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ウェーブロックHD Research Memo(7):マテリアルソリューション事業が増益に

配信元:フィスコ
投稿:2021/07/26 15:07
■業績動向

2. 事業セグメント別の動向
(1) インテリア事業
インテリア事業の売上高は前期比2.7%減の9,431百万円、営業利益は同6.2%減の865百万円となった。業界全体の塩化ビニル樹脂系壁紙の出荷数量は、コロナ禍で新規着工戸数やリフォーム需要が低迷した影響により、同7%減(量産品4%減、中級品12%減)と低調に推移したが、ウェーブロックホールディングス<7940>の販売数量はサンゲツとの戦略的な取り組みが奏功して、同3%増(量産品4%増、中級品1%増)となった。ただ、原材料価格の低下に伴う販売単価の値下げや、マテリアルソリューション事業向けに製造販売している建設用途シートの不振等の影響もあって売上高は5期ぶりの減収となった。

営業利益の増減要因を見ると、製造効率改善効果で53百万円の増益となったものの、減収に伴う減益で22百万円、デザイン力強化のための人件費等を中心に販管費が89百万円増加したことが減益要因となった。ただ、営業利益率に関しては9.2%と前期実績の9.5%とほぼ同水準を維持した。

(2) マテリアルソリューション事業
マテリアルソリューション事業の売上高は前期比0.4%減の16,131百万円、営業利益は同10.9%増の1,242百万円となった。ソリューション別の売上動向を見ると、リビングソリューションについては、コロナ禍を背景とした巣ごもり需要や換気意識の高まりにより、ホームセンター向けの家庭用農園芸製品や張替用防虫網の販売が好調に推移したほか、サッシメーカー向け防虫網に関しても学校での需要が拡大した。

ビルディングソリューションは、コロナ禍で建設工事の中断や各種イベントの中止・縮小が相次いだ。また、インダストリアルソリューションについても、在宅勤務の広がりによる家庭用エアコン向けフィルター需要や飛沫感染防止対策品の需要が増加したものの、商業ビル向け防煙垂壁等その他製品の落込みを吸収できなかった。

パッケージングソリューションは、中食需要拡大による食品容器やヨーグルト容器向けの販売が堅調に推移したものの、ミルクポーションが外食業界向けに大幅減となった。原材料単価の低下に伴う販売単価の下落も減収要因となったものの、顧客の関係強化および生産体制の見直しなどにより利益率は大幅に改善した。

アグリソリューションは、ホテルや外食業界向けの農作物の需要減による先行きの不透明さに加え、2020年秋以降の暖冬による野菜価格の低下等から、生産農家による農業資材の投資控えが続いた。

営業利益の増減要因を見ると、ビルディングソリューション及びインダストリアルソリューションの減収による減益308百万円を、高利益率製品の販売増に伴う増益251百万円、パッケージソリューションにおける生産体制見直し等による利益率の改善効果185百万円でカバーした。

(3) アドバンストテクノロジー事業
アドバンストテクノロジー事業の売上高は前期比3.2%増の4,127百万円、営業利益は同3.1%減の78百万円となった。

金属調加飾フィルムの売上は、主力の自動車向けが中国市場で回復したほか、国内向けについても採用車種の販売好調並びに自動二輪用エンブレムの採用等により当初計画に対し順調に回復した。一方、欧米向けに関しては案件の立ち上がりが遅れ苦戦した。

PMMA/PC2層シートの売上は、スマートフォン筐体向けの撤退により大きく落ち込み、利益面でも第4四半期に製品在庫及び材料の処分損を計上したことで損失を計上した。ただ、注力市場である車載用に関しては欧州市場でCID用の新規案件獲得が順調に進んだほか、HUDの防塵用シールド材として採用が進むなど着実に増加している。CIDやHUDは今後大型化する傾向にあり、薄くて強度があり、傷のつきにくい樹脂シールド材の需要が増加していると言う。

その他分野では、医療分野が低調に推移したものの、仕入販売となる液晶ディスプレイ用拡散板が増加した。拡散板の増加については、販売先の韓国ディスプレイメーカーにおいて、中国取引先からの調達が一時的にできなくなったことで同社に発注が回ってきたもので、一時的な増加と同社では見ている。

営業利益の増減要因を見ると、PMMA/PC2層シート分野のスマートフォン筐体向け撤退による減収並びに製品在庫及び材料の処分損の計上等により106百万円の減益となったが、ディスプレイ用拡散板の増収による増益で43百万円、出張費の減少による増益で54百万円となっている。


インテリア事業の譲渡により総資産は減少するも財務体質は大きく改善

3. 財務状況
2021年3月期末の総資産は前期末比3,052百万円減の26,092百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産ではWIT株式の譲渡により現金及び預金が2,514百万円増加し、また、主にWITが連結対象から外れたことにより、受取手形及び売掛金が744百万円、製品が595百万円それぞれ減少した。固定資産では主にWITが連結対象から外れたことにより、有形固定資産が3,926百万円減少した。

負債合計は前期末比5,264百万円減少の11,802百万円となった。WIT株式の譲渡等によって、有利子負債を2,980百万円返済したほか、主にWITが連結対象から外れたことで、支払手形及び買掛金が1,346百万円、退職給付に係る負債が439百万円それぞれ減少した。純資産は前期末比2,211百万円増加の14,289百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、利益剰余金が2,095百万円増加した。

経営指標を見ると、有利子負債の減少により、有利子負債比率が前期末の66.3%から35.2%と大きく低下し、自己資本比率が同様に41.3%から54.6%に上昇するなど、財務体質の改善が大幅に進んだ格好となっている。今後も残りのWIT株式を譲渡すれば約24億円のキャッシュが入ってくることになり、これらの資金を有利子負債の返済だけでなく、M&Aを含めた成長投資に投下し、収益拡大を目指していく方針となっている。収益性について見ると、営業利益率は5%台と安定した水準で推移している。既述のとおり同社の事業領域が幅広く、特定業種の好不況の影響を受けにくいことが一因と見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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