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借り物
米国の低成長経済は長期化も、けん引役不在
- 世界最大の経済国が、成長障害に直面しているかもしれない。
米連邦準備理事会(FRB)本部
第1四半期が期待はずれのうちに終了したあと、エコノミストらは概して、ガソリン価格の上昇、悪天候、日本の供給問題といった短期的な障害が払拭されれば、米国経済は拡大を再開すると予想した。
ところが、それが実現している兆しはほとんどない。製造業は冷え込み、住宅市場は悪戦苦闘中で、消費者は倹約を続けている。米国経済が完全回復するには、予想以上に時間がかかる可能性があるということだ。
IHSグローバル・インサイトのエコノミスト、ナイジェル・ゴー氏は、「歴史的に見ると、景気の急回復は住宅部門と消費者がけん引している。今回は、急回復させることが非常に困難だ」と指摘。第2四半期以降の国内総生産(GDP)成長率は、年率3%未満(インフレ調整済み)となり、第1四半期の1.8%は上回るが、失業率を大幅に低下させるには緩やかすぎる、との見通しを明らかにした。
第2四半期のGDP成長率予想を下方修正する専門家が増えている。JPモルガン・チェースのエコノミストは、同予想を当初の3%から2.5%に下方修正した。バンクオブアメリカ・メリルリンチのエコノミストは2.8%から2%へ、ドイツ銀行は3.7%から3.2%へ、それぞれの予想を下方修正した。
企業も同様に慎重だ。コンピューター・チップ製造装置メーカーの最大手、アプライド・マテリアルズは最近の決算が良好であったが、半導体市場と太陽電池市場の成長が鈍化すると予想している。コンピューター大手、ヒューレット・パッカードは、コンピューターの販売不振と、日本の災害の悪影響を受けて、現会計年度の見通しを下方修正した。家庭用洗剤メーカー、クロロックスの幹部は、物価の上昇で日用品の販売が落ち込む可能性があると指摘し、日用品ビジネスについては一段と慎重な見方を示した。
先行きの見通しが暗いため、景気についても、さらに深い疑問が生まれる。米国経済は、慢性的な成長問題を抱えつつ、2008-09年の金融危機を切り抜けたのだろうか。
すでに切り抜けたと考えるエコノミストもいる。ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のエコノミスト、カルメン・ラインハルト氏は、「われわれは、経済が標準的なパフォーマンスを示す、との見方を変えていないが、官民ともにこれほど多額の負債を抱えている時には、実現が非常に困難だ」と述べた。同氏は、米連邦準備理事会(FRB)の見通しを楽観的すぎると考えており、米国では、標準以下の経済成長と高失業率の期間が長引く可能性があると語った。
FRB当局筋は4月、米経済成長率が2011年は3.1-3.3%、2012年は3.5-4.2%になるとの予測を発表した。これは民間の予測よりも楽観的なもので、月間ベースで専門家を対象に調査を行なうブルー・チップ・エコノミクスによると、民間の専門家の予想平均は、2011年が2.9%、2012年が3.1%となっている。
一時的な逆風が収まってもなお、経済は困難に直面する可能性がある。FRBは景気刺激策の規模を縮小し、州・地方政府は予算均衡化のため支出を削減し、議会は2012年の連邦支出削減を目指している。
確かに、米国経済は部分的には強さを見せ始めている。ここ数カ月間の雇用拡大ペースは相対的に力強く、新興国市場の拡大が輸出需要を押し上げる要素となっている。しかし、エコノミストらによると、一般家庭が倹約せずにお金を使うようになるには、力強く、持続的な雇用増加が必要だ。
サウスカロライナ州エーケンのジュディー・シェパーズ氏(70)は、経済回復を確信している。同氏は、2008年に解雇されたが、最近になって不動産会社に就職。現在は昼も夜も外食するという贅沢ができるようになった。しかし、さらに多額の出費は控えているという。同氏は「旅行が大好きだ」と話すが、予算が厳しいため、友人と近場のビーチへのドライブを計画している。「私が運転し、友人がガソリン代を負担する」と語った。
一方、住宅価格が下落し、販売が落ち込む中、建設業者と購入者の双方が苛立っている。
ペンシルベニア州ムージックのモジュール式住宅製造会社、シグニチャー・ビルディング・システムズの最高経営責任者(CEO)、ビクター・デフィリップス氏によると、今年は好調なスタートを切ったが、楽観的な見方が弱まりつつある。同氏は、過去1カ月間ほどの受注の不振を明らかにした。
景気低迷のどん底の時期ほどには、物事は殺伐とはしてはいないが、住宅購入者は、おそらくは価格の一段の値下がりを予想して、購入を控えているようだ。デフィリップ氏は、「少しゾッとするような感じだ。その原因が何かが分からない」と述べた。
景気後退(リセッション)が公式に終焉した2009年半ば以降の米GDP成長率は、年率で平均2.8%だ。これは、かなり穏やかだった2001年のリセッション後の成長と変わらず、同じように深刻だった1982年のリセッション後の成長率7.1%を大幅に下回っている。
JPモルガン・チェースのエコノミスト、ジョセフ・ラプトン氏は、「大々的な景気回復を実現できないことへの代償は非常に大きい」とコメントした。特に顕著なのは、失業率の高さだ。580万人もの人が半年以上も失業状態にあり、低成長経済が長引けば、彼らが再就職する可能性は低くなる。
低成長率は、数週間後に市場の関心の的となる可能性がある。FRB当局者は4月、2011年の経済成長見通しを下方修正したが、6月22日発表の新たな予測で、再度の下方修正を余儀なくされる恐れがある。経済成長が期待はずれだった場合、それはインフレ圧力が弱いことを意味し、FRBが早期に利上げを実施する可能性も薄れる。
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