。誰もいないせいか、ただっ広く感じる。当たり前なのに。薄暗くて、すぐに気づかなかったが、便器も、洗面台も、綺麗に艶が出ている。洗面台は何かしら異様で、鏡の向かい側の壁にも少し形の違う鏡がかかっている。

あるスーパーマーケットで一組の老夫婦を見た。どう贔屓目に見てもプチブルともほど遠い、いわゆる低所得者層の人達だ。「おい、それ、赤い、赤いの、にんじん、あかい、あかいの、あかい、あかいの…」旦那さんがは

。わかっている。わかっているのに僕はしばらくの間、判然と立つ。目に映るのは何の変哲もない扉。多分、取っ手が丸いせいだと、勝手に理由をつける。鍵がかかっていないのも知っている。それでも、しばらくしてから

いつのころからだろう？