■インバウンド関連は空売りすべきだろうか?
インバウンドのうち特に注目されているのは中国人の爆買い需要である。
長期的に見て、中国人に限らず様々な外国人が日本に来てくれて、来日観光客は2020年まで増え続けていくと思われる。
だがこのところ、中国の上海総合指数を始め、中国市場は日を増して不安定化し、極端なボラティリティーの中で、財産を失う中国人投資家が出てきている。
日本に観光に来て、小売店で爆買いしてくれている彼らの多くは富裕層ではなく大部分は中間層である。
現在中国の中間層の多くが投資に積極的スタンスを取るようになっており、低所得者までも参加するようになっていた。(露天のバナナ売りまでも)
爆買いの原動力は中国株バブルであったのではなかろうか。
そして自己の資産が大きく毀損したときに海外旅行をして、なおかつ爆買いをするマインドが維持できるものだろうか。
おそらく中国人も含め外国人観光客が日本で落としてくれるお金はさしあたってはおそらく減る。
今回は中国人に限って、いくつかの統計データから中国株バブルとインバウンド消費を比較して見てみたいと思う。
■日中の統計データ
・日本政府観光局(JNTO) - 訪日外客数の動向 より 「国籍/月別 訪日外客数(2003年~2015年)」の中国人を抽出。
http://mcaf.ee/794s3(短縮アドレスで↑の伏字アドレスに飛びます。)
・中国結算(CSDC) - 资讯中心 > 市场数据 > 统计月报 より、毎月の「新开股票账户数」(≒口座開設数)および、「新增投资者数(万)」(≒投資家純増数)を抽出。
・上海総合指数(SSEC) 2008/01/31 ~ 2015/06/30 月足チャート(90月) より直近三年間の毎月の終値
そのついでに
・ドン.キホーテHD - 月次売上高速報 より直近三年間の毎月の全店売上高前年同月比
・メモ:本来であれば回転率、為替レート、それに中国人の旅客出国数も加味したいがそこまでやってない。
■分析結果
・口座数 ここ数年スポット的に口座開設数が増加するのはあったが、コンスタントに増加し始めるのは2014年6月~7月ごろから
・インバウンド 日本への中国人入国数が20万を超えるのは2014年7月。(2013年7月にも20万を達成しているが、その後もほとんど減少しないようになる点で2014年7月に注目した。)
・上海総合指数 2014年7月から顕著に上昇を開始。
・ドンキの月次 全店前年同月比売上が110%に近くなるのは2014年3月の消費増税駆け込みを除けば、7月~8月頃から。
と、おおよそ相関性が見られる。
特に短期間での伸びがわかりやすいのが2014年と2015年の4月の比較である。
・2015年4月
中国人来日数405,800
上海指数4,441
口座開設数498
ドンキ前年同月比123.0%
・2014年4月
中国人来日数190,558
上海指数2,026
口座開設数34
ドンキ前年同月比101.8
■過度に期待されているドン・キホーテ
ドンキの株価の上昇は特に中国人をはじめとするインバウンドの爆買いが意識されたものだった。
「訪日外国人売上高比率、2020年に10%へ」というのが長期目標であり、実際すでに外国人売上高比率(特に中国人)との相関性は見えるものの、月次の客単価を極端に押し上げたりはできていない。
中国人観光客の客単価は爆発的に高いと思われるが、ドンキ月次で全体の平均客単価を極端に押し上げたりはしていない。
PBR(実績)4.4倍
PER(予想)37倍
という点からみても、評価がさすがに過大だと思える。
■私見
・インバウンドで上がった銘柄のうち小売は空売りやすい。
・インバウンド関連は多くが買超。
・少なからず機関のレーティングを超えている銘柄がある。
・ただしまもなく発表されるであろう6月の統計はいずれも良い数字が出ると思われる。
・特に現在は韓国のSARSの影響で韓国に行くはずだったツアーが日本に変更になるなど、プラス面もある。
・中国人の来日客は例年は7月~9月が一年で最も多いため今売ることが本当にベストなのかは不安がある。