利益確定売りマインド強まる、会期末で政策関連の発言を注視

著者:冨田康夫
投稿:2016/05/31 21:11

明日の株式相場見通し

あすの東京株式市場は、日経平均株価5日続伸の後を受け、利益確定売りのマインドが強まりそうだ。ただ、円安・ドル高傾向が継続するようだと、買い優勢となる場面もありそうだ。あすは通常国会の会期末に当たり、消費増税再延期をはじめ、複数の経済政策を巡る発言が交錯する可能性もあり、変動値幅が広がる可能性もある。

 市場関係者からは「きょうの東証1部の売買代金が2兆8740億円と大きく膨らんだのは、国際的に多くの機関投資家が指標として利用する株価指数MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の採用銘柄の入れ替えに伴うまとまった売買が取引終了間際に集中したための特殊要因で、市場エネルギー回復の兆しとはいえない」との見方が出ていた。

 きょうの東京株式市場は、前日の米国株式市場休場で手掛かり材料を欠いたものの、外国為替市場での円安進行や、4月の鉱工業生産指数速報値が事前の市場予測に反して上昇したことなどが買い支援材料となり、日経平均株価終値は前日比166円96銭高の1万7234円98銭と5日続伸となった。

 日程面では、通常国会会期末、1~3月期の法人企業統計、5月の新車販売台数に注目。
海外では、経済協力開発機構(OECD)理事会、中国5月の製造業PMI、米5月のISM製造業景況指数、米5月の新車販売台数、米地区連銀経済報告(ベージュブック)が焦点となる。

<動意株・31日>=新日本科学、大真空、ダブル・スコープなど

 新日本科学<2395>=切り返し急。
タンパク質の設計図であるDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)を構成する4種の塩基を組み合わせた核酸分子を用いる「核酸医薬」が、抗体医薬に次ぐネクストステージの薬剤として注目を集め始めている。同社株の5月9日からの急騰劇もこの核酸医薬が株高の原動力を担うテーマとなった。同社の重要投資先であるナスダック上場企業が、米ファイザー社と核酸治療薬の共同開発で合意、同時に特許権を持つ核酸合成技術に関して、最大で総額約1000億円のロイヤルティーのライセンス契約を締結したことが4連続ストップ高の材料だ。

 大真空<6962>=4日続伸。PBRはわずか0.4倍に過ぎず、商いは低調ながら売り物薄のなかで継続的な買いが流入している。水晶デバイス大手で、16年3月期業績は経営構造改革効果の発現で営業利益段階から黒字化を果たした。17年3月期も営業利益段階で3割増益を見込む。IT化が進展する自動車向けに加え、ウエアラブル機器分野などを育成し成長の礎を築く構えだ。

 ダブル・スコープ<6619>=大幅高。
同社は30日の取引終了後、6月30日時点の株主に対して1対2株の株式分割を実施すると発表した。効力発生日は7月1日。投資単位当たりの金額を引き下げ、投資家層の拡大と株式の流動性を高めることを目的としている。同時に公募増資も発表した。122万株の公募と上限18万株のオーバーアロットメントによる売り出しを実施する。発行価格は6月7日から9日のいずれかの日に決定する。調達資金は約85億円で子会社であるダブル・スコープ・コリアの投融資資金に充当する。

 フライトホールディングス<3753>=後場急伸。
同社はこの日の正午、子会社のフライトシステムコンサルティングがEU圏における大手決済事業者クレドラクスと業務提携を締結したと発表し、欧州での事業拡大を期待した買いが集まっている。クレドラクスは、ハイテク技術を駆使するアクワイアラー(加盟店契約業務者)として、eコマース決済およびEMV(ICカードの統一規格)仕様に対応したmPOS(スマートフォン決済用端末)をサポートしている。

 ディー・ディー・エス<3782>=ストップ高。
同社は30日の取引終了後、同社の多要素認証ソリューション「EVE MA」が、Gcomホールディングス(福岡県福岡市)が開発する地方自治体向け住民情報システム「Acrocity」の認証オプションとして採用されたと発表しており、業績への寄与を期待した買いが入っている。

 エディア<3935>=ストップ高。
iPhoneおよびAndroid端末向けゲームアプリ「蒼の彼方のフォーリズム―ETERNAL SKY-」の事前登録を開始したと27日に発表したことが引き続き買い手掛かりとなっているもよう。前日にストップ高まで買われた流れを引き継ぐかたちとなっている。このゲームは、テレビ東京で今年1月から3月まで放映されていた大人気アニメ「蒼の彼方のフォーリズム」のスマートフォンカードバトルゲーム。今年初夏の配信を予定している。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想