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中期で変貌期待、テンバガーDNA宿す「インバウンド」6銘柄大選抜 <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2024/11/30 19:30

―訪日客数は拡大の一途、時価総額の小さい銘柄で成長モデルを有する株をロックオン―

 東京株式市場は依然として方向感の定まらない動きが続いている。日経平均株価は75日移動平均線を絡め3万8000円台のもみ合いだが、下値では押し目買いが入るものの上値を買い進む動きにはなかなか発展しない。来年1月に就任するトランプ次期米大統領の関税強化をはじめとした通商政策を警戒し、ハイテクや機械、自動車セクターなどに逆風が意識されている。これが全体指数の上値を重くする背景となっている。

 そのなか、相対的に強さを発揮しているのが内需株の一角だ。とりわけ、インバウンドの恩恵を享受している消費関連株の一角に、足の長い投資マネーが静かに流れ込んでいる。国内は物価上昇に対する警戒感が強く、実質賃金上昇がままならない中で消費者マインドを冷やすケースも想定されるが、訪日外国人観光客の消費熱に関しては一向に衰える気配はない。商品やサービス価格を引き上げても需要が落ちないというのは、ある意味、売る側にとっては無双状態である。株式市場でもインバウンド関連株が年末相場でハイパフォーマーと化す公算が大きくなってきた。

●訪日客の増勢基調に陰りなし

 11月20日に日本政府観光局(JNTO)が発表した10月の訪日外客数は331万2000人と、これまで最高だった7月の記録を2万人近く上回り、単月としての過去最高を更新した。また、2024年1~10月の累計では約3019万人に達し、統計を開始した1964年以降、過去最速での3000万人突破となった。まさに絶好調といってよいが、今後中期的にみると更に加速していくことになりそうだ。かつて「爆買い」で話題となった中国人観光客が、依然として出遅れている現実があるからだ。これから先、中国人客が増勢を強めることが想定されるなか、過去最高が何回も塗り替えられていく可能性は非常に高いといえる。

 24年のインバウンド消費は金額ベースで7兆円を上回るとみられる。23年は約5兆3000億円であったから優に30%以上の伸びを示すことになる。ちなみに政府は観光立国推進基本計画においてインバウンド消費金額の目標として5兆円を掲げていたが、昨年段階で既にその水準を超えた。最近では物品を購入することよりも体験を重視する傾向が強く、訪日客の間でもモノ消費からコト消費への移行がひとつのトレンドとなっているようだ。外国人が日本のカルチャーそのものを楽しんでいることが分かる。

 インバウンドの恩恵が及ぶ業界は多岐にわたるが、分かりやすいところでは航空券や宿泊予約会社、ホテル業界、 外食などのほか、 百貨店・コンビニ・ドラッグストアなどの小売りセクター、テーマパークなどのレジャー関連などがある。もちろん、これ以外にニッチ分野でインバウンド特需を謳歌する企業も数多く存在する。

●ブラックフライデー爆需in日本

 百貨店の10月の売上高が32カ月ぶりに減少したことがマーケットでも話題となったが、これは異例の残暑に伴う秋冬物商品の不振という異常気象による要因が大きかった。11月については堅調な推移が確認されている。しかし、そうした中で注目されたのは訪日客の購買動向を示す免税売上高であり、1~10月の累計で統計開始以来、初めて5000億円を超過したことが伝えられた。また、今週明け25日に日本フードサービス協会が開示した10月度の外食売上高は、全店ベースで前年同月比6.1%増と、こちらは35カ月連続で前年比プラスを確保。これはインバウンド需要の追い風の強さが後押ししたものだ。

 このほか直近では、週末29日に総務省から発表された東京都区部の消費者物価指数(CPI)がコア指数で前年同月比2.2%上昇とコンセンサスを0.1ポイント上回った。この数値自体は上振れたとはいえ、それほどインパクトはないが、内訳をみるとコメ類が過去最大の62.8%上昇という目を疑う高騰をみせている。これは不作の影響もあるが、訪日客の急増によって外食需要が高まったことが背景にあると分析されている。文字通り訪日客の「爆食」需要がコメ市況に影響を与えている。

