[東京 16日 ロイター] 東京株式市場で日経平均は5日続伸。欧米株高を受けて、5月20日以来となる1万円を回復して寄り付いた。午後は先物で海外投資家とみられる大口の買いが観測されたことなどから、前営業日比で200円を超す上昇幅となった。
国内年金の買いも観測されたという。一部の値がさ株の上昇が指数をけん引した部分も大きいとみられており、市場では「1万円を回復しても個人投資家の動きは鈍く、売買代金が膨らまない」(国内証券)と慎重な声も出ている。
東証1部騰落数は値上がり1345銘柄に対して値下がり209銘柄、変わらずが116銘柄。東証1部の売買代金は1兆2482億円だった。
市場関係者の間では、5月20日に1万円を割れて以降にできた「W型」のチャートでダブルボトムを形成し、株価底入れサインが出たとの見方が少なくない。15日には、31営業日ぶりに25日移動平均線をクリアしており、市場では5日線と25日線のゴールデンクロスが視野に入り、買いのサインが出たとみる短期筋の買い戻しが加速しやすい局面とみられている。一方、「4月以降に先物を大量に売っていた海外勢が本格的な買いに転じるかどうかはもう少し見極めが必要」(準大手証券)との声もきかれた。
大和証券キャピタル・マーケッツ金融証券研究所投資戦略部・部長の高橋和宏氏は、日経平均が1万円の大台に乗せ、方向感が変わるとの意識が市場で強まってきたと述べる一方、「けん引役の米株は依然、半値戻しのボックス圏での動きとなっている。まず米株がこのレンジを上抜けるかがカギとなるが、それには経済指標など定量的な材料が必要ではないか」という。高橋氏は「きょうの日経平均はマドを開けて上昇した。1万円から先の上値を試して株価が伸び切れなかった場合、アイランド・リバーサル出現となり、再びマドを開けて調整入りすることになるのか見極めたい」としている。
日銀は16日の午後、6月の金融経済月報を公表し、先行きの生産について増加ペースが次第に緩やかになるが増加基調を続けると予想した。一方、トリプルB格の社債の利回りが上昇していることなどから、CP・社債市場について「低格付け社債の発行環境にも改善の動きがみられている」との文言を削除した。月報を受けての株式市場の反応は限定的だった。市場では「景気回復はすでに織り込まれており、足元での材料にはならない」(明和証券シニア・マーケットアナリストの矢野正義氏)との声があがった。
業種別ではほぼ全面高のなか、鉄鋼やその他金融、精密機器の上昇が目立った。石油・石炭はさえない。
個別銘柄ではJFEホールディングス<5411.T>が堅調。傘下のJFEスチールが16日、休止中の西日本製鉄所(福山地区)第3高炉について、2011年1月から改修工事に入ると発表し、材料視された。プロミス<8574.T>が上げ幅を拡大した。同社の久保健社長が16日、ロイターとのインタビューで、今期に返済予定の借入金4600億円は十分に手当てできていると述べたことなどが材料となった。
コーセル<6905.T>が後場一段高。16日前引け後に発表した2011年5月期の連結業績見通しで、売上高が前期比42.8%増の239億6000万円、連結営業利益が同98.1%増の59億8000万円と大幅増収増益を予想していることが好感された。
ファーストリテイリング<9983.T>などの値がさ株の上昇が目立った。
(ロイター日本語ニュース 石渡 亜紀子記者)