日米金融政策イベント前に動けず、売買代金の低迷を懸念

著者:冨田康夫
投稿:2016/09/09 21:08

来週の東京株式市場見通し

 来週の東京株式市場は、20~21日に開催される日米金融政策の決定会合を前にして、売り買いともに積極的に動きづらい地合いとなりそうだ。2日に発表された米8月の雇用統計の内容から、米国の9月利上げ観測はかなり後退している。一方、日銀は、これまでの異次元緩和策への「総括的な検証」を実施し、その上で何らかの追加緩和策が打ち出されるかに注目が集まる。来週の日経平均株価の想定レンジは、1万6600~1万7300円とする。

 米国で15日に発表される8月の小売売上高が、市場予想に比べて悪化した場合、利上げ後退観測から円高・ドル安が進行し、株価が軟調推移となる可能性がある。ただ、そうした場面でも、日銀による上場投資信託(ETF)の買い支え思惑が働いて急落は回避されそうだ。

 きょうの東証1部の売買代金は、メジャーSQ(特別清算指数)算出日にもかかわらず、2兆1662億円と実質的には極端な薄商いとなっており、今後上昇基調を明確にするには、売買代金の増加が必須といえそうだ。

9日の動意株

 ベクター<2656>=後場ストップ高。
15日から開催される「東京ゲームショウ2016」を控えて、9月1日に発表した新作ブラウザゲームへの期待が高まっているようだ。新作ブラウザゲーム「リグレティア」は、中国の深セン市益玩網絡科技が開発したMMORPG。他のブラウザゲームでは味わえない、がっぽり大金、しこたまレベルアップ、数知れない育成要素を体感できるなどの特徴を持つゲームで、豊富なコンテンツや機能により、サクッとプレイも、じっくりプレイも楽しめるという。

 RVH<6786>=後場一段高。
前引け後に資本準備金を20億円減少させ繰越利益剰余金の欠損を一掃すると発表しており、これを好材料視した買いが入っている。分配可能額の大幅拡充を図り、今後の株主還元の充実と資本政策の機動性を高めることを目的としているという。また、これに伴い拡充した分配可能額を原資として、自社株買いを実施すると発表しており、これも好感されている。上限を30万株、または3億円としており、取得期間は11月11日から来年11月10日まで。

 さくら総合リート投資法人<3473>=強調展開。
オフィスビル、住宅、商業施設を中心に投資する総合型のリート(不動産投信)で8日に東証に新規上場した。初値は公開価格9万1000円に対して13%安い7万9000円だった。上場2日目となるこの日は下値に値ごろ感からの買いも流入し、一時8万3900円まで上昇し、終値は8万3800円となった。

 ジーエヌアイグループ<2160>=急動意。
同社は遺伝子解析を強みとするバイオベンチャーで中国を研究開発拠点としている。同社は8日、中国国家食品薬品監督総局により特発性肺線維症治療薬として承認された唯一の医薬品である「アイスーリュイ」の結合組織疾患を伴う間質性肺疾患治療薬としての治験について、中国当局から承認許可を取得したことを発表、これを材料視する買いを呼び込んでいる。

 DMG森精機<6141>=後場上げ幅を拡大。
この日、日本マイクロソフト(東京都港区)と、工作機械を中心とする制御システムのセキュリティーとスマートファクトリーなどの実現に向けて技術協力で連携することで合意したと発表しており、これを好感した買いが入った。

 鎌倉新書<6184>=急反発。
8日取引終了後に発表した17年1月期第2四半期累計(2月~7月)の単体決算は売上高6億4100万円(前年同期比17.3%増)、営業利益1億5900万円(同51.1%増)、純利益9900万円(同61.5%増)と大幅な増収増益だった。特に、主力のWebサービスでは仏壇が前年同期比20%増、葬祭が同48%増、お墓が同21%増と全事業で売り上げは20%を超える伸びとなった。お墓事業は広告の効率化やコミュニケーション強化で成約率が向上したほか、葬祭事業も手数料率の変更により単価が上昇し売り上げが増加した。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想