フリューのニュース
【QAあり】フリュー、世界観ビジネスの好調が牽引し3Q決算で過去最高の売上高を更新 通期計画の営業利益を達成
INDEX
三嶋隆氏(以下、三嶋):フリュー株式会社代表取締役社長の三嶋です。よろしくお願いいたします。
それでは、当社の2024年3月期第3四半期の決算説明を始めます。本日お話しする内容は、スライドに記載のとおりです。
会社沿革
三嶋:会社概要です。今回初めてお聞きの方もいるため、会社の沿革からご説明します。当社はエンターテインメント分野で多角的に事業を展開しており、2015年に東証一部へ上場しています。
当社のスタートはオムロン株式会社からで、1997年にエンタテインメント分野の新規事業として開始しました。オムロンには「SINIC(サイニック)理論」という未来予測理論があります。社会に必要とされる事業を行うためには、未来の社会を予測する必要があるという考えのもと、エンタテインメントビジネスがスタートしました。
みなさま、最近物欲がなくなったと思いませんか? 社会は物欲の世界から精神的な欲求の世界へ、急速に変わっていっています。その世界に対応するために新しいビジネスを立ち上げたのが、当時のオムロンです。
当時は大きく2つのビジネスが立ち上がりました。1つはエンタテインメント、もう1つはヘルスケアです。当社は、そのうちのエンタテインメント分野に参入しています。
1998年には、当時大流行していたプリントシール機事業に参入しました。さらに2001年には、「iモード」に代表されるモバイルコンテンツが大流行していたことから、モバイルコンテンツ事業にも参入しています。
2002年には、プリントシールを購入される業務用ゲーム事業者と販売ルートが同じであることから、クレーンゲームの景品を扱うプライズ事業に参入しました。その後、会社分割法で子会社オムロンエンタテインメントとして独立した後、2007年にフリュー株式会社が発足しています。
スライドには「マネジメント・バイアウト」と記載していますが、当時、当社には約100人の社員がおり、実は100人の社員全員が出資しています。したがって、詳しく言えば「マネジメント・アンド・エンプロイ・バイアウト」ということで、全社員が出資し、モチベーション高くスタートしたビジネスでした。
2009年にはゲーム事業に参入し、2015年に東証一部へ上場しました。2021年には株式会社CODESHAREとの合弁でオルドット株式会社を設立し、新たにBtoCのアパレルeコマースを始めました。翌年にオルドット株式会社の全株を取得し、100パーセント子会社にしています。
同じく2022年には、東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、プライム市場に移行しています。当社は、このような経緯で発展してきました。
増井麻里子氏(以下、増井):オムロン社の新規事業としてスタートされたとのことですが、その時にはすでにプリントシール機のことが頭にあったのでしょうか? それとも、何かきっかけがあったのでしょうか? また、マネジメント・アンド・エンプロイ・バイアウトが起こった背景についても教えてください。
三嶋:オムロンでの立ち上げ時には、プリントシール機のことは想定していませんでした。当時のミッションは「エンタテインメント分野で新規事業を立ち上げなさい。その中でどんな事業でもいいから、あなたたちの好きな事業かつオムロンに技術的なバックがある事業を見つけなさい」というもので、それを探していました。
その中で、プリントシール機は当時最も流行しており、なおかつオムロンには「画像認識技術」という特別な技術があったため、これらを組み合わせてスタートしたのがプリントシール機事業です。
増井:なるほど。それでは、その部署ありきというかたちで立ち上げられたのですね。
三嶋:おっしゃるとおりです。
2つ目の質問についてです。当時、私はマネジメントの一員として参加しており、先代の社長である田坂と「どのような資本構造にしたらよいのか」を議論していました。
一般の会社であれば、ごく一部の、例えば5名ぐらいの取締役が株式を所有しコントロールすると思います。しかし、田坂と私は、やはり全社員のモチベーションが大事だと考えました。そのモチベーションを上げるためには、みなに株を持ってもらったほうが良いという考えのもと、全社員にマネジメント・アンド・エンプロイ・バイアウトを実施した経緯があります。
増井:モチベーションアップが大きな理由だったということですね。
企業理念
三嶋:企業理念は「人々のこころを豊かで幸せにする良質なエンタテインメントを創出する!」です。
私たちは社員ひとりひとりが指針を持って行動し、個人の 「やりたいこと」と「できること」、会社の「やらねばならないこと」を重ね合わせていくことで、社員と会社の成⻑をめざします。
