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―高まる非接触ニーズを背景に市場は急拡大途上、活躍期待の銘柄群を追う―
春先から始まった新型コロナウイルスという見えない敵との戦いに、除菌関連製品が大いに活躍した。売れに売れた「マスク 」「消毒剤」「非接触型体温計」は新型コロナ時代の3種の神器と崇められるとともに、医家用衛生材料大手の川本産業 <3604> [東証2]をはじめとする感染対策銘柄群は大相場を演じた。しかし、足もとでは米製薬大手のファイザーが新型コロナウイルスワクチン開発の進捗を発表したことをきっかけに、ワクチンの早期実用化期待から株式市場では新たに「ワクチン・バブル相場」が始まっている。そしてその期待とは裏腹に、新型コロナウイルス感染の「第3波」に見舞われ、日を追うごとに感染症者数が過去最多を更新するような状況にある。仮に新型コロナウイルスの感染が収束しても将来的に未知のウイルスがいつ襲ってくるのかも予知できない状況下、ポストコロナ時代になっても消毒、殺菌への関心が薄まることはない。そのなか「深紫外線」と呼ばれる波長が比較的短い光による殺菌技術に対するニーズは強く、さまざまな場所で導入に向けた動きが加速している。
●新型コロナウイルスに有効として注目が高まる
深紫外線は、紫外線のなかでもUV-Cと呼ばれる波長100~280ナノメートルの光を指す。細菌やウイルスの増殖に必要な遺伝情報を持つDNAに深紫外線を照射することで、DNAのらせん構造を変化させることにより細胞分裂機能が停止し「不活化」につながる。台湾の調査会社トレンドフォースが5月、新型コロナウイルスの影響でUV-Cメーカーの注文が劇的に増えた事実を踏まえ、UV-C LED(発光ダイオード)パッケージの市場規模について2024年までの5年間の年平均成長率が60%増に達する見込みと発表した。
精密機器メーカーの日機装 <6376> は5月、1月から発売を開始している自社の空間除菌消臭装置「Aeropure(エアロピュア)」に搭載される深紫外線LEDについて、新型コロナウイルスに対する有効性を確認したと発表。同社は新型コロナウイルスの不活化試験を、宮崎大学医学部の共同研究講座で実施し、新型コロナウイルスの減少率は、30秒、60秒照射後にともに99.9%以上だったという。同社が13日に発表した20年1-9月期連結業績は減収減益となったものの、メディカル事業が大幅増益となり業績を下支えした。深紫外線LED技術を活用した製品の販売の伸長が寄与したとしている。
●「有人」環境下で使用できる装置を開発したウシオ電機に注目
紫外線による殺菌は、過熱や化学薬品を使う方法とは異なり、追加購入の必要性はなく光を当てるだけという手軽さが特徴だ。ただ、ウイルスのDNAを破壊するとともに、人間の皮膚や眼球の組織を傷つける可能性もある。そんな「有害性」に対して、ウシオ電機 <6925> は8月、神戸大学との共同研究で222ナノメートル紫外線直接照射による人体皮膚への安全性と殺菌効果の両立を立証したと発表。同社の222ナノメートル紫外線殺菌・ウイルス不活化ユニット「SafeZone UVC device」を用いて222ナノメートル紫外線を20人の正常皮膚に直接照射し、急性障害である紅斑など発生することなく常在菌を殺菌したとしている。人体への安全性を立証したことで、同社が進めている病院や学校など有人環境での紫外線殺菌装置の設置が可能となった。既に米アキュイティ・ブランズとウイルスや細菌を不活化・殺菌する「222nm紫外線殺菌・ウイルス不活化モジュール Care222」の供給契約を結び、北米を中心に販売する予定となっている。
●ロボットやドローンによる展開も
深紫外線を実用化するうえで、紫外線の「直進性」が強く減衰が激しいことも課題となっている。そこでロボット やドローン を使うことでそれを克服する動きが加速している。新型コロナウイルスの感染が広がるなか、持病を含む他の疾病の治療に関しても病院へ足を運ばなくなる人が多いという。ニューノーマルの時代では、直接接触しなくとも、公共施設などでは不特定多数の人たちが触れる物や空間が気になるもの。表面についた菌やウイルスなどが感染の原因になり得るからだ。一足早くコロナの危機から逃れた中国で、インターネットプラットフォーマーのバイドゥ(Baidu)は完全自動運転技術の実用化を掲げているが、新型コロナ感染が拡大傾向にあった春ごろ、マスク認識や体温測定、深紫外線消毒などの機能を搭載したロボットによる公共スペースでの防疫に当たったことが話題を呼んだ。
こうしたなか、テルモ <4543> は日本で独占販売権を取得している米ゼネックス・ディスインフェクション・サービス(テキサス州)の紫外線殺菌ロボット「ライトストライク」が、米国で新型コロナウイルスを除去する効果が確認されたと報じられている。日本でも院内感染対策などで引き合いが強まっており、今後も市場が更に広がりそうだ。
●公衆衛生のニーズで成長に期待がかかる
照明機器大手の岩崎電気 <6924> は10月、中部国際空港などと協同で、コロナ禍において国際線路線の早期復旧を支援するために、紫外線UV-C除菌装置を開発し空港での実用化に向けたプロジェクトに参画したと発表。東京オリンピックの開催を控えるなか、空港の安全対策としてその除菌情報を旅客へ提供することで、安全・安心を提供するシステムの構築を目指すとしている。同社は既に、空気循環式紫外線清浄機「エアーリア」などを複数の医療施設や介護施設に納入しており、「コロナのこともあって(エアーリア)が好調で将来にわたって成長分野として期待している。」(同社総務部)という。
カナミックネットワーク <3939> は屋内空間除菌装置「UVC エアクリーン manager」の販売を手掛けるが、既に懐石料理を中心しとした和食レストラン梅の花の店舗、関東国際学園の教室やカフェテリアなどさまざまな場面で採用されており、今後更に幅広い業態での導入に期待がかかっている。
●家電や浄水に関連した銘柄などにも関心
電化製品や浄水などの分野へ活用に関連した企業にも注目だろう。電化製品では今年は歯ブラシやマスク、スマートフォン用の家庭内で使うさまざまなタイプの消毒ランプが登場したほか、前述の「エアーリア」をはじめとした家庭用消毒機能付き空気洗浄機や加湿器も開発されている。
水の浄化分野では、殺菌効力が最も高いとされる発光波長265ナノメートルで高出力技術に強みを持つスタンレー電気 <6923> にも目を配っておきたい。高出力化によって、水殺菌にも最適波長とされる265ナノメートル深紫外線LEDは、加湿器や製氷機の家庭用品にとどまらず、測定・分析、養殖場、浄水施設などのような大規模な水殺菌システムへの応用などにも期待されそうだ。
豊田合成 <7282> が開発したウイルスや細菌を除去する「深紫外LED光源モジュール」は、量産化第1弾として出資先のWOTA(ウォータ、東京都文京区)が発売予定の水循環型ポータブル手洗いスタンド「WOSH(ウォッシュ)」に搭載されており、今後の展開が注目されそうだ。
株探ニュース
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