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【書評】『文士の友情 吉行淳之介の事など』安岡章太郎著 



記事によると、本年1月、92歳で亡くなった安岡章太郎の晩年の文章を一冊にまとめている。

 周知のように安岡は、「第三の新人」と文学史で呼ばれる世代の代表的作家であるが、本書は吉行淳之介、遠藤周作、庄野潤三、島尾敏雄ら同時代作家との交友を綴(つづ)ったエッセーが中心となっている。

 海軍軍人として直接に戦争体験のある島尾は、「私たちのグループの隠れた頭領」であったが、戦場に行くことがなかった安岡らにも、戦争は人生の出発点として、大きな影響を与えたことがその文章から改めて伝わってくる。敗戦後の混乱の時代に作家をめざし、昭和30年代の高度成長期に彼らは、明治以降の日本文学史のなかでも最も文学が読まれ輝いた時代の旗手となった。

 時代の変化と断層を、これほど激しく体験した文士たちは他にないだろう。だからこそそれぞれの作風もテーマも資質も相異なりながら、彼らはある不思議な友情の絆によって結ばれていた。半世紀に及ぶ各々(おのおの)の文学的営為を支えたもの、それは互いの個性を尊重し信頼すること、つまり、その文体への信頼であった。

本書の巻頭に置かれた吉行全集の月報に連載された一連のエッセーは、その人となりの思い出話でありながら、根本には吉行淳之介という作家の希有(けう)な文体論になっている。それは小林秀雄との名対談「人間と文学」のテーマに重なる。

 もうひとつ本書は、70代を目前にしてカトリックの洗礼を受けた安岡の信仰へ至る道を断片的ではあるが示す、貴重な文章が収録されている。安岡とその家族の洗礼には、友人の遠藤周作の存在を欠くことはできないが、50代の代表作『流離譚』や、さらに出世作『海辺の光景』にその淵源(えんげん)をさかのぼることができる。

 その意味で正宗白鳥についての講演が収められていることは大切である。「朽ち惜しさということ」と題されたこの一文からは、安岡文学の原風景が浮かびあがってくるからだとのことです。



内容紹介

かつて、〈文士〉と呼ばれた男達がいた。彼らは切磋し、共に笑い、人生を生き切った――今年一月に逝去した文豪が晩年に振り返った、類稀な友人たちとの人生の時間。吉行淳之介の恋愛中の態度に驚き、遠藤周作にキリスト教受洗の代父を頼み、島尾敏雄の戦後の苦闘に思いを馳せ、小林秀雄に文士の心得を訊く。かくも豊かな友情がありえた時代の香りと響きを伝える名品集。「悪い仲間」で出発した安岡文学の芳醇なる帰着。






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