(略)これまでスキャンダルと切り離せなかった。
彼をいわばスターダムに押し上げた『素粒子』(一九九八年)をめぐっては、
モデルとなったヌーディスト・クラブが刊行差し止め訴訟を起こしたし、
作品自体、囂々たる論争を引き起こした。
ゴンクール賞の候補となりながら受賞を逃した作家が、受賞作をけなすような発言をしたことで
騒動はいっそう広がった。
『プラットフォーム』(二〇〇一年)の刊行直後には、
イスラム教に対する侮蔑的とも取れる表現に対し抗議運動が巻き起こった。
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なんてヤンチャな作家なのだろう。
でもこれって、どこかでみたことのあるような構図ではなかろうか。
日本でも、二匹目のドジョウを狙ったものなのか、似たようなことが起こった。
そうでもしないと、昨今の出版事情では売り上げが出ないので、
きっと出版社が、戦略的にあのような「じゃ、貰っといてやる」発言をさせたと思われる。
それがツボにはまって、なかなか売り上げたのだからオモロイ戦略ではあったけど。
けっして褒められた戦略ではないのだけれど。
オイラもオモロがって買ってしまったのだし、あまり悪口は言えない。
けれど残念なのは、そのときの作品があそこまでグロいものでなかったら、
彼は今、もっと売れてやいまいか?
★「地図と領土」
ミシェル・ウェルベック著 野崎歓訳 筑摩書房 2,700円+税 2013.11.25.初版第一刷
「訳者あとがき」P.396より抜粋
話を前々夜のブログに戻すと、
実名の使い方は、なかなか悩ましい問題だ。
相手も喜んでよかろうと思って作家が書いてみても、
(「素粒子」をまだ読んでいないので推測だけど)
万が一でも読んだ相手が気に入ってくれないと、訴訟になってしまう。
(ホントウは訴訟になった方が、目立ってイイと思ったのかも知れないけど)
なかなかバクチィな話なのであった。