輸出関連中心に買い先行、戻り待ちの売りこなす

著者:冨田康夫
投稿:2016/08/31 18:32

明日の東京株式市場見通し

 1日の東京株式市場では、継続する外国為替市場での円安・ドル高傾向を好感して、輸出関連の銘柄中心に買いが先行する展開となりそうだ。ただ、日経平均株価は過去に滞留日数の多かった価格帯に浮上していることから、戻り待ちの売りも予想される。

 市場関係者からは「外国為替市場で、1ドル=103円台と約1カ月ぶりの円安水準となったことで、トヨタ自動車<7203>に代表される主力の輸出関連銘柄に物色の矛先が向いた。また、やや出遅れ感のあったメガバンクも大商いを集めて大幅高の買われたことが売買代金の増加につながった」との見方が出ていた。

 31日の東京株式市場は、外国為替市場での円安進行を追い風として主力株中心に終始強調展開。日経平均株価終値は、前日比162円04銭高の1万6887円40銭と反発した。東証1部の売買代金は2兆2045億円と、3日ぶりに活況の目安とされる2兆円を上回り、9日の2兆2254億円以来の水準に増加した。

31日の動意株

 USEN<4842>=後場に上昇幅拡大。
同社グループのアルメックスはきょう、コネクティッド・デザイン(東京都世田谷区)と10月からIoTを活用した宿泊空間のスマート化に関する実証実験を開始すると発表した。アルメックスは、ホテルや病院などの自動精算機やオペレーションシステムなどを手掛けている企業。コネクティッド・デザインは、スマートホームをはじめとするIoTに関する企画開発を行っている。両社は実証実験で利用者ニーズに応えることが確認できた場合、18年8月末までに2000室を目標としたスマート化を実現するとしている。

 野村総合研究所<4307>=後場一段高。
同社グループのNRIデジタルはきょう、デジタル社会における革新的なサービスやビジネスモデルを探索する「オムニチャネル研究会」を発足すると発表。これが買い手掛かりとなっているようだ。研究会では、次世代のオムニチャネル・マーケティングのモデルを構築することを目的に、産学連携での研究活動を推進。16年度はオムニチャネル先進企業の取り組みケースから、オムニチャネル・マーケティングで実現できること、成果を高めるポイントを整理し、モデル作りの基礎情報を抽出する予定だとしている。

 ヒロセ電機<6806>=3日続伸。
同社はこの日の午前中、産業機器用コネクターの世界大手である独ハーティングエレクトロニクスと、10ギガビットイーサネット向け小型接続技術に関する開発・標準化およびマーケティングと協業すると発表しており、これを好材料視した買いが入っている。工場内で機器類とインターネットをつなぐIoT(モノのインターネット)化が進んでいることから、新なた規格を開発・普及させることが重要と判断したことから、新標準作りに取り組むとしている。

 アクロディア<3823>=大幅高。
同社は30日、トレーディング向けプラットフォームシステムを提供するスパークル(東京都港区)への出資を通じ、フィンテック市場に参入することを発表、これを材料視する買いを呼び込んでいる。スパークル社はネットを活用した情報サービスやITシステムの構築および運用・受託・コンサルティングなどを行っており、同社との資本提携に伴う業容拡大効果に期待が集まった。

 アバールデータ<6918>=ストップ高。
同社は30日の取引終了後、東京エレクトロン デバイス<2760>と業務資本提携することを発表したことが好感された。両社が持つ半導体関連の技術を持ち寄ることで高付加価値製品の投入を迅速に行うことなどを目的としている。また、両社はともに同等金額(3000万円相当)の株式を持ち合う。アバールは東エレデバの発行済み株式数の0.19%の株式を保有するほか、東エレデバはアバールの同0.47%の株式を取得する。

 PCIホールディングス<3918>=急伸。
同社は車載用組み込みソフトなどの受託開発を手掛け、増収増益基調を継続するなど業績は好調に推移している。今月23日に、9月12日付でマザーズからの市場変更を既に発表していたが、東証1部か2部かは公募増資の価格が決まる8月30~9月2日に決定するとされていた。東証は30日、同社の市場区分を東証1部に決定したことを発表、TOPIX連動型ファンドなどの買いが見込めることから、これを改めて好感する買いが流入している。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想