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GPIF「大変厳しい環境だ」、株安・円高の荒波
GPIF「大変厳しい環境だ」、株安・円高の荒波-10~12月急回復
世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用成績が、荒れる国内外の株式相場と円相場に振り回されている。
GPIFが1日発表した2015年度第3四半期(10-12月)の運用成績によると、収益率と収益額がともに4四半期ぶりの高水準を記録した。
同一基準でさかのぼれる08年度以降で最悪だった7-9月期から盛り返した。
世界的な株価の持ち直しを背景に、4.7兆円余りの収益額を計上し、そのうちの96%は内外株が占めた。
前身の年金資金運用基金として自主運用を始めた01年度からの累積収益は50.2兆円。
第2次安倍晋三内閣が発足した12年末以降では27.9兆円となっている。資産構成を抜本的に見直した後の直近1年間でも収益増を保っているが、年初来の世界的な株安と円高を受け、今四半期の収益はマイナスに再び陥るとの見方が浮上している。
アムンディ・ジャパンの浜崎優市場経済調査部長は、GPIFの運用成績は1-3月期に「確実にマイナスになる」と指摘。ただ、収益額が中長期的に積み上がっていけば問題はないとみる。
リスク資産を増やせば「市場環境によって収益は上下するが、長期的には国内債だけで運用するより高くなる。安全性を優先すれば、年金積立金を目減りさせかねない厳しい現実もある。
ある程度はリスクを取っていかないと、われわれの年金は出ない」と言う。
GPIFは名目賃金上昇率を1.7ポイント上回る運用利回りを長期的に確保する責務を負う。
賃金が2.8%上がる経済中位ケースの名目期待収益率は国内債2.6%、国内株6%、外債3.7%、外株6.4%。一方、リスク(標準偏差)は、国内債が4.7%、国内株が25.1%、外債が12.6%、外株が27.3%。資産構成全体では12.8%と全額を国内債で運用する場合の3倍近く振れやすい半面、目標達成の可能性は高まる。
こうした検証結果を踏まえた14年10月末の資産構成見直しでは、経済活性化による将来の金利上昇を視野に国内債の目標値を60%から35%に下げた一方、内外株式は12%から25%に、外債は11%から15%へそれぞれ引き上げた。
これまでの国内債偏重の資産構成から、株式と債券を半分ずつにし、国内資産6割・外貨建て資産4割という分散型に変えた。
資産構成の変更は昨年央までに一巡しつつあったが、中国の人民元切り下げをきっかけとした8月以降の世界的な市場の混乱により、国内株と外貨建て資産の評価額が急減。今年は世界経済の減速懸念や原油安を背景に、TOPIXが1日時点で約16%下落。
MSCIコクサイ株価指数は円換算で約10%下げた。円は対ドルで5%上昇している。
GPIFの三石博之審議役は1日の記者会見で、年金積立金は長期的な観点から運用すべきであり、実績は年金財政に必要とされる収益率を上回っていると指摘。
ただ、年初来の運用成績はマイナスに転じていると認めた上で、内外株価が下落するとともに乱高下する「大変厳しい環境だ」と説明。
日本銀行のマイナス金利政策を受けた国内債の利回り低下も逆風になっていると述べた。
一喜一憂は禁物
株価の大幅な下落によるGPIFの評価損は、野党が安倍内閣の経済運営を批判する材料にもなっている。
民主党の山井和則議員は2月に衆院予算委員会で、GPIFの株式投資による損失を「第2の消えた年金だ」と指摘。安倍首相は、12年以降の収益が33兆円のプラスになっていることを例などに挙げ、「短期的なもので一喜一憂してはいけない」と反論した。
ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、GPIFの運用状況が「このまま3月末を迎えると厳しい。
GPIFは損失の責任問題などが取り上げられやすく、参院選で格好の攻撃材料にされてしまうだろう」と言う。
今年度通期の運用成績は、夏の参院選直前に発表されるため、「3月中に株価を引き上げておきたいのではないか」という市場の思惑がETF増額などの追加緩和期待につながり得ると読む。
GPIFの運用資産に年金特別会計が管理する約2.1兆円も含めた積立金全体は昨年末に約141.9兆円。国内債の割合は37.76%と過去最低となった。
国内株の23.35%と外債の13.50%は過去2番目の高さで、外株は22.82%と最高を記録した。
短期資産は2.57%。全体の5%を上限とするインフラ投資やプライベートエクイティ(PE、未公開株)、不動産などオルタナティブ投資は0.04%だった。
ブルームバーグの試算によれば、国内債は約53.6兆円、国内株は約33.1兆円、外債は約19.2兆円、外株は約32.4兆円。仮に積立金全体の規模が変わらなければ、国内債は満期償還分も含め、目標値まで約3.9兆円の削減余地がある。
国内株は値上がり分も込みで約2.3兆円、外債は為替損益も含めて約2.1兆円、外株は約3.1兆円の積み増しが必要だ。
モルガン・スタンレーMUFG証券の株式部門でエグゼクティブ・ディレクターを務める岩尾洋平氏の推計によると、GPIFは昨年10-12月期に国内債を1兆769億円売り越し、国内株を4466億円、外債を4223億円、外株を6917億円買い越した。
国内債はさらに削減も
日本証券業協会の統計によると、公的年金の売買動向を映す信託銀行は1月に利付国債を合計4433億円売り越した。直近1年間で3番目に大きい売越額だ。日本株の買越額は1月に6076億円。
12月は7427億円で、09年3月以来の高水準を記録した9月に次ぐ大きさだ。外債は1月まで7カ月連続で買い越し、合計2兆2828億円と前年同期を3割上回った。外株も同期間に3兆4485億円となり、1年前より12.8%多かった。
BNPパリバ証券の藤木智久チーフ債券ストラテジストは、GPIFの売買は「今のところは基本的にリバランスの範囲内」と分析。
ただ、国債利回りが残存10年までマイナス圏に沈む中で「国内債を少し減らそうという話がどこかの時点で出てくるだろう」と読む。「日銀の巨額買い入れに対し、間接的にせよ、売り向かう主体が足りない面もある。年金勢は国内債を減らす方向に向かっていく」と予想する。
GPIFは昨年10-12月期に財投債を除く国内債で収益を上げた。
日銀による異次元緩和の補完措置を受け金利が低下したことが背景だが、収益額は国内株の約8分の1にとどまった。金融機関が日銀にお金を預ける当座預金の一部は0.1%のマイナス金利が2月16日から適用されている。
長期金利の指標となる新発10年物国債利回りはマイナス0.075%まで下げた。債券利回りがマイナスの相場は、評価益は見込めるが、新規投資には厳しい。
ブルームバーグ抜粋
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