 そして29日は米国では「ブラックフライデー」にあたり、ここから年末商戦が本格化していく。日本でも、このブラックフライデーというワードをポップ広告やチラシにして顧客誘導を図る動きが多方面でみられる。これは、日本人だけでなく外国人に向けたアピール効果を計算に入れた部分もありそうだ。インバウンド消費は、今や国内の消費全般に関わる企業すべての注目の的であり、東京市場でも年末商戦の時間軸で関連銘柄への投資マネー流入が加速していく構図が描かれることになる。

●インバウンドで化ける小型株に照準

 インバウンド関連に位置付けられる銘柄の裾野は広いだけに、物色対象としてどこに注目するかは投資戦略上重要なことである。以前に物色人気化した半導体関連株のように出来高流動性に富む銘柄は比較的少ないが、それは時価総額の小さい銘柄が多いということにも関連している。ただし、足もとの業績が堅調でビジネスモデルに成長性を宿している銘柄は、将来的な株価変貌期待も大きい。実はインバウンド関連は大化け株の宝庫でもある。

 一例を挙げれば、土産菓子の大手である寿スピリッツ <2222> [東証P]は、昨年9月29日に2518円(修正後株価)の上場来高値をつけたが、10年前の14年は年間を通じて100円台で推移していた。ざっと株価は20倍化した勘定である。時価総額が小さくても、インバウンドという収益のバックグラウンドがあり、売上高が漸増している企業は、逆に中長期で保有することにより強力なキャピタルゲインをもたらす可能性を内包している。

 今回のトップ特集では時価総額30億~200億円程度の好業績・小型株を対象に、将来の成長シナリオを持つニッチな6銘柄を選抜、中長期視野で株価変貌に期待したい。

●インバウンド追い風に要注目の6銘柄

インバウンドプラットフォーム <5587> [東証G]

 インバPFはWi-Fi端末のレンタル事業を手掛けており、多言語対応で優位性を発揮し訪日外国人を顧客対象に需要獲得が進んでいる。このほかビジネス多角化にも取り組んでおり、在留外国人向けに、生活の利便性向上を支援するサービス情報の提供や取り次ぎを行うライフメディアテック事業、キャンピングカーレンタルなどの事業も手掛けている。

 ライフメディアテックでは新幹線チケット手配サービスなどが好調で全体収益の押し上げに寄与している。業績面では24年9月期に2ケタ増収ながらWi-Fiレンタルの競争激化もあって営業利益は大幅減益を強いられたが、25年9月期はeSIM(スマートフォンに内蔵された本体一体型のSIM)事業の貢献もあって大きく切り返す見通し。営業利益は前期比41%増の2億5300万円を見込む。

 流動性にやや難があり値動きの荒さには留意する必要があるが、30億円未満の時価総額はあまりに評価不足で中期的に見直し余地が大きい。当面は11月21日につけた907円の戻り高値更新から4ケタ大台復帰を目指す。

ツカダ・グローバルホールディング <2418> [東証S]

 ツカダGHDは欧米邸宅風施設を使った挙式や披露宴など婚礼ビジネスを主力に手掛けるほか、ホテル事業、フィットネスクラブ運営などにも幅広く展開している。このうちホテル事業では、世界的に有名なインターコンチネンタルホテルズ&リゾーツから受け継いだ高品質の接客ノウハウを強みに東京都内に3カ所、名古屋に1カ所の計4つの高級ホテルを運営する。

 高水準のインバウンド消費を取り込み、ホテル稼働率、顧客単価ともに好調で収益拡大に拍車がかかっている。営業利益は23年12月期に80%増益と急回復を果たしたが、続く24年12月期も前期比28%増の68億4700万円と3割近い伸びを見込む。また、最終利益が段階取得差益でゲタを履いているとはいえ、4倍前後のPERは特筆される。

 10月下旬に同社施設の優待券や宿泊招待券を贈呈する株主優待制度の拡充を発表していることも株価の刺激材料となる。年初来高値520円奪回が当面の目標だが、ホテル事業などの展開力を考慮すると、200億円前後の時価総額は将来的な変身余地を内包する。

まんだらけ <2652> [東証S]

 まんだらけは漫画専門の古書販売で業界首位。アニメ原画やフィギュアなどマニア向け商品分野でも圧倒的な実績を持ち、商品鑑定力でも群を抜く存在となっている。マニア向けでは日本のアニメ文化に魅入られる外国人のニーズが旺盛で、訪日外客数が増勢一途となるなかインバウンド特需を取り込んでいる。そして、この追い風は今後更に強まっていくことが予想される。

