1万7000円防衛から反発へ、決算発表評価し個別物色

著者:冨田康夫
投稿:2016/02/04 19:09

明日の東京株式市場見通し

 5日の東京株式市場は、同日日本時間夜の米1月の雇用統計発表を前に手控えムードが広がりそうだ。ただ、きょうは急速な円高・ドル安を織り込んで3日続落となったものの、終値で心理的フシ目の1万7000円を防衛したことは、あすの反発基調につながりそうだ。決算発表は佳境を迎えており内容を評価しての個別物色が活発化する。

 市場関係者からは「円相場は4日の米外国為替市場で一時、1ドル=117円台前半まで急上昇をみせ、1月29日の日銀によるマイナス金利導入発表前の水準に戻ってしまった。これに連動して、日経平均株価も1万7000円を一時割り込んだことは確かに失望感を与えた。しかし、東証1部の売買代金は2兆8587億円と高水準を維持しているうえに、営業利益を上方修正した三菱ケミカルホールディングス<4188>をはじめ化学株の一角が堅調な推移をみせていた」との声が出ていた。

 4日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比146円26銭安の1万7044円99銭で3日続落。日銀の黒田総裁が講演で、マイナス金利の導入に関連して「金融緩和をより抜本的に進められる」と発言したと伝えられ、日経平均株価は午後1時過ぎに一時、前日比プラス圏に浮上する場面もあった。ただ、その後は再び売り優勢の推移となった。

4日の動意株

 シャープ<6753>=後場急騰。
昼のNHKニュースで「4日の取締役会でホンハイ(台湾・鴻海精密工業)に優先交渉権を与え、台湾資本の傘下で再建を目指す方針を決た」と報じられており、これを好材料視した買いが入っている。国と民間が作る官民ファンドの産業革新機構と鴻海から、それぞれ再建に向けた提案を受けていたが、鴻海側がここにきて支援金額を上積みして「機構」の支援額を大きく上回る金額での買収を提案したと伝わっており、これが決め手となったようだ。

 三菱ケミカルホールディングス<4188>=後場一段高。
同社は午後1時ごろに、16年3月期の連結業績見通しについて、売上高を3兆9400億円から3兆8700億円(前期比5.8%増)へ下方修正した一方、営業利益を2480億円から2550億円(同53.9%増)へ上方修正したことを好感した買いが入っている。原油価格下落に伴う販売価格の低下で売上高は下方修正したものの、医薬品事業における技術料収入の増加やワクチンなどの増収、および研究開発費を中心とした販管費の削減などが寄与したという。

 ヨネック<7906>=後場急伸。
同社はきょう午後2時に、16年3月期第3四半期累計(15年4~12月)の連結決算を発表。営業利益は22億7000万円(前年同期比50.0%増)となり、通期計画24億5000万円に対する進捗率は92.7%に達した。売上高は384億4100万円(同8.9%増)で着地。戦略的かつ積極的に投じた広告宣伝活動などが功を奏した。なお、通期業績予想は従来計画を据え置いている。

 フュートレック<2468>=ストップ高。
3日の取引終了後、指輪型ウエアラブルデバイス「RING ZERO」の開発を行うログバー(東京都渋谷区)と資本業務提携契約を締結したと発表しており、今後の成長に寄与するとの見方から買いが入っているようだ。今回の提携により、フュートレックはログバーに対して、出資による開発資金のサポートおよび音声認識・機械翻訳技術の提供を行うという。

ミツバ<7280>=急伸。
同社は3日取引終了後に、16年3月期第3四半期累計(15年4~12月)の連結決算を発表。営業利益は163億8200万円(前年同期比5.0%増)となり、通期計画210億円に対する進捗率は78.0%に達した。売上高は2451億8500万円(同9.6%増)で着地。北米の自動車生産の増加などにより、主力の輸送用機器関連事業が増収増益となったことが寄与した。なお、通期業績予想は従来計画を据え置いている。

アドアーズ<4712>=一時ストップ高。
3日に、東京の秋葉原や池袋など訪日外国人に人気の地域にある13店舗で、電話と使った通訳サービスを開始すると発表しており、これを好感した買いが入っている。新サービス「マルチリンガルコンタクトセンターサービス」は、電話通訳のブレインプレス(東京都新宿区)と組んで、主要7カ国語(英語、中国語、韓国語、タイ語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語)の通訳を24時間365日提供するというもの。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想