理をMBAコースの必須科目とするべきだと冗談で言っていましたが、本当に利益管理を学んだ人がMBAを取得しているかのようです)。一方で、「無謀な夢は無謀にすぎない」ことを示す点としては、世界各国の金利や景気刺激策(昨年12月にECBをめぐって生じた「2度と騙されないぞ」と言う状況が日本に移っているようです)をめぐる不透明感や輸出入が低調なこと、原油価格と市場シェアをめぐる争い(50ドルまで戻しましたが依然として100ドルの半分です)が続いていること、そして第1四半期の決算から、先進国市場と新興国市場の両方の経済のみならず、雇用面でのコスト削減(解雇)効果や可処分所得まで縮小していると示唆されていることが挙げられます。その上、PERや株価キャッシュフロー倍率は(相対的に)高水準にあり、一部ではありますが、踏みとどまっていたリセッション入りが1年後にも現実化するとの見方もあります。

 市場では、バーで美酒に酔いしれる時と同じで「引き際を知る」ことも重要です。それを知らしめるように、月後半の決算発表や日本の状況、そして「明日になれば太陽は昇る」的な確信の揺らぎが逆風となり、S&P500は2,100から反落しました。現時点では、投資家には米国の政局を見る以外に他にやるべき選択肢はほとんどなくなったと思われます。個人的見解としては、1987年10月の市場、すなわち10日間の上昇(平均2.03%)が続いた後に、12日間にわたって下落する(平均4.08%)という展開が再現されると考えられますが、勝つ見込みもないわけではありません(楽しい週末を前にした1987年10月16日金曜日に市場は5.16%下落し、それまでイン・ザ・マネーの状態だったオプションの利益が既に紙くずとなったため、翌月曜日の20.47%の下落も大した痛手にはなりませんでした。なぜなら金利と異なり、株価はマイナスになることはないからです。(追記:歴史的には、株価がマイナスになることがありました。かつて株式の額面には法的な意味があり、発行価格が額面価格を下回るディスカウント株式と称され、その差額は潜在的な負債を伴う株式として取引されました。弁護士は当時も楽しい仕事でした)。


