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加藤製作所 Research Memo(8):中期経営計画で収益性向上戦略を推進

配信元:フィスコ
投稿:2024/12/20 13:08
*13:08JST 加藤製作所 Research Memo(8):中期経営計画で収益性向上戦略を推進 ■成長戦略

1. 中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)
加藤製作所<6390>は、コロナ禍に伴う需要の大幅減少やグローバルサプライチェーンの混乱など急激な事業環境の変化に対応し、2022年3月に中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)を策定した。テーマには「スリムで骨太体質への変革」、基本方針には収益改善・強化(コア事業への経営リソース集中及び抜本的改革)、財務体質の改善(在庫を中心とした運転資本の適正化及び資金効率向上)、将来の基盤構築(開発機種のコア事業への集中)を掲げた。次なる飛躍に向けた徹底的な変革ステージと位置付けて、コスト構造の抜本的見直しなど強靭な利益体質へ生まれ変わるための抜本的対策を織り込み、収益性向上戦略を推進している。

主要財務目標値には最終年度2025年3月期の売上高664億円、製造原価率83.2%、営業利益率4.7%などを掲げている。営業利益の改善要因としては、原料費の増加を見込むものの、構造改革に伴い計上した一過性費用が剥落するほか、収益性重視戦略(営業施策、商品施策、製造施策、人事施策、その他施策)による収益性改善を計画している。具体的には、営業施策では販売価格アップ、販売台数拡大、国内販売拠点統廃合など、商品施策としては既存製品の徹底的なコストダウン、新製品群の市場投入など、製造施策としては生産コストの抜本的見直し、生産の平準化など、人事施策とその他施策としては各種固定費の削減やアフターサービス事業の強化などを推進している。

こうした収益性重視戦略の推進により、計画1年目の2023年3月期には構造改革に伴う一時的費用の剥落も寄与して営業黒字転換を達成した。計画2年目の2024年3月期は、主要部品供給制約が継続したことに加え、中国事業の低迷が長期化したため、売上高と営業利益は当初計画値に届かなかったものの、売上原価率の改善が進展して営業大幅増益を達成した。計画最終年度となる2025年3月期の業績予想については、国内建設用クレーン新製品の販売開始の遅れ、中国子会社2社の解散及び清算処理等により、売上高・営業利益とも当初計画値に届かない見込みだが、2026年3月期以降は新たな中期経営計画のもと、事業構造改革関連費用の一巡、収益性改善施策の進展、中国に代わる新たな主要市場としてインド及びその周辺国への商圏拡大等により、収益性の大幅改善が期待できると弊社では考えている。

なお同社は2024年5月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」をリリースした。資本効率の改善を重要な経営課題の1つに据え、今後策定を予定している2026年3月期を初年度とする次期中期経営計画において、関連指標に係る具体的な中期目標を開示し、計画達成に向けた各種施策を推進する。今後も成長戦略の着実な実行による業績拡大、株主還元の充実やIRの強化の継続などにより、企業価値の向上に取り組んでいく。


株主還元を一段と強化

2. 株主還元策
株主還元については、メーカーとして体質強化を図るため必要な内部留保を行いつつ、株主に対して安定的な配当を行うことを基本方針としている。そして中期経営計画を着実に推進し、収益性の改善・強化と財務体質の改善により、従来の安定配当に加えて、さらなる株主還元の充実を目指している。この基本方針に基づいて2025年3月期の配当予想は前期比5.00円増配の70.00円(中間期末35.00円、期末35.00円)としている。なお2025年3月期は最終損失計上となる見込みだが、中国子会社2社の解散及び清算処理に伴う特別損失計上による一過性のものであり、2026年3月期以降の業績拡大や資本収益性改善が見込まれることから、一層の株主還元強化を推進するため、前期比増配予想とした。今後も業績拡大に伴って株主還元が一段と強化されることが期待できると弊社では考えている。


行政とも協働し、サステナビリティ経営を推進

3. サステナビリティ経営
同社は経営理念に「優秀な製品による社会への貢献」を掲げ、サステナビリティ経営を推進している。事業面では、安心・安全性の向上と燃費効率向上を両立させる新製品の開発に取り組み、2024年11月には世界初のハイブリッドラフター「SR-250HV」(ハイブリッド式ラフテレーンクレーン)の受注を開始した。中期経営計画で掲げているSDGs、環境配慮型機種の第1弾として本製品の製造・販売により環境保全の一翼を担っていく。

また2023年2月にはサステナビリティ委員会を設置、2023年5月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、同社ホームページにESGに関する活動状況やデータなどを紹介する「サステナビリティサイト」を開設した。2023年7月には、本社が所在する東京都品川区が地域企業と協働し、子どもたちへのキャリア教育支援や地域貢献などによってまちづくりを推進する「しながわCSR推進協議会」の発足理念に賛同し、入会した。2024年11月には能登半島地震復興支援として、日本航空大学校石川(現在は東京都青梅市の仮校舎)に万能トラックローダーを無償で提供した。


中国事業の見直しはポジティブ要因、次期中期経営計画に注目

4. 弊社の視点
同社は現在の中期経営計画の期間(2023年3月期~2025年3月期)を、徹底した収益性改善施策の推進によって利益を回復するステージと位置付けて、売上高よりも利益を優先した販売戦略を推進している。2025年3月期は売上高・営業利益ともに当初計画に届かない見込みだが、これは中国事業見直し等の一過性要因が大きく影響しているためであり、2026年3月期以降の業績拡大や資本収益性改善に寄与することを勘案すれば、むしろポジティブ要因であると弊社では評価している。今後は次期中期経営計画による拡販戦略、インドを中心とする新たなグローバル展開戦略、売価改善・高付加価値製品拡販・原価低減を中心とする収益重視戦略に加え、株主還元強化や資本収益性改善などに注目したいと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

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配信元: フィスコ
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