17000円をいつ超えるのか

著者:堀篤
投稿:2016/08/30 13:13

17000円をいつ超えるのか

先週のイエレン氏の講演が、米国の利上げを示唆したとして、為替はドル高へ向かい、株式先物は上昇している。
これは、既定路線のシナリオであり、特に驚くべきことでもない。
日経平均先物は、再び16500円台を回復しているが、これも、ごく普通の動きといえる。
以前から、102円で16500円という均衡点について説明してきたが、市場環境の好転から、102円なら17000円、という新たな均衡点が作られる可能性はある。しかし、先週末の下落で、またしても102円で16500円、が、均衡点となっている。

先週の日経平均は、ほとんど動かず、市場関係者泣かせだった。
市場が動かない、ということは誰ももうからない、ということであり、市場では、それが最も閑古鳥が鳴く原因となる。
もっとも、夏休みから戻ったばかりの関係者には、ちょうどよい環境だっただろう。
しかし、それだけ、市場を囲む環境に変化がない、ということだ。
米国の利上げ、日本の金融緩和継続、下がれば政策的な買いが入り、上がればショートカバーが入る。こういった状況に何も変化はない。

しかし、利上げのタイミングが近づけば、短期的に相場のボラティリティは上がるだろう。
なぜなら、米国の利上げは、目先の材料出尽くしであり、そこで、ドル高の材料にはひとつの区切りがつくからだ。

つまり、9月20日21日のFOMCがXデーとなるとすると、そこにむけてドルは上がるが、そこで一旦、下落する可能性が強い。ドルと日経平均の連動性が高い現状を考えると、日経平均にも同じことが言える。
逆に、FOMCが、9月に利上げをしない雰囲気が強くなると、ドルは目先では上がらなくなる。その代り、やはり11月、12月利上げの期待が増すことになり、その前にドルが上昇しなおすことになるだろう。
こういった「読み」は、大きな相場の展開にはつながらないが、短期的な利益を生み出す。
ケース別に、ドルと日本株の動きを想定すると以下のようになる。

9月に利上げしそうで、実際に利上げ・・・それまでドルも日本株も急騰、20日以降、短期的に下落し、また回復
9月に利上げ予定だったのだが、利上げなし・・・それまでドルも日本株も急騰、20日以降、双方、急落。
9月に利上げしなさそうで、利上げ・・・20日までは動かず、2発表後に急騰、その後調整。
9月に利上げしなさそうで、利上げなし・・・株価はこの材料では動かず。

また、9月の利上げには、別日程による影響がある。
それは、9月13日から始まる国連総会、そして、9月25日に予定される米国大統領選のTV討論だ。
FOMCが、完全に政治的な動向から独立しているかといえば、否だ。
イエレン氏は、国際的な政治情勢に振られる可能性がある。
彼女がもっとも恐れるのは、米国発の世界的なリセッションだ。過去、米国の利上げが機となり、大きなリセッションが発生した、という経験は数多く存在する。その轍を踏みたくないのは、手堅い政策のイエレン氏ならばなおさらのことだろう。
米国の利上げによって、新興国通貨の急落、財政の破綻、といった可能性があれば、彼女は手を打たないだろう。国連総会にむけてそのような問題提起がなされる可能性もある。
また、現状では考えにくいが、トランプ氏への支持率が回復し、孤立主義が高まるような政治状況が作り出された場合にも、FRBは利上げをしづらくなるだろう。

逆に、これら二つの要素、つまり、新興国や欧州の債務問題が浮上せず、クリントン氏が優勢のまま大統領選が進むのであれば、9月に利上げ、という前提で市場が動く可能性は大きい。ただし、その場合でも、実際に利上げが行われるかどうかは、疑わしい。あくまでも、そういう前提で市場が動く、というだけの話だ。
「そういう前提で動く」場合の日経平均は17000円を突破し、為替は102円を上回るだろう。FOMCが開かれる20日までが勝負となる。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想