 経済関連のニュースでは、IMFが世界経済見通しを再度引き下げ、2016年の成長率を3.2%としました(1月時点の3.4%から下方修正)。中国の成長率を6.5%(従来予想は6.3%)に上方修正した一方、米国の成長率は2.4%(従来予想は2.6%)に下方修正しています。世界貿易機構(WTO)は、2016年の世界貿易量の伸び率の予想を9月時点の3.9%増から、2015年と同率の2.8%増に引き下げました。ECBは政策金利を据え置くと同時に緩和政策を維持しました。また、インフレ率を目標値に確実に回帰させるために「実施可能な全ての政策手段」を活用する用意があると述べました。ユーロ圏の2016年第1四半期のGDP成長率は、前期比0.6%増(2015年第4四半期は同0.3%増)、前年同期比1.6%増となりました。3月の英国のインフレ率は前年同月比0.5%上昇し、コアインフレ率も同1.5%上昇しました。イングランド銀行は6月23日のEU離脱(Brexit)の是非を問う国民投票を控え、政策金利を据え置きました。中国の第1四半期のGDP成長率は予想通り前年同期比6.7%となり、前四半期の同6.8%から減速しました。景気刺激策に後押しされて第1四半期は成長こそみられたものの、成長減速に対する懸念は続いています。中国の3月の輸出はドル建てで前年同月比11.5%増、一方で輸入は同7.6%減となりました。米国では、3月のFOMC議事録をみると、議論の中心となったのは4月の利上げでした。また、メンバー2人が3月の利上げを支持していたようです。議事録の全体的なトーンはハト派的でしたが、予想されたほど強いものではありませんでした。3月の雇用統計では非農業部門雇用者数が21万5,000人増と事前予想の20万5,000人増を上回りましたが、失業率は前回の4.9%から予想に反して5.0%に上昇しました。また、労働参加率は63.0%に上昇しました。2月の求人労働移動調査(JOLTS)では、現在の求人件数は560万件程度との予想に対して、544万5,000件となりました。新規失業保険申請件数は1973年(24万7,000件)以来の低水準を記録した週もありました。3月のサプライ管理協会(ISM)製造業景況指数は事前予想の50.5を上回る51.8となりました。2月の建設支出は事前予想の前月比0.2%増を下回る同0.5%減(前年同月比では10.3%増)となりました。2月の製造業受注は市場予想の前月比1.6%減に対して同1.7%減となり、1月の数値も当初発表の1.6%増から1.2%増へと下方修正されました。3月の鉱工業生産は市場予想の前月比0.1%の低下に対し、0.6%の低下となりました。設備稼働率は事前予想の75.3%を下回る74.8%となりました。3月の輸出/輸入物価指数は、輸入が前月比0.2%上昇、前年同月比では6.2%の低下となったのに対し、輸出は前月比横ばいで前年同月比は6.1%の低下となりました。3月の生産者物価指数(PPI)は、事前予想の前月比0.3%の上昇に対し、0.1%の低下となりました。前年同月比でも0.1%低下しました。食品とエネルギーを除いたコア指数は前年同月比1.0%の上昇となりました(FRBにとってはそれほど喜ばしいものではありませんでした)。3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で0.9%上昇し、食品とエネルギーを除いたコア指数も同2.2%上昇しました(この結果にFRBは満足しているに違いありません)。3月の耐久財受注は前月比0.8%増と、事前予想の1.6%増を下回りました。3月の景気先行指数は、市場予想の0.5%に及ばず前月比0.2%の上昇となりました。また、2月分も当初発表の0.1%の上昇から0.1%の低下へと下方修正されました。3月の個人所得は市場予想の前月比0.3%を上回る同0.4%増となりました。また、3月の個人消費支出(PCE)の伸びは、事前予想の前月比0.2%に対して同0.1%にとどまりました。住宅関連では、3月の住宅着工件数が市場予想に届かず(年率換算で予想の116万7,000戸に対して108万9,000戸)、それ以上に着工許可件数が予想を下回ったため(事前予想の120万戸に対して108万6,000戸)、4月の住宅市場指数も事前予想を下回る結果となりました。住宅販売の大半を占める中古住宅販売件数は3月に前月比5.1%増(年率換算で事前予想の526万8,000戸に対して533万戸)と盛り返し、連邦住宅金融局(FHFA)発表の2月の住宅価格指数は事前予想通りの前月比0.4%の上昇となりました。3月の新築住宅販売件数は、事前予想の52万2,000戸に対し、51万1,000戸(年率換算)と失望的な結果となりました。一方で、2月の数値が当初発表の51万2,000戸から51万9,000戸へと上方修正されたことは安心材料といえます。2月のS&Pケースシラー住宅価格指数は事前予想通り前月比0.7%上昇しました。FRBは予想通り4月の会合(26-27日開催)で政策金利を据え置き、米国景気の強さ(雇用)と弱さ(低インフレと家計支出の鈍化)の双方について言及しました。また、グローバルなリスクについては触れず、今後の動向を注視するとの姿勢を示し、次回利上げの時期についても何らヒントを与えませんでした。2016年第1四半期の米国のGDP成長率の速報値は、事前予想の前期比年率0.7%増に対して同0.5%増と、さえない結果となりました。2015年第4四半期は同1.4%増でした(なお、2016年5月27日には改定値、同6月28日には確定値が公表予定)。


 M&A関連では、中国の金融グループAnbang Insuranceがホテルと娯楽施設を経営するStarwood Hotels & Resorts Worldwide(HOT、4月は1.9%安)に対する買収提案を取り下げ、競り勝ったMarriott International(MAR、同1.5%安)が136億ドル(現金と株式)で同社を買収することになりました。北米およびメキシコを中心に運行しているAlaska Air Group(ALK、同14.1%安)は、競合するJetBlue(JBLU、同6.3%安)との買収競争に打ち勝ち、Virgin America(VA、同44.4%高)を26億ドル(4月1日の同社株の終値を47%上回る水準)で買収すると発表しました。Canada Pension Plan Investment Boardは、スイスの資源大手Glencore(GLCNF、同5.3%高)の農産品部門の株式40%を取得する計画を公表しました。英銀Standard Charter PLC(SCBFF、同21.6%高)は、バランスシートの改善目的で44億ドルの資産売却を検討していると報じられています。プリンタ大手のLexmark International(LXK、同15.5%高)は、中国の印刷機器メーカーApex Technologyに25億ドルで身売りする計画を明らかにしました。米国の新聞大手Gannett(GCI、同11.3%高)は、同業のTribune Publishing(TPUB、同46.8%高)に対して8.15億ドルの買収案を提示しました。この買収提示額は同社の株価を63%上回る水準です。Charter Communications(CHTR、同4.8%高)による同業Time Warner Cable(TWC、同3.7%高)の買収案は規制当局から認可されました。米国ケーブルテレビ大手Comcast(CMCSA、同0.5%安)はアニメ制作大手のDreamWorks Animation(DWA、同60.0%高)を38億ドルで買収すると発表しました。多岐にわたるヘルスケア製品の製造を手掛けるAbbott Laboratories(ABT、同7.0%安)は、人工心臓弁や電子医療機器メーカーのSt. Jude Medical(STJ、同38.5%高)を250億ドルで買収すると公表しました。

