日銀“「マイナス金利」奇策弾”から一週間!その実相と今後の注目ポイントは?

著者:津田隆光
投稿:2016/02/04 19:04

マイナス金利ネガティブ報道には“眉唾”が必要?

先週開かれた日銀金融政策決定会合における本邦初のマイナス金利政策導入についての是非や評価があれこれ為される昨今、個人的には今回のマイナス金利政策の正確な理解や判断が欠如した報道が為されているような気がしてなりません。

「私たちの銀行預金の金利がさらに下がってしまう」とか(=実際にそれを公表している銀行も中にはありますが・・・)、「企業向けの預金口座を対象にマイナス金利措置を行う」といった報道が独り歩きしている感がありますが、正確な情報については日銀のHPに掲載されている「日本銀行当座預金のマイナス金利適用スキーム」や「(参考)本日の決定のポイント-日本銀行」を確認する必要があります。

そもそもですが、市中銀行は「準備預金制度に関する法律」第三条に則り日銀が定めた準備率に従わねばならないルールがある中で、マイナス金利政策というのは市中銀行が日銀に預けているそのお金に対して金利を支払わなければならなくなること。

ただし、今回日銀が決定したマイナス金利政策の骨子は『3段階の階層構造』となっており、
①元々預けてある市中銀行のお金(=基礎残高)
に対しては「従来の扱いを維持する」(=+0.1%金利を適用)としており、
②マクロ加算残高(=日銀が一定の計算によって適宜加算する金額のこと)は「ゼロ%を適用」、そして
③政策金利残高(=①と②を上回る部分)、つまり“預け過ぎ”のお金に対して「▲0.1%を適用」するとのこと。(適用は2月16日から)

現在の日銀当座預金残高は250兆円ほどある中、今回の適用対象は市中銀行が“預け過ぎ”(=ブタ積み資金)である③「政策金利残高」の10~30兆円程度となり、つまりは全体の4~12%程度のお金に対する措置であるということをまずは理解する必要があります。
と言うことは、センセーショナルに喧伝されるようなネガティブな報道に対してはあくまで冷静に判断する必要があるとともに、日銀のアナウンスメント効果に対しては一定の評価を与えるべきものの、市場はすぐに催促相場となることにも留意する必要があります。

一方で、現時点のテクニカルチャート分析を行ってみると、当面のドル/円相場は引き続き20ヶ月移動平均線(≒118.00円)を強く意識しつつ、週足・ボリンジャーバンド(21週)の±2σライン内である117.00~124.00円をメインの戦場とするレンジ相場が継続すると想定します。ただし、足もとでは21週移動平均線(≒120.50円)が上値抵抗ラインとして意識される展開となるのではないでしょうか?

これからは、明日の米雇用統計結果数値とともに、来週10日に予定されているイエレンFRB議長の議会証言(下院金融サービス委員会)内容には要注目です。
津田隆光
マネースクエア チーフマーケットアドバイザー
配信元: 達人の予想