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チノー Research Memo(3):計測・制御・監視の温度ループソリューションは業界横断的に大きな強み(1)

配信元:フィスコ
投稿:2022/06/29 15:33
■会社概要

3. 事業概要
温度ループソリューション
鉄鋼、エネルギー産業、航空機、自動車、電子部品、半導体、医療・医薬、農業など様々な産業において、絶対的な正確性が求められる指標が「温度」である。その管理に関してチノー<6850>は世界に「温度のチノー」と言われているニッチトップ企業である。その高い技術力は計測、制御、監視の主に3つの技術レベルの高さとその相乗効果から生まれる温度ループソリューションからなる。温度ループソリューションとは、同社の開発から生産・保管・品質管理・販売・サービスを通じて、顧客の温度に関するあらゆる課題に対して最適な提案をすることを指す。このそれぞれ高いレベルで提供している温度ループソリューションが同社の強みであり、他社との差別化になっているものと弊社では分析する。

つまり同社ビジネスは「温度」に関わる様々な業界・産業でその強みを遺憾なく発揮することが可能であることから、今後の様々な業界進出にも期待していきたい。これに関しては例えば水素関連分野、医薬品輸送・保管、IoT関連などでの需要拡大も予想され、この点において同社の今後の成長性について大いに期待できると分析している。

以下、温度ループソリューションを構成する要素(技術)について説明していく。

(1) 計測
温度の計測は、物からセンサへ熱が伝わることによって行われ、その熱のセンサへの伝わり方には、「伝導」「放射」「対流」の3タイプがある。例えば体温を測る場合は、人間の熱が直接体温計のセンサへ伝わる「伝導」タイプであり、熱に直接触れているので接触式という方法で温度を測っていく。だが、熔けた鉄のような高温のものや手の届かない場所にあるものを測る場合には、接触式温度計を近づけることができない。このような場合には直接触れずに測ることのできる非接触温度計を使用する。同社ではこれらのような熱伝導を利用した接触式温度センサと熱放射を利用した非接触式「放射温度計」を製造している。その対応温度は-270℃から3,500℃の高温まで幅広い。この放射温度計に関して同社は国内トップメーカーとなっている。また、同社では温度を正しく測定するための1990年国際温度目盛(ITS-90)に基づいた標準白金測温抵抗体を利用した、あらゆる温度計の標準となる温度計を提供している。これらが同社の計測技術であり、豊富な計測器で顧客に想定される様々な温度計測ニーズに応えていると言える。

(2) 制御
制御の目的は刻々と変化していく温度を理想の値に保ち続けることを目指すというものである。身近な例では、風呂の水を沸かす際にはガスの炎を点火させ適温になったら止めるという作業が必要である。だが冬など外気温が低い場合だと温めたお湯はすぐに冷めてしまう。このお湯を冷めないようにするためには様子を見ながら温度を調節する必要があり、この調整が「制御」である。この場合、まず湯温を計測し、それが理想の温度と差があれば自動で炎を大きくしたり小さくしたりして理想の温度に保つ。これが自動の温度制御である。

内風呂の場合だと比較的簡単に制御できるが、同社のような優れた制御技術は悪条件下で力を発揮する。例えば、露天風呂の場合だと、昼と夜での気温の変化や激しい雨、あるいは1人で入浴しているときに冷え切った人々が入浴してきた場合など様々な状況でも湯温を変化させずに理想の温度を保つことが求められる。さらに細かな場合では、生産中に0.1℃の誤差が数秒続いただけで使えなくなってしまう工業製品や医薬品も多くある。こうした課題に対して、同社では0.1℃単位で速やかに無駄なく理想的な温度制御技術を提供し続けている。

このような要素が制御においては求められるなかで、同社は省エネルギーを意識したより理想的な制御技術のために、「環境に影響されない制御」「設定した温度へのスムースな到達」「熱エネルギーの高効率化」の3点を満たす技術を開発した。これはサトイモ科の多年草植物であるザゼンソウの多様性を制御に生かした「Z制御」という技術である。この植物は春から夏に蓄えた栄養分を早春にエネルギーにする力を有し、その温度を20℃に保ち続けるという特徴を有している。同社はこの「Z制御」を制御技術に組み込むことにより、従来の制御に比べ省エネ効果・負荷変動に対する頑強性を向上させた。加えて、工業製品の製造工程の温度制御などにおける温度の上げ過ぎや周囲環境の変化による影響を最小限に抑え、理想の温度への到達時間を最短にすることを実現させた。このように同社では、高い技術と用途に合わせた豊富な製品で、確かな制御を実現している。

(3) 監視
監視とは見張り、記録を残すことである。例えば工業製品の生産工程の場合、不良品を出さないために、きちんと温度を保っていたかを確認しその値を記録に残すとともに、理想の温度と違う場合には警報を出して知らせる必要がある。このように状態を見張りつつ記録に残すことを「監視」と呼んでいる。これにより、万一トラブルが発生した場合でも、発生したトラブルが記録データと因果関係があったのか否かを確認することが可能になる。また数日から数年単位の記録データを集計することによって、今後のミスを減らしつつ、より理想の温度へと近づけることも可能にする。このように、1つのミスが大きなミスを生む可能性を持つ生産工程の温度管理において、ミスを少しでも早い時期に発見していくことに優れているのが同社の監視技術である。

同社では紙に記録を残すアナログ記録計や電子的なデータを残すペーパレスレコーダなどの小規模監視に適した記録計単体から、データロガーを介しパソコンでデータを監視する大規模監視まで、顧客の要望に合わせた機器やシステムを提供しており、様々な温度レンジに対応した監視システムが、安定した温度環境の実現を可能にしている。

(4) 校正・保守
以上3点のほかに、同社では計測値の信頼性担保のための計測器の「校正(チェック)」も行っている。同社の校正技術は計量法校正事業者登録制度(JCSS)の温度と湿度の登録事業者であることから担保されており、長年培った計測のノウハウを生かし、信頼される温度計と湿度計の校正を提供している。また同社では点検サービスに対応できる体制を整備しており、故障診断及び修理等が必要になった場合には、国内及び海外の保守拠点ネットワークにより、突発的な故障に対しても迅速な対応を行うことが可能になっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)


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配信元: フィスコ
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