 M&A関連のマイナス材料としては、企業が買収を通じて税率の低い国に本社を移転するインバージョン取引の効果を弱め、そうした動きを阻止するための新たな規制が米財務省から発表されたことが挙げられます。これを受けて米国の医薬品大手Pfizer(PFE、同2.4%高)とアイルランドの同業Allergan(AGN、同12.0%安)は1,500億ドル規模の合併計画を直ちに白紙撤回しました。この新規制によって多くの新たな合併案が阻止されるとみられていますが、既にクローズした案件への影響は不明です。企業は提訴することも可能ですが、解決までに数年を要し、その間に経営資源を取られ、企業活動の制約につながります。そのため大方が、同規制によってインバージョン取引が大きな影響を受けると受け止めました。米司法省は石油サービスのBaker Hughes(BHI、同10.3%高)と同業Halliburton(HAL、同15.6%高)の合併を阻止するために提訴しました。

 注目されるのは、イランの2016年3月の原油輸出量が1日あたり25万バレル増加し、200万バレルを突破したことです。中国のネット販売Alibaba(BABA、4月は2.6%安)は、年間総売上高が米国の小売大手Wal-Mart(WMT、1週間で2.4%安)の4,820億ドルを超え、世界最大の小売業者になったと発表しました。米医療保険最大手のUnitedHealth Group(UNH、4月は2.2%高)は来年、ほとんどの州でオバマケア(医療保険改革法)関連事業から撤退することを確認しました。同社は同プログラムがスタートした2014年ではなく、2015年から同事業に参入していました。石炭生産大手Peabody Energy(BTU)は連邦破産法第11条に基づく会社更生手続きの適用を申請しました。米規制当局(FRBと連邦預金保険公社(FDIC))は、大手銀行5行(Bank of America(BAC)、Bank of New York Mellon(BK)、JP Morgan(JPM)、State Street(STT)、Wells Fargo(WFC))が提出した“リビング・ウィル”(破綻時の清算計画)に対して修正を求めました。5行は2016年10月までに新たな計画を提出する必要があります。レポートによると、2015年の米国の処方箋支出総額は12.2%増の4,250億ドルとなりました(表示価格に基づく。リベートおよび値引き調整後では3,100億ドル)。主要産油国は原油生産量の抑制または増産凍結を目指してカタールの首都ドーハで会合を開きましたが、石油輸出機構(OPEC)がこの問題は次回総会(2016年6月2日、ウィーン)で修正される可能性があると述べる中、合意に至らず、原油価格にほとんど影響はありませんでした。OPECは次回総会で増産凍結について協議する可能性があると述べ、クウェートでは石油労働者のストライキが実施されました。サウジアラビアは、5%の新規株式公開(IPO)を予定している国営企業Saudi Arabian Aramcoの企業価値について、2兆ドルを超えるとの見通しを示しました。日本の三菱自動車(MMTOF、同41.1%安)は燃費データを不正に操作していたことを認め、ドイツの自動車メーカーVolkswagen(VLKAY、同10.1%高)は排ガス不正事件関連のリコールおよび「対応策」に183億ドルの費用がかかり、巨額の損失を計上したと発表しました。これにより同社は97%の減配を実施しました。


