訪日外国人4000万人へ、語学インフラ整備が加速

著者:冨田康夫
投稿:2016/04/07 14:47

多言語対応の意識広まる

 政府は3月30日、訪日外国人旅行者数を従来の目標である2020年に2000万人、30年に3000万人から数字を大幅に引き上げ、20年に4000万人、30年に6000万人と新たに設定した。安倍首相は、「観光は成長戦略の大きな柱の一つ」としており、文化財の修繕に加えて多言語解説の導入などの支援が今まで以上に必要になってくる。日本政府観光局(JNTO)による2月度訪日外国人旅行者のうち9割はアジア周辺国で占められており、今後は英語だけでなくアジア諸国の言語対応が求められる。そのようなきめの細かいサービスがリピーター増加のきっかけとなりそうだ。

 小田急電鉄<9007>は3月30日から、タイの旧正月に合わせて、外国語ホームページ内にタイ語版ページを開設した。タイの訪日旅行者数は2015年に前年比約21%増の79万6700人となり、過去最高を記録。今後、より増加が期待できることから、母国語でのサービスを開始した。沿線の観光エリアや交通情報といったコンテンツを充実させ、集客に繋げる見込みだ。京浜急行電鉄<9006>も6月末まで「タイ人おもてなしキャンペーン」を実施、クーポンや特典をプレゼントしている。

 阪急阪神ホールディングス<9042>傘下の阪急電鉄は、阪急梅田駅周辺の4カ所で多言語デジタルサイネージ「Umeda i(ウメダ アイ)」のサービスを開始した。これには、梅田エリアに集積するオフィス、商業施設、ホテルなどの施設情報が5言語(日本語、英語、中国語“繁体語と簡体語”、韓国語)で登録されている。画面をタッチして操作することで現在地から各施設までの経路が表示される。

 アドベンチャー<6030>は、計18言語を表記する着地型アクティビティ販売サイト「WannaTrip」を運営している。外国人向け国内ツアー商品を拡充するほか、訪日外国人向けサービスを行う会社と提携し、インバウンド事業の領域を拡大している。

 インバウンド銘柄として代表的な三越伊勢丹ホールディングス<3099>高島屋<8233>J.フロント リテイリング<3086>は指さし会話ボードや外国人スタッフを配置している。またオンライン英会話サイトを運営するレアジョブ<6096>は、大阪支社を新たに設置するなど語学インフラの需要はまだまだ増えそうだ。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想