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つながることが目的か?目的があってつながるのか?~ソーシャルグラフへの2つの視点

2010/08/18 22:24    by  Ikuo Ogawa 28
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 日本の SNS の代名詞だったミクシィが劣勢に立っている。グリーやモバゲータウンを展開する DeNA と比べると、会員数こそ同規模だが、売上高や時価総額で大きく差がついている。SNS というサービス形態やオープン化を指向しているということを考えると同じように見えるが、そこにはソーシャルグラフに対するスタンスの大きな違いが現れてきている。それを、ユーザが SNS に求める目的という観点から見たうえで、ソーシャルグラフを使う上での考え方を抽出してみよう。


つながることを目的にしたいミクシィ

 ネット上の関係に限らず、人が誰かとコミュニケーションを取ろうとする場合、大きく2つに大別できる。

(1)コミュニケーションをとるということ自体が目的
(2)何らかの目的が先にあってその目的のためにコミュニケーションをとる

もちろん、現実にはこの2つのタイプは複雑に混じり合っていて、きれいに分けることは難しい。それでも、いわゆる友人関係にある場合は、例えば、おしゃべりをすることの目的を意識することは少ないだろうし、仕事などの明確な目的があって会議などを行う場合はコミュニケーションの目的を明確に意識している場合が多い。

ミクシィの笠原社長の「われわれの定義する SNS は、友人、知人とつながりを提供するサービスのこと。この定義だと日本では SNS はうちだけ、というのがわれわれの主張」という場合、念頭においているのは、(1)の場合だと考えられる。だからこそ、リアルな人のつながりを反映したソーシャルグラフを構築することにこだわるわけだし、それを「良好」なソーシャルグラフと、ある種の価値判断を示した用語で呼ぶわけである。

※出典:
「われわれの定義では日本で SNSはうちだけ」=ミクシィ笠原氏<TechWave.jp>
mixiが目指す「SEOから“SGO”へ」 「いいソーシャルグラフを作る」と笠原社長<ITmedia>

つながること自体を目的にしたサービスとしては、twitter がある。twitter 自体は必ずしもリアルな人のつながりを反映しているわけでもないので、笠原社長の言うところの「良好」なソーシャルグラフとは呼べないだろう。しかし、twitter 単体で考えた場合には、twitter でフォローし合い、つぶやくこと自体に何らかの目的があるわけではない。ただ、つながるためにつぶやく。もちろん、マーケティング目的などのビジネス的な目的があってつぶやく人もいるだろう。しかし、その目的はサービス提供者としての twitter が提示しているものではない。twitter としては、つぶやくということでつながる場を提供しているだけだ。

共通しているのは、いずれも広告モデルでしか収益をあげる術が見当たっていないこと。しかし、つながることを目的としている以上、つながるという目的から逸れざるをえない広告の CTR はそれほど見込めないようにも思える。


目的があってつながるグリー/モバゲータウン

 グリーおよび DeNA のソーシャルメディア事業での収益を見ると、広告収益の割合がかなり少なくなっている。周知の通り、オンラインゲーム(およびモバゲーではアバター)での課金収入が収益の柱だ。テレビ CM 等のプロモーションもオンラインゲームを訴求する内容になっている。つまり、ゲームをするという目的を持ったユーザを引きつけようとしている。もちろん、いずれもソーシャルグラフを提供する機能がベースにあるので、ゲームを目的としたといっても、自ずとゲームを通して他のユーザとつながるような仕組みを提供している。

他のユーザとつながるということだけみればミクシィや twitter と同じだが、モバゲータウンは、その名の通り、他のユーザとゲームを中心としたコンテンツを一緒に楽しむという形で他の人でつながるということを指向していたし、グリーはもともとミクシィと同じ方向性だったものを KDDI との提携を機に(ケータイにシフトするとともに)モバゲータウンと同様な方向に転換したことで業績を大幅に伸ばした。いずれも、そのサービスにくるユーザに対して、あらかじめ目的を提示したうえで、その目的を前提として他のユーザとつながるというサービスを提供しているのである。つまり、上記の(2)にあたる。
収益性を考えた場合、(2)の方が有利だ。見込みが立てやすいし、端から見ても分かりやすい。ゲームの本数やその利用ユーザ数、それらのユーザがゲームで使う金額などを積み上げて行けば収益の高さが理解できる。その分かりやすさが時価総額、つまり株価の高さにも現れていると考えることができる。


