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【書評】『創作の極意と掟』筒井康隆著 

記事によると、作家による小説作法書というと、しばしば「書けない言い訳を書くこと」と並んで、書くことに詰まった大家が手を出す最終手段とされ、実際川端康成などそれすら書けずに伊藤整に代筆させたようなうさんくさい代物とされるのだが、もちろん筒井康隆にその心配は要らない。傘寿を目前にしてなお筆勢衰えず次々と作品を発表し、しかも本書を見れば、まだまだ使い切れていないアイデアが満載だ。ここには筒井の長年にわたる経験を踏まえた重みがあるが、自らの創作体験に終始した単なる芸談ではない。古今東西、ジャンルを超えた筒井の読書に裏づけられた広がりと厚みをも見てとれる。「凄味(すごみ)」「薬物」の章など、作家としての心構えや生き方に対する提言もあれば、「語尾」「省略」などの技術論の章もある。具体的に使えるさまざまなテクニックばかりでなく、それにどれほどの効果があるのか、どうしてそれが重要かという原理的説明も忘れない。「プロの作家になろうとしている人、そしてプロの作家すべて」に向けられているという、その看板に偽りはない。引き合いに出されているさまざまな文学作品が、日本のものに限定されていないのも特徴的だ。今、新しい小説を書こうと思うなら、近現代の日本文学だけでなく、むしろ世界的な広がりの中で文学を捉えなければならない、ということが言外で語られている。とすれば、これは必ずしも書き手に対してばかりでなく、現代の読み手にとっても有用な情報だ。ここには筒井自身の創作の裏側が垣間見られるばかりでなく、今の小説をどう読めばいいのか、という示唆が溢(あふ)れているからだ。頭をひねる難解な現代文学の方法論にはこのような意図・仕掛けがあったのか、と読み手の目から鱗(うろこ)を落とすところもあるだろう。最後は「幸福」というあまり小説作法書らしくはない章でしめくくられるが、小説家の幸福は生みの苦しみと表裏一体だろう。しかし、本書を読むならば、そのうちの幸福の部分だけをかすめとることもできるだろう。読み手にとっても役立つ「極意と掟(おきて)」の書であるとのことです。内容紹介これは作家としての遺言である――。創作歴60年の筒井康隆が満を持して執筆した、『文学部唯野教授』実践篇とも言うべき一冊。作家の書くものに必ず生じる「凄味」とは? 「色気」の漂う作品、人物、文章とは? 作家が恐れてはならない「揺蕩」とは?「小説」という形式の中で、読者の想像力を遥かに超える数々の手法と技術を試してきた筒井康隆だからこそ書ける、21世紀の“文章読本”。豊富な引用を元に、小説の書き方・読み方を直伝する贅沢な指南書です。小説界の巨人・筒井康隆が初めて明かす、目から鱗の全く新しい小説作法!創作の極意と掟posted with amazlet at 14.04.06筒井 康隆 講談社 売り上げランキング: 299Amazon.co.jpで詳細を見る【送料無料】創作の極意と掟 [ 筒井康隆 ]価格:1,404円(税込、送料込)▶ 楽天ブックス 本TOP本、書籍の通販/新刊・予約・ランキング、注目・話題・人気の本▶ 楽天koboイーブックストア新着ピックアップ/新作追加!ebookセレクション!▶ 楽天ブックス DVD・ブルーレイTOP新作予約・人気のタイトルが満載/スペシャルセール開催中! Ads by SCL
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