事業の深化を続けると共に、事業の進化に挑戦し続け、人々のこころを豊かで幸せにする良質なエンタテインメントを創出します。
「人々のこころを豊かで幸せにする」ことを最初のスタートとし、社会が求めている「精神的欲求の充足」を、エンタテイメントを通してみなさまに届けたいという考えが、この企業理念のもとになっています。
2024年3月期より開示セグメントを変更
三嶋:2024年3月期より開示セグメントを変更しました。概要としては、従来の4セグメントから3セグメントに変更しています。目的は、中期ビジョンに合わせて戦略を明確にするためです。
キャラクタ・マーチャンダイジング事業は、世界観ビジネスへの名称変更のみで事業内容は変わっていません。
プリントシール事業とコンテンツ・メディア事業は、再編を行いました。コンテンツ・メディア事業に含まれる、プリントシール画像保存サービス「ピクトリンク」、コンテンツサービス、レタッチソフトなどのプリントシール関連ビジネスをプリントシール事業と合体させ、ガールズトレンドビジネスという新しいセグメントを作っています。
また、それ以外のゲーム事業や新規事業を合わせ、フリューニュービジネスに変更しました。
2024年3月期からは、世界観ビジネス、ガールズトレンドビジネス、フリューニュービジネスの3セグメントで進めています。
24年3月期 3Q ハイライト
三嶋:2024年3月期第3四半期のハイライトです。まず連結全社では、第3四半期決算で過去最高の売上高を更新しました。累計では、みなさまに発表していた通期計画の営業利益をすでに達成しています。
内訳をご説明します。世界観ビジネスは過去最高の売上を更新し、全社の増収増益に寄与しました。ガールズトレンドビジネスは売上利益ともに横ばいではあるものの、当四半期のみで営業利益11億円をたたき出しており、安定収益に貢献しています。
フリューニュービジネスは、家庭用ゲーム・アニメが好調に進展しました。こちらは投資フェーズの事業が集まるところですが、その赤字を大きく圧縮しています。
荒井沙織氏(以下、荒井):ガールズトレンドビジネスについて、「売上は横ばい」という表記にはなっていますが、御社の土台となる最も安定したセグメントだと捉えてよろしいでしょうか?
三嶋:おっしゃるとおりです。先ほどもお伝えしたように、こちらは四半期の営業利益を11億円も出すビジネスのため、非常に安定していると言えます。毎年、高校に入学する女子高生が新規顧客としてどんどんと流入しています。そちらをきっちりと獲得し、今後も安定的にビジネスを伸ばしていきます。
通期業績予想の修正
三嶋:通期業績予想の修正についてです。世界観ビジネスの好調と固定費の改善により、利益を上方修正しました。通期での売上高は、420億円と過去最高を見込んでいます。
営業利益、経常利益はともに39億円と、当初の見通しである33億円から6億円プラスとなっています。過去最高レベルの利益を出すという水準で、今期は非常に好調に推移すると見通しています。
増井:スライド下部には「固定費の改善」という言葉がいくつか並んでいますが、こちらは具体的にどのような改革を実施されたのでしょうか?
三嶋:大きく貢献した例をいくつか挙げます。今期大きく売上を伸ばしているキャラクタ・マーチャンダイジングにおいては、いろいろな展示会に出展しています。
そのような出展時には大きなブースを作るため、通常、広告代理店に丸投げすると数千万円という非常に大きなお金が展示会ごとにかかってしまいます。
しかしながら、当社にはプリントシールという独特の武器があります。そちらを利用し、例えばキャラクターとの合成写真が撮れるプリントシール機を置いて集客につなげ、展示会の費用を半減させるという取り組みを行いました。これにより、固定費を大幅に圧縮することができています。
増井:なるほど。展示会というのは、かなりお金がかかるものですよね。
三嶋:おっしゃるとおりです。
株主還元 配当予想の修正
三嶋:株主還元と配当予想の修正についてです。2024年3月期の1株あたりの配当金は、前期の38円から1円増配し、39円を予定しています。当社は継続的に増配できる企業を目指しています。
24年3月期 3Q 連結概要
三嶋:2024年3月期第3四半期の決算概要です。世界観ビジネスの好調により、増収増益となっています。
24年3月期 3Q 世界観ビジネス概要
三嶋:2024年3月期第3四半期の連結概要について、セグメントごとに詳しくご説明します。
まずは世界観ビジネスです。クレーンゲーム景品市場の好調と高価格帯ホビーの改善により、増収増益となっています。一方で、現在円安となっている為替の影響はアゲインストです。スライドには「150円の想定よりも約1億円の利益増」と記載していますが、今は若干円高に動いているため、利益増の方向で享受しています。
荒井:海外物販は、主にどの国で展開しているのでしょうか?