つながること自体を目的にすることが持つポテンシャル

 では、無条件で(2)に軍配があがるのかというと、必ずしもそうとは言い切れない。つながること自体を目的として集まったユーザは、ただつながり続けるだけでなく、自ずと集まったユーザがやりとりすることを通じて何らかの目的が発生してくることがあるからだ。実際、ミクシィのコミュニティなどで、そこでユーザ主導で目的が設定され、活動しているものも散見される。この場合の目的が、必ずしもサービスの提供者が設定したものではなく、ユーザ主導で設定されてくるというところがポイントである。

twitter の方が分かりやすいだろう。twitter は、主に他のユーザをフォローしてつぶやくという機能を提供しているだけだが、そのユーザの中には、そのプラットフォームを用いて、様々なサービスを提供しようとする人たちが多数存在している。例えば、小説を書いてみようとしたり、Ustream などと連携してより密度の高い情報交換を指向したりする人たちだ。あるいは、ビジネス目的の人たちもいる。これらは、つながること自体を目的として集まったユーザが、あるいは、言い換えると、特に目的設定のなされていない場を利用しているユーザが、サービス提供者の意図とは違ったところで、自ら目的を設定して楽しんでいく例といえるだろう。

それに対して、(2)の形では、ユーザの期待値として、サービス提供者側がなんらかの目的を設定することが含まれてしまう。具体的に言えば、魅力的なゲームが提供されなくなれば、そのサービスを利用する目的が失われてしまうリスクがあるということである。サービス提供者は、ユーザを飽きさせないため、次々と魅力的な目的を設定し続ける必要が出てくる。

まとめると、(1)はそのサービスを利用するユーザが自ら目的を設定する自由度が高いのに対し、(2)はサービス提供者が目的を提示するためユーザは比較的受け身になりがちになるという違いがあるわけである。


ソーシャルグラフを育てていくあるいは使っていくための視点

 ミクシィは(1)で、グリー/モバゲーは(2)であると書いた。とはいえ、注意していただきたいのは、あくまで理念的な区別でしかないということだ。あくまで、ミクシィが(1)でグリー/モバゲーは(2)というのは、見えやすい力点の違いを解釈した結果に過ぎない。繰り返しになるが、(1)と(2)は現実的には複雑に交錯する。例えば、ゲームを目的に集まったユーザによってできたつながりであっても、ゲームを終えた後やその過程で、そのつながりを維持することが目的になるコミュニケーションが発生したり、その延長線上で、ユーザ主導の新たな目的が作られることは十分考えられる。そういう意味では、いずれかに分類したからといって、分類されなかった方で得られる可能性が排除されるわけではない。いわば、程度問題でしかないともいえる。

しかし、そうだとしても、ソーシャルグラフに関わるようなサービスを検討する場合に、(1)と(2)を区別してみることは意味がある。なぜなら、それによって、ユーザに伝えるメッセージが変わってくるからである。何を期待してこのサービスを使ってほしいのか。そのサービスは、自分たちのネットワークでつながることを楽しむ場であり、あわよくば、そのネットワークを活かしてそこでいろいろな発想を試せるような自由度のある場なのか。あるいは、あらかじめ提供されているサービスを通じていろいろな人との出会いを楽しんでほしいのか。これによってユーザの期待値が変わる。

また、検討しているサービスのステージによっても違うと考えることもできる。最初は明確な目的を提示してユーザが集まってもらう(2)が、集まってからはコミュニケーションすることを楽しむ場(1)に徐々に移行できる余地を作っていくといったような展開である。

もちろん、仔細に見て行けば、(1)と(2)というざっくりした分類だけでは捉えられないところもあるだろう。ここでは触れなかった facebook と twitter のソーシャルグラフの育て方の違いも違う軸で捉えられそうだ。いずれにしろ、一口にソーシャルグラフといっても、その育て方あるいは育ち方は一様ではない。今回提示した(1)と(2)のような区別をもとに、ソーシャルといわれるサービスを見てみると、また違った発想が生まれてくる可能性があるのではないだろうか。

http://www.venturenow.jp/column/ogawa/20100818008654.html
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