米8月の雇用統計控え軟調、1万7000円前に足踏み

著者:冨田康夫
投稿:2016/09/01 18:24

明日の東京株式市場見通し

 2日の東京株式市場は、米8月の雇用統計発表を控えてその内容を見極めたいとの姿勢に加え、日経平均株価が心理的フシ目の1万7000円を前に利益確定の売りが優勢となることが予想され、全体相場は軟調推移となりそうだ。

 市場関係者からは「今週に入ってのメガバンクの売買代金増加を伴った連日の強調展開を見ると、8月半ばから続いていた薄商いのこう着相場から脱しようとするエネルギーを感じる。また、内需系と輸出関連のそれぞれの銘柄の物色も良好な循環となっているようだ」との見方が出ていた。

 1日の東京株式市場は、買いが優勢となり日経平均株価は続伸したものの、上値も重く小幅なレンジで推移し、1万7000円台回復はならなかった。日経平均株価終値は、前日比39円44銭高の1万6926円84銭と小幅続伸した。

1日の動意株

 ゼニス羽田ホールディングス<5289>=後場一段高。
安倍政権では2020年の東京五輪に向けて無電柱化投資を積極的に推進する方針をみせているほか、小池百合子東京都知事も無電柱化に前向きであり、道路下に設置されるスロープホール(電線共同溝)を手掛ける同社はその関連有力銘柄として投機資金の流入が続いている。また、日本列島への台風上陸が相次ぐなか、マンホール製造などコンクリート2次製品メーカーである同社は雨水対策で定評があり、官公庁向けで実績豊富なことから台風被害対策関連株としても注目されているようだ。

 ダブル・スコープ<6619>=大幅高。
同社はリチウムイオン電池向けセパレーターを生産するが、構造的な需要創出が期待されている。世界的にエコカー需要が高まるなかで、時流はハイブリッド車よりも二酸化炭素排出量の少ないプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)の普及促進に向かっており、つれて車載用2次電池を手掛ける企業に市場の関心が高い。同社は税制面で優遇措置などがある韓国に製造拠点を構え、相対的に低コスト生産が可能であり、その優位性に注目が集まっている。

 アエリア<3758>=3日連続のストップ高で、年初来高値更新。
同社は8月30日に、角川ゲームス(東京都渋谷区)との共同事業第1弾となるiOSおよびAndroid向け次世代育成シミュレーションゲーム「STARLY GIRLS-Episode Starsia-」を発表したことをきっかけに人気化。きょうは、子会社のリベル・エンタテインメントが来年1月配信予定のイケメン役者育成ゲーム「A3!(エースリー)」のティザーサイトを公開しており、新たな期待材料となっているようだ。

 田中化学研究所<4080>=ストップ高。
8月31日に同社の筆頭株主である住友化学<4005>を割当先とする1050万株の第三者割当増資を実施することが発表されたことから、これがポジティブサプライズとなり投機資金がなだれ込んだ。発行価格は626円で払込日は10月末。調達資金は65億7300万円で、リチウムイオン電池向け製品の設備投資資金に充当する予定。出資比率は50%強となる。住友化学は電気自動車(EV)用リチウムイオン電池部材に注力、田中化学に出資して正極材の共同開発を進めてきたが、過半の株式を取得し子会社化することで同分野の研究開発力を強化する狙いがある。

 フルヤ金属<7826>=続急騰。
きょう付の日経産業新聞で「次世代半導体の材料として有望な貴金属、イリジウムとルテニウムの粉末を高純度で量産する技術を確立した」と報じられており、これを好材料視した買いが入っている。記事によると、鉱山会社から購入した地金や、スクラップ材を使い、独自の技術で不純物を除去して粉末状にすることに成功したという。イリジウムの純度は99.995%、ルテニウムは99.999%の高純度に達するとしており、さらに粉末を使って次世代半導体の薄膜形成に使われるターゲット材や有機EL向け化合物などの製造も始めたとあることから、業績への貢献が期待されている。

 岡本工作機械製作所<6125>=一時ストップ高。
8月31日の取引終了後、科学技術振興機構の「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)」に、同社の事業テーマ「Si貫通電極ウェーハ全自動薄化加工装置」が採択されたと発表しており、これを好材料視した買いが入っている。「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)」は、大学や公的研究機関などで生まれた国民経済上重要な科学技術に関する研究成果をもとに、実用化を目指す研究開発フェーズを対象とした技術移転支援プログラム。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想