「日銀の検証」は、結果、金融引き締め → 中期「円高トレンド」は変わらず

著者:平野朋之
投稿:2016/09/23 11:43

毎々、大きく下がらないと見解している方々は何をみているのか?


--------------------------------------------------
■昨日は、日米の金融政策発表を受けた下落の流れが一巡し、101円を回復しています。
これは昨日のイエレン議長によるコメントも利上げに対して以前よりも強まっていることや100円台での個人の買いにも支えられた格好となっています。


〜以下は、日米のイベントを踏まえてそれぞれの印象です〜

■まず、日銀の「総括的な検証」は、正直引き締めです・・・。マイナス金利の深掘りやETFの買い入れ額の大幅増加、その他もろもろありますが、市場の期待する緩和策から程遠くなった印象です。むしろ、異次元緩和といったあの当時の鼻息の粗さも何か懐かしく感じてしまうくらいです。

長期金利の全面的なマイナス化を招いたことで、少なからず金融業界に激震が走ったことは間違いなく、その多方面からも批判が出始めていました。その影響を受けて今回は百歩譲って、長期金利を「ゼロ%程度」まで戻す「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」という手法が導入されたことは、これは「完全に引き締め」にしか感じないくらいです。

■しかも、それをサポートするかの如く、量的緩和の部分を残し、マネタリーベースの拡大方針を継続する、つまりオーバーシュート型コミットメントを導入したようですが、物価上昇2%を超える時期もかなりの部分で不確定要素が多い中で、苦し紛れの選択肢だったようにも感じます。


その意味では、これだけ長きに渡り金融緩和政策を実行したにも関わらず、変化しないのは日銀政策の限界であり、手詰まり感でもあります。

残された総裁任期の中で2%のインフレは未達成のままで終了するように思えます。
むしろアベノミクスの終焉にも見えてしまうくらいです。

■いずれにしても、日本の金融政策は限界点に達しているだけに、財政政策の大胆な変更とある程度のリスクを採りにいかなければ、この長きに渡ったデフレからは脱却不可能とみています。


■125円台から下げに転じたドル円は、今年入ってもダウントレンドは継続しています。この状況にもかかわらず、いつまでたっても、下げ幅は小さい大きく売られないなどもコメントを繰り返している方もいますが、個人的には大きな流れはみていないのか?と思ってしまう位です・・・。

ここまで、ドル円は25円以上の円高となり、99円を割り込むと実弾がない限り、より大きな下落局面を迎えるという認識を持つ必要もあります。

単に、ここまで下げた現実がある以上、まだこの流れが続いている中では、→「これ以上売られない」は危険な考え方です。


■そしてFRBは、市場の予想通りの据え置きを選択しました。ただイエレン議長のコメントには強さを感じた印象です。米経済の好調さをアピールする一方で、世界的な景気や経済動向を配慮した「安定政策」、つまり超スローな追加利上げの選択肢は、結果的には正解だったとみています。

最近の世界経済は比較的安定的に推移しています。
その為時間稼ぎである程度コントロールできたのではないかとみています。今後、年1回の利上げを想定するのであれば、市場の予想通りということもあって価格変動もそれほど大きなものにならないとみています。

■FRBの安定的かつ、超スローな利上げこそが、原油価格を始め一次産品価格押し上げにつながるとみています。
コモディティー価格の上昇こそが世界経済のデフレ脱却につながり、再びマネーの好循環が始まるのではないかとみています。その意味では、ドル安誘導は必要不可欠なのです。

いずれにしても、イベントに対する印象を書きましたが、中期トレンドでみると結局は
ドル安トレンドの変更はないという見解です。


■本日は、特に注目する経済指標はありませんが、連銀総裁発言で多少のノイズがあると思われます。しかし、戻りをしっかりと売ることをイメージしています。

戻りレベル(この2日間に対するフィボナッチ)

・50.0%戻り…101.41円
・61.8%戻り…101.75円
平野朋之
株式会社トレードタイム代表取締役
配信元: 達人の予想