三嶋:世界観ビジネスの中で今後成長を見込んでいるのは、海外物販と国内の個人向けeコマースです。そのうち、海外物販では大きく2つの国をターゲットとしています。
1つ目は中国です。こちらは巨大なマーケットを持っていることに加え、日本文化との親和性も非常に高いため、まずは中国が全体の半分を占めると思っています。
2つ目はアメリカです。従来アメリカでは、アメコミのヒーローがキャラクターの中心でしたが、現在は日本のキャラクターも浸透してきています。動画配信サービスで日本のアニメを直接見ているアメリカ人も多くなってきており、マーケットはどんどんと拡大していくだろうと考え、市場を狙っています。
24年3月期 3Q ガールズトレンドビジネス概要
三嶋:ガールズトレンドビジネスの概要です。シール紙の値上げ比率の向上が続いており、収益は改善しています。一方で、その他コンテンツサービスが縮小しているため、売上利益はともに横ばいです。
プリントシールのプレイ料金は、従来の400円から500円に上がっています。新規商品の投入とともに、500円でプレイするマシーンの数が増えており、その比率が徐々に大きくなってきています。
売上利益ともに横ばいで、安定的に収益を出しています。
24年3月期 3Q フリューニュービジネス概要
三嶋:フリューニュービジネスの概要です。家庭用ゲームソフト、アニメが好調に推移しているため、増収し、赤字が圧縮しています。特に、アニメ『ゆるキャン△』が大人気です。
昨年売上を大きく伸ばした映画の放映が今年はなかったものの、キャラクタ・マーチャンダイジングでのロイヤリティ収入が安定的に入ってくるビジネスとなっています。
増井:こちらは、主にDVDや配信による収益だと思っていたのですが、ロイヤリティの割合もけっこうあるのでしょうか?
三嶋:おっしゃるとおりです。従来のビジネスモデルでは、基本的にDVDの収益がメインでした。一方で、先ほどもご説明したように、今はサブスクリプションの動画配信サービスが大きく伸長しており、収益の中心は配信に移ってきています。
さらには、キャラクターが人気になると、そのあとにロイヤリティ収入も発生します。ですので、配信とロイヤリティ収入が収益の柱となります。
当期のプレイ回数とピクトリンク有料会員数の見通し
三嶋:当期のプレイ回数と「ピクトリンク」の有料会員数の見通しです。
プリントシール機のプレイ回数は、前年から横ばいの3,400万回を想定しています。一方で、「ピクトリンク」の有料会員数は、前年から若干ショートして148万人という想定です。大きくは動いていませんが、2つとも安定的な動きを見通しています。
事業の進捗と施策 世界観ビジネス
三嶋:事業の進捗と施策です。まず、世界観ビジネスについてご説明します。
クレーンゲームの進捗です。スライド右側の棒グラフは、マーケット全体がどのように動いたかを示しています。クレーンゲーム市場全体は、年率5パーセントで伸長していました。一方で、当社の伸びは年率32パーセントと、マーケットの伸びを大きく上回って推移しています。シェアを上げながら、このビジネスを大きく伸ばしているところです。
増井:クレーンゲームが好調だった要因はいろいろあるかと思います。例えば、インバウンドや海外展開などの影響があったのでしょうか?
