三島由紀夫の小説は、
その構成において、必ずといってイイほどネタ本があるという。
それが完全なフィクションであれ、私小説だと本人が言っている作品であれ、
専門家はそれらのネタ本を見つけてしまう、
あるいは三島本人がネタ本はこれだと明言しているという。
★「三島由紀夫の世界」
松村剛著 新潮社 H2.9.10.発行 H2.10.25.三刷
三島由紀夫と深い交流のあった村松剛の著したこの書籍は、
500頁にもわたる批評大作だったので、
少しずつ舐めるようにして読んだ。
ある作品は、ギリシャ神話をネタ本にして構想が練られていた。
ただし、今やギリシャ神話は手垢にまみれてしまっているようで、
たとえば養老孟司は、村上春樹のそうした作品「海辺のカフカ」を読むにつれ、
そんな安易なことではダメじゃないかとエッセーで書いている。
そーは言っても、いまだにギリシャ神話は、
困った時の神頼み的な要素を持っていると思われる。
三島の作品をすべて読み込んでいないオイラにとって、
自決する直前まで書かれていた最後の四部作が、
輪廻転生をテーマにして書かれていたと知って、興味を持った。
村松の抜粋した箇所は、読者に確実に興味を持たせる部分を抜き取っており、
どーしても読みたくなってしまう風。
ギリシャ神話に飽き、三島の眼が日本へ回帰しだした時から、
彼の様子が変貌していく様子が、怖いほどリアルに描かれている。
その内部には、三島に向かって「あなたには自殺するしか道がない」と、
彼のその後を予言するかのような評論家も登場する。
そして驚いたことに、そんな予言をした男は、三島より先に急逝してしまうという不思議。
三島は、決行の日にぴたりと合わせるようにして四部作を投了し、
そして、死地へ赴いたのであった。