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アイエスビー Research Memo(6):「中期経営計画2020」の最終年度の営業利益目標は1年前倒しで達成(1)

配信元:フィスコ
投稿:2020/04/09 15:56
アイ・エス・ビー<9702>の今後の見通し

1. 「中期経営計画2020」の方針と数値目標
2018年12月期からスタートした3ヶ年の中期経営計画では、2020年の創立50周年を節目の年とし、次の50年に向けての橋渡しの期間と位置付け、「次世代」の創生を意識した経営に取り組んでいくことを基本方針とした。最終年度となる2020年12月期の当初の業績数値目標は、売上高200億円、営業利益10億円としていたが、新規連結2社が加わったことを加味して、売上高240億円、営業利益11億円に修正した。営業利益については前述のとおり1年前倒しで達成したため、今回12.5億円に上方修正している。3期前と比較すると売上高で1.44倍、営業利益で2.09倍に拡大することになる。

2. 重点戦略
中期経営計画の中で重点施策として掲げていたのが、1)プロダクト事業の展開と拡大、2)高付加価値業務へのシフト、3)コスト競争力強化、4)グループ経営戦略強化、の4点であり、進捗状況は以下のとおりとなっている。

(1) プロダクト事業の展開と拡大
同社がプロダクト事業の展開に注力する目的は、現在の中核であるソフトウェアの受託開発型事業とは顧客層や需要構造、収益モデルが異なる事業を育成して収益構造の複層化を図り、収益基盤を強化すると同時に成長力を高めることにある。このため、同社は売上高の1%を研究開発費としてプロダクト事業推進のための投資に充当しており、プロダクト事業を受託開発型事業と並ぶ収益柱に育成していく方針となっている。

2019年12月期の売上高は3,859百万円と当初計画達成率で100.6%となり、2020年12月期は4,200百万円と8.8%増を見込んでいる。その中心となるのはアートが展開するセキュリティシステム事業で、同11.0%増の4,000百万円を計画している。アートは入退室管理システムの業界パイオニアとして知られており、市場シェアで約26%とトップクラス。2017年に子会社化して以降、安定した収益を稼ぎ出し連結業績に貢献している。現在注力しているのはクラウド型のアクセスコントロールプラットフォーム「ALLIGATE」で、IDカードだけでなくスマートフォンを使って部屋の入退室や駐車場のゲート入退場、コインロッカーの鍵の解・施錠が行えるサービスとなる。2017年11月より提供を開始しており、2018年11月に(株)チームスピリットが提供する働き方改革プラットフォーム「TeamSpirit」とAPI連携を開始したほか、2019年11月に(株)SmartHRが運営するクラウド人事労務ソフト「SmartHR」、同年12月に(株)Donutsが提供するクラウド勤怠管理システム「ジョブカン勤怠管理」とそれぞれAPI連携するなど、他社との連携を進めながら顧客開拓を進めている。

また、2018年5月には駐車場予約アプリ「akippa」を運営するakippa(株)と共同で、「ALLIGATE」をベースとしたゲート式駐車場管理システム「シェアゲート」を開発し、貸駐車場事業者へのサービス提供も開始している。「シェアゲート」は契約件数で100件を超えたが、見込み顧客から月額固定料金プランだけでなく、従量課金プランなども導入して欲しいとの声があり、現在、料金プランの見直しを検討している段階にある。月額固定料金プランだと稼働率の低い、あるいは季節によって稼働率の変動が大きい事業者にとって負担が重くなるが、固定負担部分を軽くし、従量課金制を導入すれば、こうした事業者からの契約も増加していくものと期待される。

建物の入退室管理システム市場は競争も激しく、ここ数年は市場も伸び悩んでいたが、「ALLIGATE」の展開によって駐車場やコインロッカーなど様々な利用シーンにシステムの導入を拡げていくことが可能となり、セキュリティシステム事業の成長が期待できる状況となってきている。「ALLIGATE」はリカーリングモデルであり、月々安定した収入を獲得できることから収益の安定化と利益率の向上も見込めることになる。現在の売上規模は数百万円/月の規模でまだ小さいものの、今後も他社との連携を進めながら顧客を開拓し、成長を目指していく方針となっている。なお、「ALLIGATE」は2019年11月に開催された「第13回ASPIC IoT・AI・クラウドアワード2019」のIoT部門で準グランプリを受賞するなど、業界内での認知度も高まってきている。

そのほかのプロダクトでは、モバイルデバイスの管理ツールとなる「VECTANT SDM」の利用ID数が12万件を超え、収益増に貢献している。企業におけるスマートフォンやタブレット端末の導入が進むなか、それらを安全に管理するツールが求められており、今後も着実な成長が見込まれる。また、医用画像関連システムの「L-Share」については営業戦略を直販から代理店販売に切り替え、売上拡大を目指している。また、「Wi-SUN」※1については同社の提供した通信プロトコルスタックを用いて、ローム<6963>が「Wi-SUN Enhanced HAN」に準拠した無線通信モジュールを2019年に製品化している。HEMS(Home Energy Management System)※2用途での販売開拓を行っている状況にあり、同モジュールの販売動向次第となる。

※1 無線通信規格の1つで、日本では特定小電力無線と呼ばれる920MHz帯で使用されている。2.4GHzや5GHz帯を使用するWi-Fiと比べると、通信速度は遅いものの、通信距離が長く、通信の安定性が優れること、また、低消費電力であることが長所となっている。代表的な用途として、スマート電力メーターに利用されている。
※2 家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム。


(2) 高付加価値業務へのシフト
ソフトウェア受託開発事業は、二次請け、三次請けが多く、利益率の低い事業構造であったが、同社は高付加価値業務へのシフトに取り組むことで、収益性の向上を目指している。主な施策として、プライム業務の拡大、提案型業務の拡大、将来性の高い市場・技術へのシフトの3点を掲げて取り組んできた。いずれも順調な成果が出ており、受託開発型事業の売上総利益率で見ると、2017年12月期の15.5%から2019年12月期は21.5%に上昇している。また、2020年12月期は22.0%と更なる向上を目指している。

a) プライム業務の拡大:業務システム
プライム業務とは最終顧客から直接受注する案件を指し、同社では業務システム分野においてプライム案件の受注獲得に注力している。プライム案件は、システムの要件定義の設定など上流工程から携われるため、付加価値も高くなる。このため、コンサルティング能力や顧客との折衝能力も重要となってくる。業務システムの開発案件では途中で顧客から仕様変更が入るケースも多く、それが原因で開発遅延が発生し、赤字プロジェクトに陥ってしまうケースもあるためだ。同社ではコンサルティングから保守・運用までグループで一貫して提供できる強みを生かして、プライム案件の売上げを着実に伸ばしており、2020年12月期は前期比7.7%増の600百万円を目指している。業務システム分野の売上構成比で約16%の水準となる。テイクスやコンピュータハウスなどを子会社化したことでエンジニアのリソースが大幅に拡充したこともあり、今後も積極的にプライム案件の受注を獲得していく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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配信元: フィスコ
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