(略)では多くのミステリ作家は、どうやって作品を生み出しているのか。
一言でいえば、苦労して、です。
悩みに悩んで小説のテーマを見つけます。
あるいは、考えに考えてアイデアを捻り出します。
もちろんそれだけでは終わりません。
どう書けば面白くなるか、自分のイメージ通りの小説に仕上げられるかを考え、
プロットを立て、キャラクターを作り、文体を選びます。
必要な場合には資料を揃えたり、取材に出かけたりもします。
決して楽な作業ではありません。
ほかに特技があれば別の職業を選んだのに、と思うことも多々あります。
しかもここまでで、ようやく執筆の準備が整った段階です。
あとは書くだけ、というわけですが、ここからが辛いのです。
(略)
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★「ミステリーの書き方」
日本推理作家協会編著 幻冬舎 1,800円+税 2012.10.25.第7刷
P.2 東野圭吾氏によるまえがきより抜粋
他の書籍で読んだのだが、
たとえば何かの新人賞に選ばれたとしても、
今している仕事を決して辞めないようにと編集者は力説するのだという。
新人賞をとれても、それはスタート段階にしかすぎず、
その後も続けてイイ作品を書けるのか、誰にもわからないからだという。
また高橋源一郎氏は、
現代においては、絶対的なテーマというものが不在となっており、
戦後のような作品を生み出すことが難しくなっていると他書でいう。
翻訳の世界も門戸は狭くないのだが、
仕事がいつ来るのかわからず、また来たとしても納期を守りつつ結果を出すしかないので、
遊んでいる暇もないのだという。
清水良典氏によれば、
それまでに出ている作品に疎いまま新人賞にとおった作家で、
知らずに書いたとはいえ後に盗作まがいの評価を受け、
消え去った人がいるという。
ミステリーほど書くのが難しい小説も、ないのではないか?
マジシャンの新ネタを生み出す専門家と同様、
相当な研究力がないと成立しない仕事なようだ。
或いは清水氏の言うとおり、
どこまでならセーフなのかパクリ方のコツを覚えるしかないw
それでも小説を読むのは、さして大変なことではないし、
オモロイことなのは確かだ。
先に挙げた「ミステリーの書き方」には、
協会に所属している作家たちが、それぞれに小説作法を述べている。
北方謙三氏は「文体について」、
宮部みゆき氏は「プロットの作り方」、
石田衣良氏は「会話に大切なこと」などなど、
興味深い話が満載になっていて、ホントにオモロイ。
この書籍が出来上がった段階で、
そのあまりのオモロさに、参加したプロ自身もオモロがったという出来栄えになっている。
これから電子書籍の時代になっていくと、
無料で公開されてくる素人の小説とも闘わなくてはならないと、
実はプロの方が恐れているのだという説もある。
新人賞には漏れても、やけくそになれば無料公開でもして
酒の魚にでもすればイイ。
PS:因みにどのジャンルでも、一次選考で落ちるということは、
その小説に何か致命的な欠陥があるとイコールなのだという。
一次で100エントリがあったら、実に80は即終了なのだと(怖)