あおぞら郵船さんのブログ

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「コラム」開発途上国と先進国の医療水準(その1)


世界の医薬品市場は著しくアンバランスな状態になっています。
金額ベースで米国が半分近くを占め、欧州が3割、日本が1割弱。
残った1割強がその他多数の国々、という状態です。
 
・アステラス製薬の記事
http://www.astellas.com/jp/ir/shareholders/env.html

 
・総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/sekai/14.htm

 
国民医療費が高い高いと言われますが、高い医療費は高度な医療技術・福祉サービスの裏返しです。医療費が低いというのはそれだけ供給できる医療技術・医薬品が限られることを意味しています。
極論すれば、最先端の医療技術と高価な医薬品は、米国、欧州、日本など先進国の金持ちにしか恩恵を与えておらず、アフリカを始めとする開発途上国の貧しい人々、つまり、「もっとも医薬品を必要としている人々」には届いていないということでしょう。
製薬会社としては、高価な医薬品を開発して金持ちに売りつけた方が明らかに儲かるのであって、先進国では既に制圧されている感染症の治療薬を安価に開発途上国に提供しても何ら儲けにならないのでしょう。
しかし、アフリカで黄熱病研究に命を捧げた野口英世博士のように、「人類から病気の脅威をなくす」という医療の使命に立ち返れば、先進国で金儲けをするのではなく、真っ先に開発途上国の貧しい人々に医薬品を届けるべきではないでしょうか。
私も弱小個人投資家として製薬会社に投資している以上、業績や利益、つまり金儲けの成果を望んでいる立場ではありますが、もし、製薬会社が利益にならない開発途上国向けの医薬品の供給に乗り出し、「もっとも医薬品を必要としている人々」への支援に充てるとしたら、私も自分の利益は度外視で応援したいと思っています。
 
昨今、医療機関の株式会社化の話が進んでいますが、製薬会社も株式会社である以上、利益を追求し株主に還元するという原則からは逃れられないでしょう。しかし、医療というものは本来、利益追求の外にあるべきものではないのでしょうか。
むろん、このようなことは「稚拙な綺麗事」と一笑に付すことも可能ですが、貧困・病苦は犯罪を生み出します。そして、犯罪はテロリズムを醸成します。そのテロリズムによって、豊かな国もまた巡り巡って損害を被ることになるでしょう。
“情けは人のためならず”という言葉もありますが、開発途上国の貧困と病苦の撲滅は、先進国にとっても必要なことではないのでしょうか。
 
今、メタボリックシンドロームという言葉が流行っていますが、売上世界1位の医薬品・リピトールに代表される高脂血症薬・糖尿病治療薬などは、先進国の生活習慣・飽食による肥満が原因でしょう。
つまり、自らの生活習慣・飽食で招いた病気を大金を出して解決しているという事になる。これほど矛盾した贅沢な話はないでしょう。
そのような贅沢な悩みに、貴重な医療技術を費やすべきではないのではないでしょうか。それこそ、日々生きるか死ぬかの瀬戸際にある人々を救うためにこそ、医薬品は存在するべきだと思います。
最近、アンメットメディカルニーズ(治療満足度の低い領域)という言葉がよく言われますが、開発途上国の悲惨な状況こそが最大のアンメットメディカルニーズではないのでしょうか。その意味では、安価なジェネリック医薬品は、貧しい人々にとっては有用です。
業績を上げるためには、世界市場の半分近くを占める米国と3割を占める欧州で「売れる」新薬を作り続けなければならない。しかし、その先進国での開発競争は貧しい開発途上国には何ら恩恵をもたらさない。
しかし、国連を始めとして、このような矛盾を解決するための活動も存在しているでしょうし、いつか解決される日が来ることを願っています。
 
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