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日銀総裁:国債引き受けなら通貨の信認毀損-金融市場不安定化も(2)






  5月28日(ブルームバーグ):日本銀行の白川方明総裁は28日午後、都内で開かれた日本金融学会2011年度春季大会で講演し、日本銀行の国債引き受けについて、「日本銀行による国債引き受けが行われると、通貨への信認自体を毀損(きそん)することになる。こうした通貨への信認の毀損は、長期金利の上昇や金融市場の不安定化を招き、現在は円滑に行われている国債発行が困難になる恐れもある」と述べた。

  このため今後の国債発行に関して、「今回の東日本大震災の後も国債の入札発行は順調に行われているが、わが国の財政状況は厳しいだけに、現在の安定的な国債発行環境を維持していくことが大事だ」と語った。

  白川総裁は、「欧米や新興国を含め世界の多くの国で、中央銀行による国債引き受けは認められていない。わが国でも財政法5条が本則で日本銀行による国債引き受けを禁じている」と言及。「いったん中央銀行による国債引き受けを始めると、やがて通貨の増発に歯止めがきかなくなり、激しいインフレを招き、国民生活や経済活動に大きな打撃を与えたという歴史の教訓を踏まえたものだ」と説明した。

  格付け会社フィッチ・レーティングスは27日、日本のソブリン債格付け見通しについて、「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ(弱含み)」への引き下げを発表している。

       財政赤字「無限に継続できない」

  白川総裁は、日本の財政状況について、「財政バランスの悪化は非常に深刻だ」と言明。日本では「長期国債の金利も低位で安定的に推移しているため、財政悪化に伴う危険に警鐘を鳴らす議論は時として『おおかみ少年』のような扱いを受けることもあるが、どの国も無限に財政赤字を続けることはできるわけではない」と語り、財政再建の重要性を強調。同時に「財政バランスの改善には歳出、歳入の見直し自体が必要だ。それと並んで実質成長率の引き上げが重要だ」とも力説した。

  さらに「単に物価が上昇するだけでは財政バランスは改善しない」と指摘。「何よりも必要なことは、実質成長率の引き上げに向けた地道な努力だ。景気が良くなり、実質成長率が上昇するときにはその結果として物価も上昇する」と語った。

  白川総裁は、「政府の信認が低下すると、当然、保有国債の価値の下落、担保価値の下落に伴う資金調達能力の低下をはじめ、さまざまなルートを通じて、民間金融機関の信認にも影響する」と言及。「その結果、調達金利が上昇したり、流動性調達が困難化することによって、実体経済に悪影響が及ぶ」と語った。

  併せて、「そうなると税収が落ち込み、政府の支払い能力に対する信認が低下する。言い換えると、ソブリン・リスク、金融システム、実体経済の間に負の相乗メカニズムが作用することになる」と述べた。

  フィッチのアジア太平洋地域ソブリンチーム責任者、アンドリュー・カフーン氏は発表文で、「人口高齢化という構造的な悪化基調に対して公共財政の維持可能性を守るためには、より強力は財政健全化戦略が必要だ」と論じた。フィッチは日本の自国通貨建て長期格付けを「AA-(ダブルAマイナス)」、外貨建て長期格付けを「AA」としている。

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