花の一里塚~市場見通しサマリー
2014年6月2日時点での主要市場見通し
基本シナリオと見通し数値について
世界的な景気の回復基調に沿った、内外の株価上昇、長期金利上昇、外貨高・円安基調(全般的には)という見通しの大枠に、引き続き全く変更はない。5月途中まで、国内株式市況中心にもたつく展開もあったが、足元は再度上記の長期展望に沿った相場動向となってきている。短期的には、下がりすぎた米国長期金利の反騰が、激しい形で生じた場合に、他の市場に混乱をもたらす可能性が心配されるが、それ以外には大きな懸念要因は、さしあたりは見出しにくい。
具体的な予想レンジについては、6月末までの予想期間が徐々に短くなってきている(現時点で残り1か月)ことから、レンジの幅をやや狭める。この予想レンジの変更は、基本的な市場見通しの考え方に変化があったわけでは全くない。2014年12月までの予想レンジについては、国内長期金利の底ばいが7月に入っても少し続く可能性が高まっているため、長期金利の予想レンジ下限だけを引き下げる。他には変更はない。
2014年6月までの予想レンジを、前号(5月号)から次のように修正した(下線太字部は変更箇所)。
日経平均株価(円) 14000~17500 ⇒ 14300~16500
10年国債利回り(%) 0.55~1.3 ⇒ 0.55~0.9
米ドル(対円) 95~107 ⇒ 変更なし
ユーロ(対円) 130~145 ⇒ 130~142
豪ドル(対円) 90~110 ⇒ 90~100
2014年12月までの予想レンジを、前号(5月号)から次のように修正した(下線太字部は変更箇所)。
日経平均株価(円) 15000~20000 ⇒ 変更なし
10年国債利回り(%) 0.8~1.7 ⇒ 0.6~1.7
米ドル(対円) 97~110 ⇒ 変更なし
ユーロ(対円) 125~145 ⇒ 変更なし
豪ドル(対円) 90~120 ⇒ 変更なし
シナリオの背景
・先進国の経済は堅調だ。日本では、もちろん足元では消費増税の影響が出ているが、住宅、自動車といった高額品以外は、増税前の駆け込みとその後の反動が限定的であると言える(図1)。
・米国経済も、長期的な回復基調に加え、昨年末から今年初にかけての厳冬の影響が剥落し、一段と経済指標の堅調さが目立つ展開だ(図2)。
・欧州大陸経済は、日米に比べて低迷している状況にあるが、ECB(欧州中央銀行)は6/5(木)の理事会で追加緩和策を打ち出すと予想され、景気の下支え期待が広がるだろう。
・新興国においては、ブラジルなど実体経済の足踏みが目立つ国もあるが、全般的にはむしろ地政学的リスク(安全保障、政治等のリスク)が懸念される。具体的には、中国の日本、ベトナム、フィリピンとの摩擦や、タイのクーデター後の状況、ウクライナ情勢などである。こうした不透明感を反映して、新興国の株価は、先進国とのかい離が広がっていた(図3)。
(図1)
(図2)
(図3)
・しかし、新興国の株価や通貨の動きだけをみれば(図3は円換算後の数値を示しているので、新興国の株価と通貨の両方の推移が反映されていると言える)、最近底割れは見せておらず、底固い動きにあるという解釈も可能だ。実際、前述したような地政学的リスクは、市場にとって既知のものとなっており、新興国の株価や通貨も全体としては底抜けていくような情勢にはないのだろう。
・リスクがあるとすれば、米国長期金利の急速な跳ね上がりであると警戒している。足元の米国景気の堅調さや、米株価の協調展開、米連銀のQE3(量的緩和第三弾)による国債買い入れ額の縮小などにもかかわらず、米国長期金利が低下基調にある点は、不可解だ。長期金利低下の要因としては、
1)ECBの追加緩和観測を背景としたドイツ等欧州国債の価格上昇(利回り低下)が進んだため、欧州国債を利食い売りして米国債に資金を振り向ける動きが生じた
2)年初来、米景気の回復観測に沿った米国長期債売りのポジションを保有していた投資家が、想定外の米長期金利低下(長期債価格上昇)を受けて、損切りのための買戻しを余儀なくされた、
といった需給面の要因しか見当たらない。したがって、現在の米長期債は買われ過ぎであり、1)、2)の需給要因が剥落すれば、米長期金利は水準を切り上げると予想する。
(図4)
・米国企業の景況感を表すISM指数と、米国10年国債利回りの動きを比べてみると(図4)、特に2012年央にかけて、米連銀の緩和姿勢や、欧州財政懸念による欧州国債から米国債への資金シフトにより、企業の景況感に比べて下がり過ぎていた長期金利が、今年初にかけて上方修正を続けていたことがわかる。これが足元また下がり過ぎに向かい始めているわけだが、ISM指数の位置から読み取れば、10年国債利回りが3.5%でもおかしくはない。
・したがって、10年国債利回りがゆっくりと3.5%に上がっていっても、その金利水準自体が問題になるとは考えていない。むしろ長期金利上昇の背景にある米景気の堅調さに市場が注目し、米株高、米ドル高がもたらされるだろう。
・問題になるとすれば、長期金利の修正(上昇)が、混乱を伴うほど急速である場合だ。余りにも速い金利上昇となれば、米国株式市場において、企業収益の回復期待より金利上昇懸念が勝る局面も否定できない。この場合、米株価の急落が米ドル安を引き起こす展開もありえよう。とすれば、日本の株式市場などに対する悪影響も想定せざるを得ない。
・特に現在の米国株式市場は、ゆっくりとした史上最高値更新を繰り返しており、投資家が想定するS&P500指数の予想変動率を示すVIX指数は、かなりの低水準となっている(図5)。すなわち、現在の米国株式市場は、ほんわかとした「ノーガード」状態となっており、米国長期金利の混乱を伴った急上昇があれば、株式市場も一気に波乱状態に陥ると懸念されるのである。
(図5)
・もちろん、述べたような米債券市場発の世界的な市場波乱が現実化したとしても、世界経済等の基調に何らの変調が生じたわけではないので、短期的な市況のブレに動揺せず対応すれば、中長期的にはそれほど心配するには当たらないだろう。
以上、シナリオの背景。
このあと、前月号見通しのレビュー。
前月号見通し(2014/5/1時点)のレビュー
・日経平均株価の予想レンジ下限(14000円)は、4月に引き続きよく機能した。ただし、5月途中まで株価のもたつきが続いたため、6月末までの限られた時間では、日経平均は相当上昇しても16500円までがせいぜいと考え、今号では予想レンジ上限を下方修正する。
②国内長期金利
・国内10年国債利回りは、レンジ下限に張り付いた動きであるため、6月末までの予想レンジ上限を下方修正する。ただし、米長期金利が上ぶれする局面には留意すべきだろう。
③外国為替相場
・3通貨とも、予想レンジ内での推移となったが、動意に乏しい展開であった。
・ユーロはECBの追加緩和もあり、引き続き下落基調と見込むため、6月末までの予想レンジ上限を下方修正する。
・豪ドルは逆に上昇基調とみるが、6月末までの限られた時間では上限に達することが難しくなってきたと考えるため、今号では予想レンジ上限を下方修正する。
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