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ノーベル医学・生理学賞 東工大 大隅良典

おめでとうございます

生物はつながっているのだ

酵母の細胞を使って、「オートファジー」の仕組みの解明に取り組み、
平成5年にこの仕組みを制御している遺伝子

ノーベル医学・生理学賞 東工大 大隅良典栄誉教授
10月3日 18時35分

ことしのノーベル医学・生理学賞の受賞者に、細胞が不要になったたんぱく質などを分解する、「オートファジー」と呼ばれる仕組みを解明した東京工業大学栄誉教授の大隅良典さん(71歳)が選ばれました。日本人のノーベル賞受賞は3年連続、アメリカ国籍を取得した人を含めて25人目で、医学・生理学賞の受賞は去年の大村智さんに続き4人目です。
大隅さんは、福岡市の出身で71歳。昭和42年に東京大学教養学部を卒業したあとアメリカのロックフェラー大学に留学し、愛知県岡崎市にある基礎生物学研究所の教授などを経て、現在は、東京工業大学の栄誉教授を務めています。大隅さんが取り組んだ研究は、細胞が不要なたんぱく質などを分解する「オートファジー」と呼ばれる仕組みの解明です。
この仕組みは、細胞に核のあるすべての生物が持つもので、細胞の中で正しく機能しなくなったたんぱく質などを、異常を起こす前に取り除く役割や、栄養が足りないときにたんぱく質を分解して新しいたんぱく質やエネルギーを作り出す役割を果たしています。
大隅さんは、酵母の細胞を使って、「オートファジー」の仕組みの解明に取り組み、平成5年にこの仕組みを制御している遺伝子を世界で初めて発見しました。
その後も同様の遺伝子を次々と発見してそれぞれが果たしている機能を分析するなど、「オートファジー」の仕組みの全体像を解き明かしてきました。
パーキンソン病などの神経の病気の一部ではオートファジーの遺伝子が、正常に機能していないことが分かっていて、予防法や治療法の開発につながるのではないかと期待されています。
大隅さんは、こうした業績が認められて平成18年には日本学士院賞をまた平成24年には京都賞を受賞したほか去年、カナダの世界的な医学賞、「ガードナー国際賞」を受賞しました。
日本人のノーベル賞受賞は3年連続、アメリカ国籍を取得した人を含めて25人目で、医学・生理学賞の受賞は去年の大村智さんに続き4人目です。
大隅さんの研究「オートファジー」
大隅良典さんは、細胞の内部で不要なたんぱく質などを分解する「オートファジー」という仕組みを解明した研究が評価され、ノーベル医学・生理学賞を受賞することになりました。
「オートファジー」は、「自分を食べる」という意味で細胞に核のあるすべての生物に備わる生命の基本的な仕組みです。
細胞は栄養が足りない状態になると、生き残るためにみずからの中にあるたんぱく質などをアミノ酸に分解し、新しいたんぱく質の材料やエネルギー源として利用します。古くなったり、傷ついたりして要らなくなったたんぱく質も同じように分解し、再利用していて、こうしたオートファジーの仕組みは、細胞の働きを正常に保つ上で欠かせないものとなっています。
大隅さんは、昭和47年に東京大学の大学院を出たあとアメリカのロックフェラー大学に留学し、酵母を使って細胞内部の働きを詳細に調べる研究を始めました。そして、昭和63年、東京大学の自分の研究室で顕微鏡をのぞいていたとき、細胞の「液胞」と呼ばれる器官の中で小さなたんぱく質の粒が激しく動く様子を見つけました。
栄養の足りなくなった酵母が、細胞の成分のたんぱく質などを分解するために液胞に取り込む、オートファジーの様子を捉えた瞬間でした。
大隅さんは、その後、栄養不足の状態にしてもオートファジーが起きない酵母を人工的に作り、正常な酵母と比較して、オートファジーに必要な遺伝子を次々と特定しました。こうした遺伝子は動物や植物にも共通していることが徐々に明らかになり、オートファジーはヒトを含む、細胞に核のあるすべての生物が持つ生命の基本的な仕組みであることが分かってきました。
パーキンソン病などの神経の病気の一部ではオートファジーの遺伝子が、正常に機能していないことが分かっていて、予防法や治療法の開発につながるのではないかと期待されています。
こうしたことからオートファジーの研究を巡っては世界的に激しい競争が続いていて大手調査会社の「トムソン・ロイター」の集計によりますと関係する論文の数は去年1年間だけでおよそ5000本にのぼるということです。
こうした研究の発端となっているのが大隅さんの発見で、生命科学の分野に大きな影響を与えたことを示しています。
大隅さん「光栄としか言いようがない」
ノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった、東京工業大学・栄誉教授の大隅良典さんは、横浜市緑区の東京工業大学の研究室で、報道陣の取材に答え、「私のような基礎的な生物学を続けてきた人間が、このような形で評価していただけることを光栄に思います」と述べました。
報道陣から「いまのお気持ちは」と問いかけられると、「本当に光栄としか言いようがない」と喜びをあらわしていました。
また、「若い人には、サイエンスはすべてが成功するわけではないが、チャレンジすることが大切だと伝えたい」と話していました。大隅さんは、外部からの英語の電話に「本当にありがとう。うれしいです」と答えていました。
母校 喜びに沸く
ノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんの母校、県立福岡高校も喜びにわきました。
大隅さんが昭和38年に卒業した福岡市博多区の県立福岡高校では、高校時代の同級生や井上拓夫校長ら10数人が集まり発表を待ちました。
そして受賞が決まったことが伝えられると、皆で拍手をして喜びを分かち合いました。
このうち大隅さんが部長を務めたこの学校の化学部に所属していた同級生の早川誠而さんは、「本当に感激しています。高校時代からわれわれと比べものにならないくらい優秀な人でした。福岡の誇り、日本の誇りです」と興奮気味に話していました。
また、井上校長は、「高校始まって以来の快挙でうれしいです。あす早速、全校生徒に報告します」と話していました。
日本人の3年連続受賞は14年ぶり
ことしのノーベル賞で、大隅良典さんの医学・生理学賞の受賞が決まったことで、去年の▽医学・生理学賞の大村智さん、▽物理学賞の梶田隆章さんに続いて日本人の受賞は3年連続となりました。アメリカ国籍を取得した人も含めると、日本人が3年連続でノーベル賞を受賞するのは、▽白川英樹さんと▽野依良治さん、▽小柴昌俊さん、▽田中耕一さんが、平成12年から14年にかけて3年連続で受賞して以来、14年ぶり2回目のことです。
自然科学3賞で日本人の単独受賞は29年ぶり
ノーベル賞のうち、「医学・生理学賞」、「物理学賞」、「化学賞」の自然科学系の3つの賞を日本人が単独で受賞するのは、昭和24年に日本人で初めてのノーベル賞となる物理学賞を受賞した湯川秀樹さん、昭和62年に日本人で初めて医学・生理学賞を受賞した利根川進さん以来、大隅さんが3人目で、29年ぶりのことになります
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