急激な円高進行受け売り優勢、米雇用統計前に買い手控え

著者:冨田康夫
投稿:2017/01/05 20:20

明日の東京株式市場見通し

 6日の東京株式市場では、5日夕刻に外国為替市場で、一時1ドル=115円台半ばへと急速に円高・ドル安が進行し、この水準があす朝まで継続するようなことになれば、売り先行のスタートとなりそうだ。この円高・ドル安進行がなくても、あす夜の米12月の雇用統計発表を前にして、買い手控え姿勢が強まるものと想定されていた。

 市場関係者からは「日本市場が休場だった3日に、海外為替市場でいったん、1ドル=118円台半ばまで進行した円安が、ここにきて1ドル=115円台半ばと円高方向に急反転したことで、株式市場に不安感が台頭しそうだ。12月半ばから続いていた、ほぼ1ドル=116~118円のボックス相場が円高方向に大きく離れることに懸念が強まっている」としている。

 5日の東京株式市場は、やや買い優勢で始まったものの、寄り後に円相場が円高・ドル安方向に振れたことで、主力株を中心に利益確定売りに押された。日経平均株価終値は、前日比73円47銭安の1万9520円69銭と反落した。

5日の動意株

 シャープ<6753>=後場上げ幅を急拡大し、連日の昨年来高値更新。
昼過ぎに日経速報ニュースで、「台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と共同出資するテレビ向け液晶パネル生産会社、堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)の新規株式公開(IPO)を検討すると明らかにした」と報じられており、これを好材料視した買いが入っている。

 プレシジョン・システム・サイエンス<7707>=後場急伸。
5日正午ごろ、同社がOEM供給を行う全自動遺伝子診断装置「geneLEAD XII」(臨床研究用)について、フランスのELITech Group(エリテックグループ)と日本国内販売およびELITechのCE-IVD規格試薬販売に関する契約締結を行ったと発表しており、業績への貢献を期待して買い進まれた。

 ナノキャリア<4571>=後場一段高。
5日前引け後に、開発中のNC-6300(エピルビシンミセル)について、軟部肉腫を対象とした第1/2相臨床試験に関する治験計画届出書を、米国FDA(食品医薬品局)に昨年12月30日付(現地時間)で提出したと発表しており、開発の進捗を期待した買いが入ったようだ。

 ウィルグループ<6089>=大幅続伸。
同社は家電量販店や携帯電話販売店向けにスマートフォン販売支援の人材を派遣するサービスを主力に、コールセンターや食品工場製造ライン向けにも展開、企業の求人需要の高さを背景に高成長途上にあり、特にトップライン(売上高)の伸びが際立つ。自社の正社員を派遣スタッフとセットで派遣し労務管理で強みを発揮する「ハイブリッド派遣」で顧客企業の信頼性を確保し業績を伸ばしている。ROEは20%を超えており、M&Aを活用した業容拡大にも前向きで、市場では攻めの経営戦略を評価する声も強い。

 カワチ薬品<2664>=大幅続伸で、昨年来高値を更新。
同社は4日取引終了後に、16年12月度(連結)の既存店売上高が前年同月比2.3%増になったと発表。11月度の1.4%増を上回り、2カ月連続のプラスとなったことが好感されているようだ。 全店ベースの売上高は前年同月比4.1%増(11月度は3.6%増)となり、2カ月連続で前年実績を上回った。販売促進に努めたことに加え、前年に比べ気温の低い日が続き季節関連商材が堅調に推移したことなどが寄与した。

 新華ホールディングス・リミテッド<9399>=ストップ高カイ気配。
同社は4日、昨年12月の時価総額が10億円以上をキープしたことを受けて、上場廃止の猶予期間から解除されたことを発表しており、これを材料視する買いが集中した。同社株は12月初旬から下旬にかけて100円未満の株価を490円まで暴騰させた経緯があるだけに、投機資金の食指を動かした格好だ。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想