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ドイツでの多発性硬化症とED
ドイツでの多発性硬化症とED
2012年3月のドイツのニュースですが、少し紹介したいと思います。
ドイツの連邦裁判所は6日、バイアグラに代表される性機能不全(ED)治療薬の費用について、惚れ 香水医療保険で支払う義務はないとの判決を下したようです。
多発性硬化症の男性は多発性硬化症の症状とみられる勃起不全の治療を受けており、その薬の費用を負担するよう保険会社に求めていたとのことです。
しかし、裁判所はいわゆる生活改善薬については保険会社に支払い義務はないと判断し、保険会社が難病患者である男性からの要求を拒んだことについても、差別的な要素はないとしたようです。
日本では全症例がED治療薬に関しては保険適応外なので、結果自体にはさして驚きはないのですが、難病の方で若年者の患者さんには、保険が使えたらいいかもと思うときがあります。ただし、そうすると器質性と心因性の境界があいまいなケースだと診断に悩むケースもでてくるかもしれません…。
ちなみに多発性硬化症という病気をご存知でしょうか?
多発性硬化症は中枢神経系の脱髄疾患の一つです。もう少し簡単に言いますと、神経活動は電気活動であり、家庭の電線がショートしないようにビニールのカバーからなる絶縁体によって被われているように、神経の線も髄鞘というもので被われています。この髄鞘が壊れて中の電線がむき出しになる病気が脱髄疾患です。この脱髄が斑状にあちこちにでき(これを脱髄斑といいます)、病気が再発を繰り返すのが多発性硬化症です。
多発性硬化症にはEDを合併することがよく知られており、今回のドイツの患者さんもそうであったと推測されます。
ちなみに多発性硬化症にED治療薬は効くのか?という疑問がある方もおられるでしょうから文献も合わせて紹介いたします。
「Sildenafil citrate for erectile dysfunction in patients with multiple sclerosis.」という論文で、バイアグラが多発性硬化症患者さんのEDに効くかどうかを調べています。
研究デザインが優れたものではないのですが、参考にはなると思います。
この論文の中で、420人の多発性硬化症患者さんにバイアグラを使用しました。結果ですがバイアグラは多発性硬化症患者さんのIIEFスコア(国際勃起機能スコア)を改善しており、有効性が報告されております。
ただし、調査中に2件の深刻な有害事象も報告されています。バイアグラとの因果関係は不明ですが、多発性硬化症患者さんにおけるED治療薬使用への研究は、その安全性への評価も含めて、今後も続けていく必要があるのではないでしょうか。