 業績面では23年9月期以降、一気に成長路線に乗った。25年9月期は伸び率こそ鈍化するものの増収増益を確保し、売上高は前期比4%増の150億700万円、営業利益も同4%増の21億5700万円と、売上高・利益ともに連続で過去最高を更新する見通し。株主還元強化に向けた取り組みも進めている。

 業績変貌に合わせて株価も22年10月を境に動きを一変させ、長期上昇トレンド入り。今年4月には株式分割後の修正株価で628円の上場来高値をつけた。その後は調整を強いられたがここにきて底入れ足を鮮明としている。最高値奪回から中期的には4ケタ大台指向へ。

ミクリード <7687> [東証G]

 ミクリードは個人経営の居酒屋をはじめカフェ業態、フードトラック(キッチンカー)向けなどに業務用食材通販を行っており、業界の草分けとして顧客ニーズを開拓している。1年365日間を通じて常に出荷できる体制を確立しており、一部地域を除いて注文を受けた翌日には配送できるという迅速対応も優位性を際立たせる。

 業績面ではトップラインと利益双方で成長トレンドが鮮明。外食業界はインバウンド消費を背景に収益面の追い風が強く、つれて食材を提供する同社の商機も高まっている。24年3月期に営業66%増益と大幅な伸びで過去最高を更新、続く25年3月期も前期比13%増の3億6500万円とピーク利益更新が続く見通しだ。PER13倍台で割高感は全くなく、ROEが20%を超えるなど“稼ぐ力”の強さも申し分ない。時価総額はわずか30億円強に過ぎない。

 株価は11月に入って動兆著しく、時価は500円近辺でもみ合うが本格上昇局面に向けた踊り場と判断したい。昨年9月につけた上場来高値736円を通過点に長期上昇波動の形成に期待が募る。

一家ホールディングス <7127> [東証S]

 一家HDは首都圏で和食居酒屋「屋台屋 博多劇場」をはじめ複数のブランドで飲食店(居酒屋)を運営。千葉県を本拠とし、東京都や埼玉県などに直営で店舗展開を図っている。また、ブライダル事業などのほか、新規事業としてレジャーや宿泊関連も展開する。接客重視の方針を前面に押し出し、“日本一のおもてなし集団”を標榜している。

 25年3月期は売上高が前期比15%増の106億2400万円、営業利益は同61%増の3億6600万円を見込んでいる。上期の進捗率から利益下振れの可能性もあるが中長期視野に立てば誤差の範囲だ。トップラインの拡大が顕著であり、今後全国展開を視野に出店戦略が軌道に乗れば成長期待が一段と膨らむ。

 時価総額は50億円前後に過ぎず、その点で上値の伸びしろは大きい。22年9月に777円の最高値をつけているが、その後は下値模索の動きを強いられた。しかし、出店戦略が進むなか中期的な売り上げ規模拡大は疑いなく、株価の青空圏飛翔も早晩実現しそうだ。

魁力屋 <5891> [東証S]

 魁力屋はラーメン店をチェーン展開し、関東・東海・関西の3大都市圏を中心に積極的に店舗数を拡大させている。出店はロードサイドを主軸に商業施設のフードコートなどにも展開。ラーメン店は直近で148店舗(直営111店舗・FC37店舗)となっている。

 一人客から家族連れなど幅広い客層に対応したメニューでリピーター確保を進め、ここ数年来、利益率の改善も急だ。醤油にこだわったスープが売り物でコスト上昇もメニュー価格改定効果で吸収し、値上げをしても客足が衰えていないのが強み。訪日外国人のラーメン人気は知られるところで、同社もその恩恵を享受している。

 23年12月期に売上高2割増で営業利益は8割近い伸びを示したが、24年12月期も2ケタ増収が予想されるなか、営業利益は前期の急伸で発射台が高くなったにもかかわらず、9%増の7億4100万円予想と拡大基調を維持する。株価は今月中旬以降1800~1900円のゾーンでもみ合いを続けているが、早晩上放れが期待され2000円台での活躍に歩を進めそうだ。

株探ニュース
配信元: 株探
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