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■株主還元策
ウェルス・マネジメント<3772>では、株主への利益還元を最重要課題の1つとして位置付けている。現中期経営計画においても、配当戦略として「利益水準に応じた安定的な配当の実施」「トータル・シェアホルダーズリターン等の指標の検討」を掲げている。すなわち、配当や株主優待に加え、EPSの成長、すなわち企業価値を高めて株価を上昇させることで、トータルで株主利回り向上を図る方針だ。
配当に関しては、長期安定的な経営基盤の確立に必要な内部留保水準、事業環境や業績動向、財務体質、資本効率などを総合的に勘案し決定しており、配当は期末の年1回を基本方針としている。また、同社では、例年、期初には配当予想を示さず、決算の見通しがある程度固まった段階で発表をしている。
同社では、2019年4月に、普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施した。これは、投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、同社株式の流動性の向上と投資家層の拡大を図ることを目的とするものである。
2020年3月期の配当については、株主からの期待にも応えながら、長期安定的な経営基盤の確立に必要な内部留保水準、事業環境や業績動向、財務体質、資本効率などを総合的に勘案し、実質的に2019年3月期と同額の1株当たり20円とした。未曽有の新型コロナウイルス感染症の拡大という緊急事態もあり、当面は内部留保の蓄積が必要ではあるが、長期的には配当性向の引き上げが課題となる。
また、同社では、2020年3月期より、毎年9月末時点の株主を対象に、保有株式数に応じて株主優待を開始した。毎年12月下旬頃に同社グループの運営ホテル利用券を贈呈する。しかし、2019年12月に配布された2019年度株主優待は、新型コロナウイルス感染症拡大防止策として外出自粛要請が出されたため、十分に活用されていなかったことから、利用期限を2020年12月末から2021年6月末までに延長した。さらに2020年8月25日には、300株以上500株未満保有の株主にはホテル利用券5,000円を、500株以上1,000株未満保有の株主には同10,000円を、1,000株以上保有の株主には同20,000円を贈呈することとし、新たに500株以上から1,000株未満保有の株主への優待制度を新設したことを発表した。今後も、引き続き株主優待の内容を充実する方針である。
このように、同社では、株式分割、配当、株主優待、株価上昇によるキャピタルゲインなどを含めて、総合的な株主還元(トータル・シェアホルダーズ・リターン)の増大に取り組む姿勢は大いに評価できるだろう。
同社の株価、日経平均、不動産業株価指数について、年初の水準を100として指数化して比較してみると、いずれも新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に2020年4月初めまで大きく下落したものの、その後、徐々に戻りつつある。しかし、2020年7月31日現在、同社株価指数は50.4にとどまり、日経平均の93.6、不動産業の68.7を大きく下回っている。同社の類似会社であるケネディクス<4321>、いちご<2337>、トーセイ<8923>などに比べて、株価の戻りが不十分である。また、実績PERも3.4倍にとどまり、同業他社の4.6倍~14.7倍に比べて評価が低い。それは、同社は不動産業でありながらホテル業として評価されていることが一因であると考えられる。しかし、同社グループの主力である不動産金融事業では、中期経営計画を大きく上回り好調を持続している。ホテル運営事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い海外旅行者の大幅減少に伴い苦戦しているものの、国内宿泊の8割は日本人旅行者であり、今後は主に日本人旅行者の獲得に注力する方針である。弊社では、こうした同社グループのビジネス戦略、意欲的な中期経営計画、順調な業績推移などが投資家に十分に理解されれば、投資家層が拡大し、株価評価も徐々に切り上がると考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<EY>
ウェルス・マネジメント<3772>では、株主への利益還元を最重要課題の1つとして位置付けている。現中期経営計画においても、配当戦略として「利益水準に応じた安定的な配当の実施」「トータル・シェアホルダーズリターン等の指標の検討」を掲げている。すなわち、配当や株主優待に加え、EPSの成長、すなわち企業価値を高めて株価を上昇させることで、トータルで株主利回り向上を図る方針だ。
配当に関しては、長期安定的な経営基盤の確立に必要な内部留保水準、事業環境や業績動向、財務体質、資本効率などを総合的に勘案し決定しており、配当は期末の年1回を基本方針としている。また、同社では、例年、期初には配当予想を示さず、決算の見通しがある程度固まった段階で発表をしている。
同社では、2019年4月に、普通株式1株につき2株の割合で株式分割を実施した。これは、投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、同社株式の流動性の向上と投資家層の拡大を図ることを目的とするものである。
2020年3月期の配当については、株主からの期待にも応えながら、長期安定的な経営基盤の確立に必要な内部留保水準、事業環境や業績動向、財務体質、資本効率などを総合的に勘案し、実質的に2019年3月期と同額の1株当たり20円とした。未曽有の新型コロナウイルス感染症の拡大という緊急事態もあり、当面は内部留保の蓄積が必要ではあるが、長期的には配当性向の引き上げが課題となる。
また、同社では、2020年3月期より、毎年9月末時点の株主を対象に、保有株式数に応じて株主優待を開始した。毎年12月下旬頃に同社グループの運営ホテル利用券を贈呈する。しかし、2019年12月に配布された2019年度株主優待は、新型コロナウイルス感染症拡大防止策として外出自粛要請が出されたため、十分に活用されていなかったことから、利用期限を2020年12月末から2021年6月末までに延長した。さらに2020年8月25日には、300株以上500株未満保有の株主にはホテル利用券5,000円を、500株以上1,000株未満保有の株主には同10,000円を、1,000株以上保有の株主には同20,000円を贈呈することとし、新たに500株以上から1,000株未満保有の株主への優待制度を新設したことを発表した。今後も、引き続き株主優待の内容を充実する方針である。
このように、同社では、株式分割、配当、株主優待、株価上昇によるキャピタルゲインなどを含めて、総合的な株主還元(トータル・シェアホルダーズ・リターン)の増大に取り組む姿勢は大いに評価できるだろう。
同社の株価、日経平均、不動産業株価指数について、年初の水準を100として指数化して比較してみると、いずれも新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に2020年4月初めまで大きく下落したものの、その後、徐々に戻りつつある。しかし、2020年7月31日現在、同社株価指数は50.4にとどまり、日経平均の93.6、不動産業の68.7を大きく下回っている。同社の類似会社であるケネディクス<4321>、いちご<2337>、トーセイ<8923>などに比べて、株価の戻りが不十分である。また、実績PERも3.4倍にとどまり、同業他社の4.6倍~14.7倍に比べて評価が低い。それは、同社は不動産業でありながらホテル業として評価されていることが一因であると考えられる。しかし、同社グループの主力である不動産金融事業では、中期経営計画を大きく上回り好調を持続している。ホテル運営事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い海外旅行者の大幅減少に伴い苦戦しているものの、国内宿泊の8割は日本人旅行者であり、今後は主に日本人旅行者の獲得に注力する方針である。弊社では、こうした同社グループのビジネス戦略、意欲的な中期経営計画、順調な業績推移などが投資家に十分に理解されれば、投資家層が拡大し、株価評価も徐々に切り上がると考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<EY>
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