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【書評】『近代以前』江藤淳著
記事によると、あまりの慌ただしさに、ふと、街で立ちどまるときがある。世間の雑踏から離れ、心を整理整頓するために、本屋に入ることがある。でも今は、その本屋さえ「情報」の渦巻く世界になってしまった。静まるどころか、さらに新しい情報を手に入れなければという焦りが私たちを捉える。大きく深呼吸をして憩える場所はあるのか? 混迷する社会を読み解くための宿り木はどこにあるのだろうか。
小さな宿り木が、ようやく植えられ始めた。文芸春秋90周年記念として始まった「文春学藝ライブラリー」がそれだ。10月から隔月刊で数点の名著を復刻、刊行し「古典」の世界があることを教える。一冊の書物を前におき、ひもとき、そして誰にも邪魔されずに言葉と格闘する時間へと、私たちは誘われる。そこから見える風景に、久しぶりに私たちは、安堵(あんど)を覚えることだろう。
刊行記念巻頭を飾ったのは、往年の評論家・江藤淳の『近代以前』だ。1960年代に書き始められた「いぶし銀」の江戸時代論が、ようやく文庫として読めるようになったのだ。常に「外圧」によって時代の転換を余儀なくされたわが国、「自然な呼吸を乱され」つづけてきたこの国はどこに行こうとしているのか-2013年、今、まさに問われるべき問いと江藤淳は格闘している。政治・経済の話でもちきりのこの時代に、あえて「文学」から時代を考えてみないか、こう江藤淳は問いかけてくるのだ。そこには時代を読むためのヒントがちりばめられていて、まさしく「古典」と呼ばれるにふさわしい。
他にも浜崎洋介編・福田恆存(つねあり)『保守とは何か』、内藤湖南『支那論』、『天才・菊池寛』、ケインズ論集など、手に取りたい「古典」がめじろ押しだ。
書物を深く「味わう」という、ほとんど死語と化した世界に、身を浸そうではないか。2カ月に1度、これと思った作品を1冊手に取り、格闘してみないか。そこには「情報」とは全く違った心のざわめきが、待っていることだろうとのことです。
内容紹介
文藝評論家の江藤淳氏は1964年、米国のプリンストン大学への留学から帰国し、翌年に本書の元となった連載「文学史に関するノート」を「文學界」で始めた。連載で探求されたのは「日本文学の特性とは何か」という問いであり、探求の対象とされたのは、「近代以前」の江戸文藝であった。
日本にいるとき、「日本文学」の存在は自明であるが、ひとたび日本を離れれば、それは中国文化圏の周縁で育まれた亜種として捉えられる。亜種以上の特性を持っているとするならば、それは何か。本書を貫くのは、そのような切実な問いかけである。
具体的には、幕藩体制を支えることとなった朱子学的秩序を創始した藤原惺窩、その弟子・林羅山の足跡が丹念に追われ、人形浄瑠璃の世界を確立した近松門左衛門、井原西鶴、上田秋成らの作品が精緻に読み解かれていく。 江藤氏は、中国大陸からの圧倒的な外圧や影響が強く意識され、それによって乱された日本語の「自然な呼吸」を取り戻そうとするときに、日本人が古典として持つに足る「日本文学」が生み出されてきたことを繰り返し書く。
「日本文学の特性とは何か」を探求しながら、日本人や日本語にとって、「文学」とはどのような営為であったのかを深く考えさせる刺激に満ちた文藝批評である。 2013年10月創刊の文春学藝ライブラリーの第一弾。解説=内田樹。
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