 S&Pレーティングス・サービシズは、石油大手Exxon Mobil(XOM、同5.8%高)の信用格付けをAAAからAA+に引き下げました。これにより米国企業でAAAの格付けを有するのはMicrosoft(MSFT、同9.7%安)とJohnson & Johnson(JNJ、同3.6%高)のみとなりました。iPhone(アイフォーン)を主力製品とするApple(AAPL、14.0%安)の四半期決算は予想を下回り、売上高は前年同期比で13年ぶりに減少しました。同社は増配を発表する(これによって配当額は公開企業としては世界最高となりました)一方、第2四半期の業績見通しについて警告を発しました。高配当企業のトップだったExxonは負けじと増配を発表しましたが及ばず、現在は世界第2位となっています(配当額はAppleが年間126億4,000万ドルのペースで、Exxonが124億6,000万ドル、次いでAT&Tが118億1,000万ドル)。

 企業によるレイオフの発表はあらゆる業種で続きました。アルミ大手Alcoa(AA、4月は16.6%高)は600人の人員削減を実施し、さらに400人を削減すると発表しました。日本の野村ホールディングスは欧州株式事業から撤退すると発表しました。鉄道会社CSX(CSX、同5.9%高)は2016年に石炭輸送量が20%減少する見込みで、減少分を埋め合わせるために費用と人員を削減すると発表しました。米銀大手JP Morgan(JPM、同6.7%高)は、アジアのウェルスマネジメント部門の人員を5%削減すると発表しました。大手投資銀行Morgan Stanley(MS、同8.2%高)は第1四半期に1,440人をレイオフすると発表しました。高級百貨店Nordstrom(JWN、同10.6%安)は本部の従業員400人を削減すると発表しました。半導体メーカーIntel(INTC、同6.4%安)は従業員の11%にあたる1万2,000人を削減すると発表しました。油田サービス会社Halliburton(HAL、同15.6%高)は6,000人をレイオフすると発表しました。税務申告サービスH & R Block(HRB、1週間で23.3%安)は従業員の13%をレイオフすると発表しました。建設機械大手Caterpillar(CAT、1週間で1.5%高)は米国内の工場5カ所を閉鎖し、約820人を削減すると発表しました。

 金利は4月に低下しました。FRBが6月の利上げを見送る「ようにみえた」ものの、2016年に0.25%ずつ2回の利上げを実施する考えは維持している「ようにみえた」ことが背景にあります。米国10年国債利回りは3月末の1.89%から低下して1.83%で4月の取引を終えましたが、2015年末の2.27%、2014年末の2.17%から低下した水準にとどまっています。30年債の利回りは低下して2.68%で4月の取引を終えました(3月末は2.72%、2015年末は3.02%、2014年末は2.75%)。ドルは下落し、対ユーロでは1ユーロに対して1.1450ドルとなり(3月末は1.1325ドル、2015年末は1.0861ドル、2014年末は1.2098ドル)、対英ポンドでは1ポンドに対して1.4611ドルとなりました(同1.4560ドル、1.4776ドル、1.5582ドル)。円は対ドルで上昇し続け、1ドルに対して106.51円となり(同112.55円、120.66円、119.80円)、人民元は上昇し1ドルに対して 6.4741元となりました(同6.4939元、6.4931元、6.2052元)。金価格は1,294.90ドルに上昇しました(同1,248.80ドル、1,060.50ドル、1,183.20ドル)。原油価格は大幅に変動して1バレル45ドルを超え、45.99ドル(同38.25ドル、37.04ドル、53.27ドル)で、またガソリン価格は引き続き上昇して1ガロン2.162ドル(同2.066ドル、2.034ドル、2.299ドル)で4月の取引をそれぞれ終えました。4月のVIX恐怖指数は15.70(同13.95、18.21、19.20)と3月末から上昇して月を終えました。
 

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投資家が押さえておくべきポイント
・S&P500構成企業の73%の決算で利益が事前予想を上回る中(事前予想は最近10%以上引き下げられていました)、米国株式市場は1999年のように浮かれ(1929年とは違いました)、企業利益が第1四半期で底打ちし、その後第2四半期には改善に転じて、(これは浮かれた投資家が飲んだお酒の酔いが影響しているのかもしれませんが)第3、第4四半期と過去最高を更新するとの見方を「受け入れました」。

・S&P500は3月の6.60%の大幅上昇の後、4月は企業の決算結果よりも今後の業績見通しに市場の注目が集まる中で0.27%上昇し(配当を含めたトータルリターンは0.39%)、年初来では1.05%(同1.74%)と(好調とは言えないものの)まずまずのリターンとなっています。

