「日経225種平均(以下日経平均) が、2007年7月の高値18,261円をついに更新した」ということが大きく新聞で報道されております。この報道について、今回はコメントさせていただきます。
まず、なぜ前回の高値を更新することが大事なのか、ということです。
チャート分析(株価推移のグラフの分析)では、「前回の高値を更新すると上昇スピードに勢いがついている表れである」と、一般的には言われております。なぜでしょうか。スパークスのような個々の企業分析に基づき投資の意思決定をする者からすれば、指数が高値を超えてもそれほど重要であるとは思いませんが、実際の投資活動においては意味があります。前回の高値を超えたということは、約8年前に日本株を購入し保有を継続していたことを前提とすると、当時株を購入して損をしていた人の損が減少し、利益が出てくる水準になってきたということを表しているからです。前回の高値近辺では、損失を少しでも解消しようと売りたい人が増加し、なかなか高値を超えるのが難しいのです。だからこそ、そこを抜けたということは、売りたい人の圧力を超えるほど買いたい人が多かったことから、高値が更新されたということです。高値更新は株式市場の雰囲気がよくなるだけというだけでなく、このような人間行動を表すものであり、チャート分析とは人間の過去の投資行動を分析したものと考えれば、それなりに意味があると思います。
もう1つの側面は、日経平均が高値を更新したからといって本当に市場全体で売り圧力が減り、上昇の勢いが増すのか、というポイントです。
以下のグラフをご参照ください。日経平均の線が青、そして、ドル建ての日経平均がオレンジ、TOPIXという日経平均よりも幅広い東証一部上場銘柄がすべて含まれる株価指数の動きが緑です。
ドル建日経平均は、海外投資家から見た日本株、というポイントを見るためです。このグラフを見ると、円建日経平均の青い線は2007年の7月に高値をつけましたが、ドル建日経平均は、すでに2006年5月につけた高値を2007年でも抜けて上昇することはなく、高値を抜けないことからその後失速し、円建日経平均よりもその動きに先見性があったのかもしれません。一方、リーマンショックのあと円建日経平均は低迷していますが、ドル建日経平均ではそれほど悪いパフォーマンスではなく、また昨年12月にすでに前回の高値を更新しておりました。これは、外国人投資家から見ると昨年年末に高値を更新したことで既に、売り圧力のピークをクリアしていたとも言えます。下落の時と同じように、先行して上昇を予見していたとも言えます。円建ての投資家には今月は高値を越えた重要な月でしたが、ドル建で考える投資家からは、すでに山を越えたという意識があり、すでに強気に転換していたかもしれません。
別の側面では、TOPIXの動きです。グラフで示したTOPIXの動きをみると、前回の2007年までの上昇とは異なる動きを示しております。2006年までは、円建、ドル建それぞれの日経平均と同じように動き上昇しておりました。しかし、現在のTOPIXはまだ2006-2007年の高値からは15%程度、下に位置しています。今回の上昇は日経平均が先走り、TOPIXが表す市場全体の銘柄ではまだ高値更新には至っていない、ということがわかります。TOPIXという指数は日経平均が225銘柄の株価の平均を表すのに対して、TOPIXは東証一部上場銘柄の時価総額の合計の動きを表すことから、より幅広い業種の動きを表します。また、日経平均は先物の売買が活発であることから、その状況に左右されやすい傾向があります。中身をみると、TOPIXでは、銀行などの内需関連業種が比率として多く含まれており、円安によるメリット受けるという観点ではTOPIXが反応が鈍かったとも言えます。
先ほどのチャート分析で考えるとTOPIXについては、これから高値が近付くことによる売り圧力が高まる価格帯に入ってくることを表しており、TOPIXがあと15%以上上がった時に本当に日本株の上昇に勢いがついてくると思います。ドル建、円建それぞれの日経平均を抜いているということは、先行きに明るいものがありますが、市場全体の指数ではこれからの15%アップまでが本当に日本株が今後3-5年上昇に入るかの勝負の時期になると感じます。
われわれの調査の中では、企業業績が今年の春、夏くらいから再度勢いを取り戻してくるのではないかと考えております。今回の日経平均の高値更新は、先物や外国人主導で先行きを期待して、先行して動く投資家の動きを表した感じですが、本年春からは、企業の業績を反映してより幅広い投資家が株式投資へ積極化し、TOPIXが本格的に前回の高値に挑戦する相場が展開されるのではないかと考えております。このように、日経平均高値更新という報道だけでも、いろいろな異なる見方ができます。報道を鵜呑みにするのではなく、まず自分で事実を確認し、それをどのように考えているかを明確に自覚することが投資において重要です。
※当コラムは執筆者の見解が含まれている場合があり、スパークス・アセット・マネジメント株式会社の見解と異なることがあります。
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