三嶋:おっしゃるとおり、今はゲームセンターの店頭に、インバウンドの方が非常に多く集まっています。一方で、コロナ禍が明けたことで、ファミリー層、カップル層がゲームセンターの店頭に多く来店されるようになりました。顧客の来店数が向上することによって、売上が伸びてきています。
さらに、当社のシェアが上がった原因は、ファミリー層やカップル層が来ることにより、人気の中心がフィギュアからぬいぐるみに変わってきていることです。当社はかわいいぬいぐるみを作ることを得意としており、それを供給することによってシェアを大きく上げています。
増井:御社の高価格帯ホビーを拝見すると、そちらも強いイメージがあります。
三嶋:当初はかわいいぬいぐるみを中心に進めていました。マーケットとしては、クレーンゲーム景品は3分の1がお菓子、3分の1がフィギュア、3分の1がぬいぐるみです。フィギュアについても、あと3分の1のマーケットを狙えるため、力を入れています。
荒井:高価格帯ホビー、中価格帯ホビーというジャンルは、どのような区分けになっているのかを教えてください。
三嶋:高価格帯ホビーには、例えば100万円ぐらいの『エヴァンゲリオン』「綾波レイ」の等身大フィギュアなど、非常に高価格なものもあります。数万円から数百万円のレンジを高価格帯ホビーとしており、非常に目を引く一品です。お値段は非常に高いものの、そのキャラクターが大好きな方にとってはなくてはならないものとして、現在、売上を伸ばしています。
中価格帯ホビーは、1万円を少し切るくらい、数千円帯の商品です。手が届く価格で、キャラクターを精巧かつ精密に作っており、ある程度広い客層に展開する商品を用意しています。
また、我々はUFOキャッチャーの中に置く景品も作っており、もっとカジュアルな価格帯のものもあります。このように高価格帯、中価格帯、プライズと、大きく3つに分けて展開しています。
荒井:高価格帯ホビーが、予想以上に高価格でした。クオリティもかなり高いということですよね。
三嶋:高いですね。ファンの方には非常に喜んでもらっていると思います。
事業の進捗と施策 世界観ビジネス
三嶋:世界観ビジネスの海外物販です。
今、海外物販は若干踊り場を迎えています。アメリカの流通在庫がコロナ禍で過多になったことにより、受注が低調に推移している状況です。
アメリカでも新たな流通を開拓しながら、売上拡大を目指していきます。
事業の進捗と施策 ガールズトレンドビジネス
三嶋:ガールズトレンドビジネスについてです。スライド右側の折れ線グラフを見ると、収益が改善していることがわかります。
また、81パーセントと記載している部分は、1プレイあたり400円から500円に値上げしたことによって、収益性が上がってきていることを示しています。500円機種のプレイ割合を継続的に計測しており、直近では81パーセントが500円機種に切り替わっているため、収益性が大きく改善されてきています。
学生の春、夏、冬の長期休暇に合わせて新商品を出し続けているため、500円機種の比率がどんどんと上がり、500円のシール紙の比率も上がっています。
どのくらい収益に影響しているかというと、従来は平均売価として1枚あたり135円でゲームセンターに卸していたところが、今は172円ほどになっています。この差の粗利が享受できているという状況です。
事業の進捗と施策 ガールズトレンドビジネス
三嶋:「ピクトリンク」の有料会員数です。「ピクトリンク」は安定的に収益を生み出すビジネスのため、横ばいで推移しています。
一方で、収益性は改善しています。月額料金300円のスタンダード会員と、500円のプレミアム会員を用意していますが、スライドの折れ線グラフを見るとわかるとおり、プレミアム会員の比率がどんどんと伸びている状況です。
増井:「ピクトリンク」の売上を会員数で割ってみると、四半期で1人あたり1,000円強になると思います。今後は月額料金の値上げを実施されるのでしょうか? それとも、現在「中学生の登録無料」といったサービスを展開されているように、新規の会員登録を促すほうに力を入れているのでしょうか?
三嶋:月末会員のほか、当月内に入会してすぐに退会された方も課金対象となっています。ですので、割り算をする時にはさらに大きな数字になっていますが、その数字は非公開にしているため、今回は公表を控えさせていただきました。
値上げについては、今の「ピクトリンク」には、プリントシールで撮った画像保存サービスに加えて、スマホで撮った画像を保存するサービスもつけ加えているのですが、その容量制限をなくして、大きくしていこうと思っています。
今は300円会員、500円会員のみですが、今後はさらに収益性を上げていきたいと考えており、そのキーはフォトストレージにあると思っています。
増井:有料会員は、ほとんどが高校生ですか?
