買い気強く続伸、テクニカル面での改善進む

著者:冨田康夫
投稿:2016/06/08 19:00

明日の東京株式市場見通し

 9日の東京株式市場は、きょうの全体相場の堅調な値動きを引き継いで、日経平均株価は続伸となりそうだ。きょうの外国為替市場では、円相場が1ドル=107円を挟んで推移するやや円高・ドル安傾向の強い流れとなったものの、株式市場は昼休み時間中に中国税関総署が発表した5月の貿易統計が好調だったことから、中国景気に対する警戒感が後退したことや、原油先物価格が時間外取引でも堅調に推移したことなどを買い手掛かり材料に、後場後半に買い進まれ、この日の高値で取引を終えた。

 市場関係者からは「日経平均株価が前日に25日・75日の両移動平均線を突破してきたのに続いて、きょうは終値で一目均衡表の抵抗帯(雲)の上限値(1万6738円)を上抜いてきたことで、テクニカル面では相場環境は改善をみせてきた」との見方が出ていた。

 8日の東京株式市場は、高く始まった後いったん下押す場面があったものの、後場に入ると再び買いが優勢となり、大引けにかけて株価指数先物主導で上昇が加速した。日経平均株価は前日比155円47銭高の1万6830円92銭と続伸した。

8日の動意株

 ワイエイシイ<6298>=後場ストップ高。
液晶や有機EL分野向けにプラズマドライエッチング装置の受注を伸ばしており、業界内シェアは6割前後と他を圧倒する。米アップルが来年にも投入するiPhoneの表示装置に有機ELパネルを採用する方向にあり、有機ELの製造装置や素材メーカーの商機拡大が株高思惑をもたらせているが、同社は液晶だけでなく有機EL向けでも高実績を誇る。来週13日に始まるアップルの世界開発者会議(WWDC)を控え、「iPhone7s」での有機ELパネル採用に関する新たな思惑が生まれており、同社はその関連有力株としてマークが強まっている。

 SOL Holdings<6636>=後場急伸。
午後1時45分ごろ、メキシコ現地法人が、現地のプロフォン社(ハリスコ州)から新たなスーパーソルガム種子の購入申し込みを受けたと発表しており、業績への寄与を期待した買いが入っている。今回、申し込みを受けたのは、緑肥用として15万キログラム(1キログラム=22ドル、エタノール用5万キログラム(同30ドル)の合計20万キログラム(販売総額480万ドル)。来年3月末までに納品を行う予定だが、同社在庫からの販売は行わず、今期仕入れるスーパーソルガム種子の販売を行うため、従前のような移動平均法による仕入価額と販売価額の差額による会計上の損失は発生しないとしている。

 トヨタ紡織<3116>=後場一段高。
ドイツ証券はこの日付のリポートで、投資判断「バイ」を継続しつつ、目標株価を2800円から2900円へ引き上げたことが好感されている。同証券では、米国の赤字、ヨーロッパやアフリカへの抜本的な対策に加え、オーストラリアとアジアの改善が奏功し、営業利益率が向上していることを評価。自動車需要や為替動向などを踏まえて17年3月期営業利益を592億円から649億円(会社計画525億円)へ、18年3月期を同625億円から718億円へ予想を引き上げた。

 大東紡織<3202>=急伸。
同社は7日取引終了後に、創立120周年を記念した株主優待を実施し、保有株数に応じてカタログギフトを贈ると発表。また、みずほ銀行をアレンジャーとするシンジケートローン借入を実行することも明らかにしたことで、財務内容の改善なども期待されているようだ。今回のシンジケートローンは、4月のシンジケートローンでリファイナンスとならなかった残債のすべてについて新たに長期資金を借り入れるもの。これにより、借入期間内の約定弁済額を営業キャッシュフローの範囲内に収めることができるほか、支払利息負担が前期に比べ半分程度まで減少する見通しだという。なお、シンジケートローン実行に伴い、借入契約中途解約損失7500万円を特別損失として計上するが、17年3月期業績予想にはすでに織り込まれている。

 OSGコーポレーション<6757>=一時ストップ高。
同社は7日の取引終了後、17年1月期の第1四半期(2~4月)連結決算を発表。売上高は14億9300万円(前年同期比12.9%増)、営業利益は1億3700万円(同4.2倍)、純利益は6400万円(同64倍)と大幅な増益を達成したことが好感されている。ウォータードリンクビジネスでは、家庭用製品で取り扱い販売店の拡充に注力。業務用製品でも、ウォータークーラー市場において駅や空港、学校などの公共施設や東京五輪関連を含むスポーツ施設への導入を図っている。

 丸和運輸機関<9090>=大幅反発。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が7日付でレーティング「バイ」継続、目標株価を3240円から3700円へ引き上げた。低温物流センターの拡大や会員企業の拡大により事業規模を拡大し、新中計目標を超過達成すると指摘。17年3月期を通期連結営業利益で会社側計画の44億8300万円(前期38億7900万円)に対して従来予想の44億円から45億円へ、18年3月期を50億円から56億円へ引き上げている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想