英開票にらみ神経質な展開、僅差なら波乱持ち越しも

著者:冨田康夫
投稿:2016/06/23 18:42

明日の東京株式市場見通し

 24日の東京株式市場は、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の開票内容が刻々と伝えられるなかで、思惑的な売り買いが目まぐるしく変化する神経質な展開となりそうだ。もし、“離脱”が多数を占めるような結果になれば、外国為替市場での急激な円高、日経平均株価急落に見舞われる懸念もある。

 市場関係者からは「“残留”が多数を占めた場合でも、僅差の場合には“離脱派が善戦した”との印象が残り、引き続き相場の波乱要因を持ち越しそうだ。さらに、あすの欧州や米国市場の反応が週明けの東京市場に影響する可能性もある」との見方が出ていた。

 23日の東京株式市場は、極端な薄商いながらも売り方の買い戻しが継続する展開となった。日経平均株価終値は、前日比172円63銭高の1万6238円35銭と反発した。ただ、東証1部の売買代金は1兆5701億円と、5月30日に次いで今年2番目の低水準となった。

23日の動意株

 三井化学<4183>=5日続伸。
化学メーカーの17年3月期は、前期のように原燃料コストの低下メリットが見込めないことに加え、為替の円高反転トレンドで総じて収益環境には向かい風が強い。そのなか、三井系総合化学大手である同社は多角的な展開力を生かし、「ヘルスケア、自動車用機能性材料などの非石化事業へ経営の軸足をシフトしていることから、相対的に強みを発揮しやすい」(業界担当アナリスト)と指摘される。ヘルスケアでは新興国の高水準の需要を背景に、不織布などの紙おむつ材料が好調で、今後も増産基調が続きそうだ。17年3月期営業利益は弱含み横ばい見通しながら、18年3月期は「今期推定比2ケタ増益が有望」(同)との見方が強い。

 熊谷組<1861>=後場一段高。
大和証券がリポートをリリース。17年3月期営業利益の会社計画は169億円(前期比31.1%減)と大幅減益予想としていることについて、過度に保守的な計画と見られると指摘。同証券では、17年3月期連結営業利益を248億円(前期比1%増)と予想。同証券ではまた、横浜市のマンション問題の処理に目途が立ったため、バリュエーションの回復が徐々に進むと考え、投資判断は「1」(買い)を継続。目標株価は440円から450円へ引き上げている。

 デンソー<6902>=反発。
英国EU離脱を巡る国民投票を目前に全体相場は極端に流動性が低下しているが、主力輸出株の押し目には打診買いの動きも観測されている。そのなか同社株は13年2月以来3年4カ月ぶりの安値圏に沈んでおり、世界最大の自動車部品メーカーにしてPBRは1倍以下、解散価値を下回っている。車載エレクトロニクス分野で高技術力を持ち、自動車のIT化が加速するなかで改めてリーディングカンパニーとして頭角を現している。

 シャープ<6753>=大幅上昇。
22日に開催された株主総会で、鴻海精密工業の郭台銘薫事長が7000人規模を視野に置いた大幅な追加リストラの可能性を示唆したことがメディアを通じて伝わっている。同氏は4月時点では雇用を維持する構えを見せていたが、コスト管理など経営の内実を見極めたうえで、再建には一段の合理化が必要との意思を示したもの。株価はこれをポジティブに評価する動きをみせている。

 オールアバウト<2454>=ストップ高。
同社はきょう、中国最大級の総合旅行サイト「Lvmama.com」と提携したと発表。これが材料視されているようだ。「Lvmama.com」は、インターネット上だけで取引を行うOTA(オンライン・トラベル・エージェント)と呼ばれる形態をとり、5大陸50カ国以上をカバー。さまざまなテーマやニーズに応えた予約サービスを提供している。

 ワールドホールディングス<2429>=大幅高。
22日の取引終了後、東京証券取引所から承認され、6月29日付で東証2部から東証1部市場に指定されることになったと発表しており、TOPIX連動ファンドなどによる買い需要を先取りする形で買われている。同社は製造業を中心とした人材派遣・業務請負会社。16年12月期連結業績は、売上高1001億1100万円(前期比13.8%増)、経常利益61億5300万円(同19.9%増)を見込んでいる。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想