。誰もいないせいか、ただっ広く感じる。当たり前なのに。薄暗くて、すぐに気づかなかったが、便器も、洗面台も、綺麗に艶が出ている。洗面台は何かしら異様で、鏡の向かい側の壁にも少し形の違う鏡がかかっている。鏡が鏡を映していた。気持ち悪かったので、僕はかがんで歩いて鏡に映らないように便器に近づく。数歩歩いただけでも、少し疲れた。便器は、綺麗ではあったが、前流さなかったのか、水が濁っている。僕は用を足さなければいけない体... ...続きを読む

。わかっている。わかっているのに僕はしばらくの間、判然と立つ。目に映るのは何の変哲もない扉。多分、取っ手が丸いせいだと、勝手に理由をつける。鍵がかかっていないのも知っている。それでも、しばらくしてから僕は取っ手に手をかけた。接触のせいか、やや重い。力をこめるとガチャリと大きな音がした。そして、すぐに僕は取っ手を元に戻す。いや、周りが単に静か過ぎるだけだ。僕はそう、理由をつけて落ち着く。僕は、扉を開ける必要がある... ...続きを読む

いつのころからだろう？ そう、思いながら僕はマッチをこする。もう、吸いたいのか吸いたくないのかもわかってはいない。ただ、僕を崇拝するための儀式でしかないのかもしれない。そう、ただの儀式だ。それ自体は何の意味も持たない。どうしたというんだ？ひょっとすると、儀式をとるという行為で問題をすり替え、ただ、気を紛らわしているのだろうか？今更なにゆえ？ここまできてなにから？僕はやはりとんでもない臆病者なのかもしれない。身... ...続きを読む