三嶋:年齢を横軸に置くと、富士山のような形に正規分布しています。頂上は21歳で、実は高校生より上の方が多い状況です。
荒井:大学生くらいの方が多いのですね。
三嶋:おっしゃるとおりです。今後の我々の事業戦略に「ライフタイムバリューの最大化」が入っているため、今後は上の年齢層の方により滞留していただき、会員数を伸ばしていきたいと考えています。
事業の進捗と施策 フリューニュービジネス
三嶋:フリューニュービジネスについてです。先ほどご説明したように、家庭用ゲームソフトは2023年11月に発売した新タイトル『MODEL Debut3 #nicola(モデルデビュー3 ニコラ)』が非常に好調に推移しています。
ゲームアプリのほうも、既存のゲームに加えて、新たに推し活ゲーム『廻らぬ星のステラリウム』を製作しています。こちらは来期にローンチを予定しており、順調に開発を進めています。
中期ビジョン 目指す経営指標と定量目標
三嶋:中期ビジョンにおいて目指す経営指標と定量目標をご説明します。
我々の目指す経営指標は、ROE15パーセント以上です。株主のみなさまにもきちんと還元しながら、収益性を上げていきます。2027年度までに売上高600億円、営業利益60億円を目指していきます。
中期ビジョン 基本方針
三嶋:基本方針についてです。事業を大きく3つに分けて進めています。
キャラクターを中心とした世界観ビジネスは当社の成長力を、プリントシールを中心としたガールズトレンドビジネスは当社の収益力を担っていきます。
そして、フリューニュービジネスでは当社の将来性を担って、1つの事業で100億円規模の事業を育てていきます。
その事業を支えるのが組織風土改革です。自律的なキャリアプランとモチベーション向上によって、個人の成長を促し、会社の成長を実現していきます。
ROE向上に対する考え方
三嶋:ROEに対する考え方です。当社では、ROE15パーセント以上を目指しています。この内訳として、収益性、資産効率性、財務レバレッジに因数分解し、それぞれの目標値を置いています。
株主還元策と経営指標
三嶋:株主還元と経営指標です。配当性向40パーセント、またはDOE5パーセントを参考指標として配当していきます。
先ほどもご説明したように、今年も1円増配の見込みです。安定的な増配企業を目指し、株主のみなさまの期待に応えるべく、今後も事業を成長させ、株主還元を実施していきます。
増井:DOEを参考指標に入れているのは「安定的な配当」という意味合いがあるかと思います。これが1つの下限というイメージで捉えてよろしいのでしょうか?
三嶋:収益や株価が上がり下がりする中で、あくまで参考指標として見ています。この参考指標をきちんとクリアしながら、急に上げたり下げたりするのではなく、バランスを見て安定的に還元していきたいと考えています。
質疑応答:プリントシール機のコラボ予定について
荒井:「『ポケモン』のプリントシール機が注目を集めていますが、『ポケモン』以外でも継続的に展開する予定はありますか?」というご質問です。
三嶋:企業の協力により、「ポケモン」コラボのプリントシール機が非常に人気となっています。また、当社ではキャラクタ・マーチャンダイジング事業を行っているため、さまざまなキャラクターの版元との接点があります。すでに発表していますが、世の中で非常に人気のある「ちいかわ」コラボのプリントシール機も出しています。
現在、「ポケモン」「ちいかわ」に続くものも続々と用意しているため、ぜひご期待ください。
質疑応答:流行を作り出すノウハウについて
増井:「流行り廃りに大きく影響を受ける事業だと思いますが、積極的に流行を作り出すノウハウは持っていますか?」というご質問です。
三嶋:ガールズトレンドビジネスと称しているとおり、確かに流行には敏感です。
流行をきちんとつかむために、当社では毎週会社に女子中学生、女子高生、女子大生を呼び、グループインタビューのかたちでヒアリングを行っています。
毎週実施するため、毎週必ず来てくれる人、たまに来てくれる人、ネット上でアンケートに答えてくれる人といったピラミッド型の「ガールズトレンドリーダーズ」という数千人規模の組織を作っています。
この組織とコミュニケーションをとることで、「今、何が流行っているのか」をつかむことができます。また、逆の流れとして、この組織に対し、当社がコミュニケーションをとることによって新たなトレンドを生み出すこともできます。
詳しいことはお話しできませんが、女子中学生、女子高生、女子大生の大きな組織を通して、市場とお話ししています。
荒井:大きな組織とコラボしているということですが、そのように大人数の協力を得られることはすごいと思います。参加している方々にメリットはあるのでしょうか?