・各国中央銀行が別々の道を進む状況に変わりはありませんが、4月はこの点は行動よりも発言の面でみられました。日本では政策変更が見送られたことで円高の進行と日経平均の下落につながった一方(中国の輸出が11.5%減少したことは見たくないでしょう)、米国では政策の据え置きは上半期いっぱい継続される模様ですが、下半期に2回の利上げを想定する場合、大統領選の日程により状況は複雑になります(11月2日の会合で利上げが決定された場合、11月8日に大統領選を控えて候補者がどのようにコメントするかを想像してみて下さい)。

・米国の2016年第1四半期のGDP成長率は前期比年率0.5%と同0.7%の低い予想値を下回り(企業業績のように予想を上回ることはなかったようです)、2015年第4四半期の同1.4%から減速しました(改定値は5月27日、確報値は6月29日に発表)。中国のGDP成長率も低下しましたが、低下は前四半期の前年同期比6.8%から同6.7%にとどまりました。ユーロ圏の第1四半期のGDP成長率は前期比0.6%、前年同期比1.6%となりました。

・M&Aはさらに続き、大規模な買収が合意された一方(Abbott LabsとSt Jude、ComcastとDreamWorks、中国のApex TechnologyとLexmark)、一部の案件は米国当局からの反対に合い(Baker HughesとHallibriton)、新規制も導入されました(反インバージョン規制、PfizerとAllerganに影響)。

・幾つかの銀行が生前遺言を当局から却下され、「大き過ぎて潰せない」銀行の問題は「大き過ぎて死ねない」銀行の問題となっています(今回生前遺言を却下された銀行は10月までに修正の猶予を与えられているため心配は無用です。それに死ぬことができないとしたら、何のために遺言が必要になるのでしょうか)。

・企業によるレイオフの発表も続き、Alcoa、H&R Block、Caterpillar CSX、Halliburton、Intel、JP Morgan、Morgan Stanley、Nordstromが人員削減の流れに加わりました。

・Apple(AAPL)は4月に14.0%下落し、846億ドルの時価総額を失いました。カール・アイカーン氏もApple株を売却したことを明らかにしています。同社株は4月にS&P500のリターンを0.50%ポイント(4月のリターンはプラス0.27%、Appleを除くと0.77%)、また、ITセクター指数のリターンを1.64%ポイント(同マイナス5.47%、同マイナス3.83%)押し下げました。

・企業による配当も継続され、Appleは利益、売上高、ガイダンスはいずれも失望的な内容となったものの増配を発表し、支払配当額で世界トップとなりました(126億ドル)。Exxon (XOM)も(負けてはしまいましたが)これに負けじと予想を上回る決算を発表するとともに、63%の減益にもかかわらず増配を行い、支払配当額で世界第2位となっています(124億ドル)。

・予想が引き下げられたものとしては、IMFが2016年の世界の貿易量予想を従来の3.9%増から2.8%増に引き下げるとともに、同年の世界経済の成長率予想を従来の3.4%から3.2%に下方修正しました。

・他にも注目材料として、中国のネット販売Alibabaが年間総売上高でWal-Martを抜き、世界最大の小売業者になったと発表しました。UnitedHealth Groupは2017年にほとんどの州でオバマケア関連事業から撤退することを表明しました。石炭生産大手Peabody Energy(BTU)は連邦破産法第11条に基づく会社更生手続きの適用を申請しました。また、レポートによると、2015年の米国の処方箋支出総額は前年比12.2%増の4,250億ドルとなりました。S&Pレーティングス・サービシズはExxonの信用格付けをAAAからAA+(米国政府と同水準)に引き下げました。サウジアラビアは5%の新規株式公開(IPO)を予定している国営企業Saudi Arabian Aramcoの企業価値について、2兆ドルを超えるとの見通しを示しました。


5月のフューチャー・ショック:
 過去の実績を見ると、5月は56.8%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は3.24%、下落した月の平均下落率は4.63%で、全体の平均騰落率はマイナス0.16%となっています。
 
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FOMCの会合:
6月14-15日※、7月26-27日、9月20-21日※、11月1-2日、12月13-14日※
米国大統領選の投票日は2016年11月8日
※議長の記者会見が通常、米東部時間午後2時30分に行われます。また、四半期ごとの経済見通しの改定が2時に発表されます。

 

ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・
インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

本翻訳は、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。
SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム