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澁澤倉庫のニュース
*12:09JST 澁澤倉庫 Research Memo(9):進捗順調なDX推進、拠点拡充、業域拡大、ESG
■中期経営計画
3. 「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」の進捗
「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」達成に向け、DX推進による業務効率化や拠点拡充による対応強化、物流の枠を超えた業域の拡大に取り組んでいる。これにより戦略的に採算性を向上し競争力を一層強化して、中期成長に弾みをつけるねらいである。「Shibusawa 2030 ビジョン」達成に向けては、ESGへの取り組みを強化しており、現状、全般的に非常に順調に進捗していると言える。
(1) DX推進による業務効率化
澁澤倉庫<9304>はDXによって、マンパワーとオートメーションを融合した在庫波動を吸収する効率的運営モデルの確立、車両・配車データの運行効率の向上、AIやRPA導入による業務の効率化などを推進している。なかでも人手不足の物流業界で大きな課題となってきた省人化に向け、自動搬送機や無人搬送フォークリフト、「物流3Dロボット」などを開発し、実用化した。水平移動ロボットソーターと垂直移動ロボットソーターにより立体に動く「物流3Dロボット」は松戸営業所で実地運用中である。これまで水平ロボットを使ってアパレル関連商品の小口仕分け(店舗別、返品、EC)を行ってきたが、これに垂直ロボットを組み合わせて統合運用することにより、同等の処理能力を維持しながら、機材使用スペースを 57%削減し、スペース当たりの生産性を2.3倍向上することができた。
2024年2月に竣工する千葉市の飲料特化型新拠点では、飲料物流における保管・荷役・物流動線などの知見を反映した BTS(Build To Suit:オーダーメイド型の専用施設)仕様に加え、WMSと連携する無人搬送フォークリフトや自動搬送機といった DX・先端イノベーション技術を活用した業務の自動化・省力化により、作業の効率化、作業員の労働環境の改善や安全・安心を進めている。なお、自動搬送機は、すでに多品種・小ロットのアイテムの保管効率や作業効率の向上に貢献、導入前後で作業量が20%程度減ったようだ。無人搬送フォークリフトも、大ロットアイテムの24時間365日の稼働が可能で、リフトマン数名の省人化という効率性を実現、坪当たりの保管効率が約2.5倍となる。なお、自家消費型の太陽光発電設備の設置やリチウムイオンバッテリーフォークリフトの導入も検討しており、地球温暖化ガス排出削減に向けた取り組みを加速している。
(2) 拠点拡充による対応力強化
同社の強みに専門性の追求があるが、これは飲料・日用品など消費財や多品種少量貨物といった専門性が必要とされる分野に関する豊富なノウハウがバックボーンになっている。こうした専門性の強い物流拠点を拡充することで、ドミナント効果などによる効率的な運営や、様々なニーズへの対応力強化による高付加価値化などが可能となってくる。このため、埼玉県北本市、神奈川県横浜市、千葉県松戸市での国内物流拠点の新設や、フィリピン現地法人の稼働開始、平和みらい(株)の連結子会社化による静岡県下でのネットワーク拡大など、「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」においても拠点拡充策を継続した。
「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」では、収益貢献は次期中期経営計画以降になる予定だが、新拠点として神奈川県横浜市の本牧埠頭倉庫の開発と、大阪府茨木市及び兵庫県神戸市における危険物倉庫の新設を計画している。神奈川県横浜市の本牧埠頭倉庫開発計画は、4階建て・延床面積約23,000平方メートルの自社開発倉庫で、山下埠頭の再開発に伴う代替拠点として、2024年10月に竣工する計画になっている。自社開発の利点を生かし、需要が高まっている定温・定湿機能や、輸出入貨物の取り扱いを増やすとともに食品・飲料を中心とした輸入貨物のDC業務(在庫機能)を拡大する予定である。環境への配慮として、自家消費型の太陽光発電設備を設置することを検討している。危険物倉庫は、2024年3月に大阪府茨木市の茨木営業所の敷地内に平屋・延床面積約850平方メートルの倉庫1棟を、2024年4月には兵庫県神戸市に解体済みの七突普通品倉庫の建替施設として平屋・総延床面積約1,700平方メートルの倉庫2棟を竣工する計画である。危険物倉庫は需要増加に伴い庫腹が不足していることから、早期に危険品輸出入貨物の需要を取り込み、収益に貢献するものと期待している。
(3) 物流の枠を超えた業域の拡大
業域の拡大では、海外現地物流やアウトソーシングサービスの拡大を目指している。このうち海外物流では、澁澤(香港)有限公司で冷蔵・冷凍車両を導入して香港域内の食品物流に参入した。澁澤物流(上海)有限公司では物流拠点と保有トラックを拡充することで中国国内物流業務を拡大する。Shibusawa Logistics Vietnamではトラックと内航船を活用したミルクラン輸送※による現地工場への部品納入を進め、TDG-Shibusawa Logistics,Inc.では倉庫拠点の開設により国内物流や文書保管業務などへ進出することを検討している。また、海外での販路開拓も含めた日本食材の輸出代行、現地でのコールドチェーン物流なども手掛ける方針である。新拠点の開発については、2023年3月期に営業を開始したフィリピンにおける事業拡大を優先するが、自動車部品などで需要が見込まれるタイも新拠点の候補地として調査をしているところである。
※ ミルクラン輸送:巡回集荷のこと。牛乳メーカーが原料となる生乳を調達するため牧場を巡回して集荷することから名付けられた。
アウトソーシングサービスでは、貿易事務や流通加工代行、受発注代行、データ加工分析など物流の枠を超え、メーカー拠点における構内作業の受託など顧客の領域までもターゲットにサービスを展開する考えである。横浜市におけるR&D施設を併設した物流拠点「澁澤ABCビルディング2号館」は、横浜地区での物流事業拡大と研究開発施設の賃貸を目的としている。物流機能に関しては流通加工業務をはじめとする、様々なニーズへの対応を想定した仕様となっている。研究開発施設としては、荷物用エレベーターや設備設置用スペースを配備し、高い床荷重と天井高を利用して多様な機械装置の設置が可能で、クライアントによる汎用的な利用に対応できる仕様となっている。また、横浜港湾地区という好立地のため、物流面で輸出入海上貨物の取扱いに適しているだけでなく、首都高速インターチェンジやJR「新子安駅」と京急「京急新子安駅」から徒歩10分にあるため、研究開発施設として様々な面で重要視されるアクセスの点でも恵まれている。
(4) ESGへの取り組み
同社はESG経営にも積極的に取り組んでいる。直近では、主要賃貸オフィスビルへの再生可能エネルギー電力100%導入や、持分法適用会社のデータ・キーピング・サービスとの協業によるオフィス文書のリサイクルサービスへの参入、EVメーカーであるBYDジャパン(株)との業務提携によるサーキュラーエコノミーの実現に向けたコラボレーションなど、以下のように、CO2排出削減など、サステナビリティを推進する取り組みを積極化させている。
サントリーホールディングス(株)とは、リニューアブル燃料によるトラック輸送を共同で実施している。使用する燃料は、フィンランドのエネルギー企業であるネステ社が開発した非可食油を原料に精製された燃料で、軽油を使用した際との比較でCO2の排出量を約90%削減できると言われている。2023年3月から4月にかけて、千葉市にある京葉配送営業所と神奈川県下のサントリーグループの物流センターの間を、同社の大型トラックで1日2運行、延べ88運行の往復輸送を実施、現在、実用化に向けて各種検証を実施しているところである。また、CO2排出量削減を目的に、2022年6月に包括業務提携を締結したBYDから商用EV(Electric Vehicle:電気自動車)を導入した。さいたま市の学校給食の定期配送業務に投入したが、順次、投入車両を拡大する予定である。CO2削減の取り組みについては省電力設備の導入も進めており、物流施設については、人感センサー付きを含めてすべての照明のLED化をほぼ完了、再生可能エネルギーも一部施設への導入が済んでいる。主要な賃貸オフィスビルについては、再生可能エネルギーの導入が100%完了している。こうした取り組みによるCO2排出量削減効果は、2021年度の総排出量の15%に相当する年間4,350トンに達したようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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3. 「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」の進捗
「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」達成に向け、DX推進による業務効率化や拠点拡充による対応強化、物流の枠を超えた業域の拡大に取り組んでいる。これにより戦略的に採算性を向上し競争力を一層強化して、中期成長に弾みをつけるねらいである。「Shibusawa 2030 ビジョン」達成に向けては、ESGへの取り組みを強化しており、現状、全般的に非常に順調に進捗していると言える。
(1) DX推進による業務効率化
澁澤倉庫<9304>はDXによって、マンパワーとオートメーションを融合した在庫波動を吸収する効率的運営モデルの確立、車両・配車データの運行効率の向上、AIやRPA導入による業務の効率化などを推進している。なかでも人手不足の物流業界で大きな課題となってきた省人化に向け、自動搬送機や無人搬送フォークリフト、「物流3Dロボット」などを開発し、実用化した。水平移動ロボットソーターと垂直移動ロボットソーターにより立体に動く「物流3Dロボット」は松戸営業所で実地運用中である。これまで水平ロボットを使ってアパレル関連商品の小口仕分け(店舗別、返品、EC)を行ってきたが、これに垂直ロボットを組み合わせて統合運用することにより、同等の処理能力を維持しながら、機材使用スペースを 57%削減し、スペース当たりの生産性を2.3倍向上することができた。
2024年2月に竣工する千葉市の飲料特化型新拠点では、飲料物流における保管・荷役・物流動線などの知見を反映した BTS(Build To Suit:オーダーメイド型の専用施設)仕様に加え、WMSと連携する無人搬送フォークリフトや自動搬送機といった DX・先端イノベーション技術を活用した業務の自動化・省力化により、作業の効率化、作業員の労働環境の改善や安全・安心を進めている。なお、自動搬送機は、すでに多品種・小ロットのアイテムの保管効率や作業効率の向上に貢献、導入前後で作業量が20%程度減ったようだ。無人搬送フォークリフトも、大ロットアイテムの24時間365日の稼働が可能で、リフトマン数名の省人化という効率性を実現、坪当たりの保管効率が約2.5倍となる。なお、自家消費型の太陽光発電設備の設置やリチウムイオンバッテリーフォークリフトの導入も検討しており、地球温暖化ガス排出削減に向けた取り組みを加速している。
(2) 拠点拡充による対応力強化
同社の強みに専門性の追求があるが、これは飲料・日用品など消費財や多品種少量貨物といった専門性が必要とされる分野に関する豊富なノウハウがバックボーンになっている。こうした専門性の強い物流拠点を拡充することで、ドミナント効果などによる効率的な運営や、様々なニーズへの対応力強化による高付加価値化などが可能となってくる。このため、埼玉県北本市、神奈川県横浜市、千葉県松戸市での国内物流拠点の新設や、フィリピン現地法人の稼働開始、平和みらい(株)の連結子会社化による静岡県下でのネットワーク拡大など、「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」においても拠点拡充策を継続した。
「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」では、収益貢献は次期中期経営計画以降になる予定だが、新拠点として神奈川県横浜市の本牧埠頭倉庫の開発と、大阪府茨木市及び兵庫県神戸市における危険物倉庫の新設を計画している。神奈川県横浜市の本牧埠頭倉庫開発計画は、4階建て・延床面積約23,000平方メートルの自社開発倉庫で、山下埠頭の再開発に伴う代替拠点として、2024年10月に竣工する計画になっている。自社開発の利点を生かし、需要が高まっている定温・定湿機能や、輸出入貨物の取り扱いを増やすとともに食品・飲料を中心とした輸入貨物のDC業務(在庫機能)を拡大する予定である。環境への配慮として、自家消費型の太陽光発電設備を設置することを検討している。危険物倉庫は、2024年3月に大阪府茨木市の茨木営業所の敷地内に平屋・延床面積約850平方メートルの倉庫1棟を、2024年4月には兵庫県神戸市に解体済みの七突普通品倉庫の建替施設として平屋・総延床面積約1,700平方メートルの倉庫2棟を竣工する計画である。危険物倉庫は需要増加に伴い庫腹が不足していることから、早期に危険品輸出入貨物の需要を取り込み、収益に貢献するものと期待している。
(3) 物流の枠を超えた業域の拡大
業域の拡大では、海外現地物流やアウトソーシングサービスの拡大を目指している。このうち海外物流では、澁澤(香港)有限公司で冷蔵・冷凍車両を導入して香港域内の食品物流に参入した。澁澤物流(上海)有限公司では物流拠点と保有トラックを拡充することで中国国内物流業務を拡大する。Shibusawa Logistics Vietnamではトラックと内航船を活用したミルクラン輸送※による現地工場への部品納入を進め、TDG-Shibusawa Logistics,Inc.では倉庫拠点の開設により国内物流や文書保管業務などへ進出することを検討している。また、海外での販路開拓も含めた日本食材の輸出代行、現地でのコールドチェーン物流なども手掛ける方針である。新拠点の開発については、2023年3月期に営業を開始したフィリピンにおける事業拡大を優先するが、自動車部品などで需要が見込まれるタイも新拠点の候補地として調査をしているところである。
※ ミルクラン輸送:巡回集荷のこと。牛乳メーカーが原料となる生乳を調達するため牧場を巡回して集荷することから名付けられた。
アウトソーシングサービスでは、貿易事務や流通加工代行、受発注代行、データ加工分析など物流の枠を超え、メーカー拠点における構内作業の受託など顧客の領域までもターゲットにサービスを展開する考えである。横浜市におけるR&D施設を併設した物流拠点「澁澤ABCビルディング2号館」は、横浜地区での物流事業拡大と研究開発施設の賃貸を目的としている。物流機能に関しては流通加工業務をはじめとする、様々なニーズへの対応を想定した仕様となっている。研究開発施設としては、荷物用エレベーターや設備設置用スペースを配備し、高い床荷重と天井高を利用して多様な機械装置の設置が可能で、クライアントによる汎用的な利用に対応できる仕様となっている。また、横浜港湾地区という好立地のため、物流面で輸出入海上貨物の取扱いに適しているだけでなく、首都高速インターチェンジやJR「新子安駅」と京急「京急新子安駅」から徒歩10分にあるため、研究開発施設として様々な面で重要視されるアクセスの点でも恵まれている。
(4) ESGへの取り組み
同社はESG経営にも積極的に取り組んでいる。直近では、主要賃貸オフィスビルへの再生可能エネルギー電力100%導入や、持分法適用会社のデータ・キーピング・サービスとの協業によるオフィス文書のリサイクルサービスへの参入、EVメーカーであるBYDジャパン(株)との業務提携によるサーキュラーエコノミーの実現に向けたコラボレーションなど、以下のように、CO2排出削減など、サステナビリティを推進する取り組みを積極化させている。
サントリーホールディングス(株)とは、リニューアブル燃料によるトラック輸送を共同で実施している。使用する燃料は、フィンランドのエネルギー企業であるネステ社が開発した非可食油を原料に精製された燃料で、軽油を使用した際との比較でCO2の排出量を約90%削減できると言われている。2023年3月から4月にかけて、千葉市にある京葉配送営業所と神奈川県下のサントリーグループの物流センターの間を、同社の大型トラックで1日2運行、延べ88運行の往復輸送を実施、現在、実用化に向けて各種検証を実施しているところである。また、CO2排出量削減を目的に、2022年6月に包括業務提携を締結したBYDから商用EV(Electric Vehicle:電気自動車)を導入した。さいたま市の学校給食の定期配送業務に投入したが、順次、投入車両を拡大する予定である。CO2削減の取り組みについては省電力設備の導入も進めており、物流施設については、人感センサー付きを含めてすべての照明のLED化をほぼ完了、再生可能エネルギーも一部施設への導入が済んでいる。主要な賃貸オフィスビルについては、再生可能エネルギーの導入が100%完了している。こうした取り組みによるCO2排出量削減効果は、2021年度の総排出量の15%に相当する年間4,350トンに達したようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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