月影 隼人さんのブログ

最新一覧へ

« 前へ1493件目 / 全3475件次へ »
ブログ

闘戦経

やはり日本人の精神構造とは全く違うことが分かった

正々堂々と戦い、騙まし討ちを恥と考える国民性だから相容れる筈は無いんだね



著された理由として、中国兵法書『孫子』における「兵は詭道なり(謀略などの騙し合いが要)」とした思想が日本の国風に合致せず、いずれこのままでは中国のような春秋戦国時代が訪れた際、国が危うくなるといった危惧から、精神面を説く必要が生じた為、『孫子』の補助的兵書として成立した旨が、『闘戦経』を納めた函(はこ)の金文に書かれている。


金文を一部引用すると、「闘戦経は孫子と表裏す」とあり、『孫子』(戦略・戦術)を学ぶ将は『闘戦経』(兵としての精神・理念)も学ぶことが重要であるとした大江家の思想がうかがえる。



当書における思想の特徴として、物事を二元的に区別して考えるのではなく、一元的に集約して語り、用所ごとに使い分けるべきと論じたもので、「これは一と為(な)し、かれは二と為す。何を以って輪と翼とを諭(さと)らん」の文に表れている。
翼は一対であり、区別(二元論)をしても、ものの役には立たないのは事実であり、中国朝廷の制度のように、文官・武官と別けるのではなく、両道に努めるべきだとする大江家兵法の根幹が各所で説かれる。 (文武両道は此処から始まったのか??)


一方で、思考の基盤としては、陰陽思想や古代中国の賢人の言葉を引用し、自然の摂理(自然現象や動物の体形および生態系)から照らし、物事を洞察し、解するように述べている



「闘戦経」はわが国最古の兵書であり、著者は大江匡房(おおえのまさふさ)(1041~1111年)と言われている。


 大江家は朝廷の秘書を管理する家柄であり、秘書には「孫子」など中国の古兵書が多かったから、匡房は「孫子」の家元であり、彼より「孫子」を伝授された源義家が前九年の役や後三年の役で大活躍をした話は有名である。
ところが、その彼が「孫子」を批判して書いたのが、この「闘戦経」なのである


当時は中国文化の無条件取り入れ時代であり、国情の違う中国で生育した「孫子」を無批判に取り入れて心酔し、策に流れて、誠実な努力を怠る者が多くなり、中国兵法失敗の前轍(ぜんてつ)をたどる恐れがあった。
匡房はこの時弊を憂慮し「孫子」の欠点を指摘して、そのままではわが国に適用できないことを警告するとともに、神武以来の日本における兵法経験を収集整理し、日本最初の兵書を書こうとした野心作がこの本であり、現代にいたるまでの世界各国の兵書が「重要なり」としていることの要点をズバリと主張していることは見事である。


「闘戦経」は、大江匡房がまず自ら十分に外来文化を研究したうえで、「これを取り入れる前に先ず日本文化を確立せよ」と主張して自ら範を示すとともに、自分の考えを確立しないで人の意見を無批判に取り入れることの危険を諄々(じゅんじゅん)と説いた達見であり、食わず嫌いで外来文化を拒否する狭量な国粋主義者ではない。


闘戦経は優れた兵書であるとともに、人生哲学の書として、現代にも通ずる貴重な本である。 永らく幻の兵書として行方がわからなかったが、このたび再び陽の目を見ることになったのは大変嬉しいことで、しかもその仕事をさせていただいた私は、まことに著者冥利(みょうり)に尽きるものであり、この本をここまで守り伝えて来られた先人の方々に改めて感謝の意を表する次第である。


昭和五十七年十一月  大 橋 武 夫


● 一、  我が武道は天地の初めよりある。
 
● 二、 第一は日本の武道、第二は中国の兵法。
 
● 三、 骨を強化す。
 
● 四、 金は金たるを知り、土は土たるを知れ。
 
● 五、 天は剛毅にして傾かず。
 
● 六、 胎児はまず骨から成る。
 
● 七、 造化の神は冷厳である。武もまた断乎たれ。
 
 八、 孫子は詫譎「きけつ」(いつわり、あざむく)の書である。
 
● 九、 兵法の本来は戦いにある。
 
● 十、 中庸がよく、偏してはならない。
 
● 十一、目は三つはいらない。
 
● 十二、死生を論ずる間は死生を悟れず。
 
● 十三、孫子は懼字「くじ」(敵を恐れる)なり。
 
● 十四、 四体破れざるに、先ず心を失うは天地の理にあらず。
 
● 十五、 魚に鰭「ひれ」あり、蟹に足あり。
 
● 十六、物の根たるもの五(陰陽、五行、天地、人倫、死生)あり。
 
● 十七、 軍は進止あるのみ。
 
● 十八、 兵は稜(刀尖、鋭、鋭気)を用う。
 
● 十九、 未だ謀士の骨を残すを見ず。
 
● 二十、 軍に足痕(足あと)なきは善なり。
 
● 二十一、 我、蝮蛇(まむし)の毒を生かさん。
 
● 二十二、 疑えば、天地みな疑わし。
 
● 二十三、 「呉子」(呉起の兵書)は可なり。
 
● 二十四、 武将の敗因は不決断。
 
● 二十五、 智者は威をおそれ、罰をおそれず。
 
● 二十六、 蛇に足はないが、百足(ムカデ)に勝つ。


● 二十七、取るものは倍して取り、捨てるものは倍して捨てよ。 
 
● 二十八、英気(火)のない軍は敗れる。 
 
● 二十九、戦いは勝つことが第一である。 
 
● 三十、小虫の大敵をたおすは毒あればなり。 
 
● 三十一、人智も鬼智をしのぐことができる。 
 
●  三十二、戦国の主たらんものは疑(ためらい)をすてよ。 
 
● 三十三、ふところ手(隙・スキ)するなかれ。 
 
● 三十四、変を知っても常となせ。 
 
● 三十五、胎児、胞あり。 
 
● 三十六、蔓(つる)は細いが、瓢(ひさご)を支える。 
 
● 三十七、まず脚下の蛇を断て。 
 
● 三十八、智の用は内照にあり、勇の用は外発にある。 
 
● 三十九、陣頭に仁義なく、刃先に常理なし。 
 
● 四十、先ず体を得た後、用を得るものは成る。 
 
● 四十一、亀は万年、鴻(おおとり)とならず。 
 
● 四十二、龍が大空に騰(あが)るものは勢なり。 
 
● 四十三、単兵、急に攻めて勝つには毒尾を打つ。 
 
● 四十四、離弦(発矢)の勢い、衆を討つべし。 
 
● 四十五、輪の輪たるを知るものには、蜋は腕をのばすべし。 
 
● 四十六、虫は飛ぶことを知らず、蝉は蟄を知らず。 
 
● 四十七、人、神気を張れば勝つ。 
 
● 四十八、水に生くるものは甲鱗を有し、山に生くるものは角牙を有す。 
 
● 四十九、まず力、術はその次。 
 
● 五十、威をたのまず、勇をたのまず、智をたのまず。 
 
● 五十一、斗(北斗七星)は向背し、磁は南を指す。 
 
● 五十二、兵の本来は国の禍患を絶つにあり。 
 
● 五十三、用兵の極意は虚無(孫子の詭譎)にあらざるなり。 

 


コメントを書く
コメントを投稿するには、ログイン(無料会員登録)が必要です。