三嶋:プリントシールは女子高生の文化です。そこに関与できる、もしくはプリントシールの次の機械の開発に関与できることは、彼女たちにとって非常にメリットがあります。
それから、お金の話になりますが、当社に来て、プリントシール機で遊んでもらうことで時給数千円となります。
荒井:それはうれしいですね。
三嶋:アルバイトとしても大変喜ばれています。また、次のトレンドやプリントシール機を作り出していく面でも、非常にご期待をいただいています。
荒井:トレンドを生み出す立ち位置にいるというステータスも生まれてきそうですね。
三嶋:おっしゃるとおりです。ピラミッド上位の方々には、非常に高いステータスがあります。
質疑応答:『ゆるキャン△』3期のキャラクターデザインの変更理由について
増井:「『ゆるキャン△』3期のキャラクターデザインは、なぜ変わったのでしょうか?」というご質問です。
三嶋:今回は原作に忠実にアニメを作りたいということで、そちらに基づき若干デザインが変わっています。
なぜ制作会社を固定せず、複数の会社とお付き合いしていくのかというと、当社はアニメ事業を『ゆるキャン△』のみの小さな事業には収めません。当社を支える第3のセグメント、フリューニュービジネスの1つとして、大きく育てたいと思っています。
そのためには、複数の制作会社と丁寧に付き合いながら、ラインを着実に押さえていかなければ、大きなビジネスとして成り立ちません。したがって、1社に集中せず、さまざまな制作会社とともに事業をどんどんと大きくしていきたいと考え、新たな制作会社との取引も開始しています。
増井:回答できる範囲で教えてください。確か『ゆるキャン△』の原作者の方は性別などを公表されておらず、出身が浜松であるという情報しか出ていないかと思います。このような展開には、あまり関与されていないのでしょうか?
三嶋:そのようなことはなく、原作者の方にも製作委員会に関与していただいています。
例えば、昨年放映した映画『ゆるキャン△』は原作にはないお話ですが、原作者の方にもきちんと相談しながら進めています。当社では原作に対してきちんと敬意を払いながら、『ゆるキャン△』を一緒に大きく育てていきたいと思っています。
増井:十分なコミュニケーションをとられているのですね。
荒井:やはり原作を大切にすることは、ファンの方の想いも大切にすることにつながりますよね。
三嶋:おっしゃるとおりです。原作者の方を大切にする一方で、ファンの方に向けては来週、映画『ゆるキャン△』の先行上映会を開くほか、今年6月には山梨で『ゆるキャン△』のイベントを開く予定です。このように、多くの接点をもちながら、ファンの方も大切にしていきたいと思っています。
質疑応答:為替の考え方や円安の影響について
増井:為替の影響に関して、13ページの右下に「為替感応度は年間7,000万円」という記載がありました。こちらの為替の考え方や、円安がどのように影響しているかについて、もう少し詳しく教えてください。
三嶋:キャラクタ・マーチャンダイジング事業では、商品を中国の工場で生産し、米ドル建てで支払っています。当社は輸入サイドのため、円安の場合はマイナスの影響が出ます。
そのため、その仕入れ額を勘案すると、為替が1円動くごとに、年間7,000万円ほどの利益インパクトがあります。ただし、この7,000万円の利益インパクトに対し、毎年想定する社内レートを変えています。例えば、昨年は110円、今年は135円、現在出している業績見通しでは150円です。
現在の為替レートに合わせて価格転嫁やコストダウンするなど、当社では柔軟に対応していますが、急激な為替変動に対しては1円で約7,000万円の利益インパクトがあるという表現になっています。
増井:為替予約なども行うことで、緩和策を講じているということですね。
三嶋:おっしゃるとおりです。
質疑応答:今後の企業買収予定について
荒井:「オルドット株式会社の買収があったというお話がありました。今後広げていく分野にリンクするかと思いますが、企業の買収予定などがあれば、お話しできる範囲で教えてください」というご質問です。
三嶋:当社の事業戦略は、大きく2つあります。1つは、ライフタイムバリューの最大化です。先ほどお話しした、プリントシール機をきっかけに当社の会員になった女子中高生の方には、高齢者になっても、ずっと会員でいていただきたいと思っています。
今回買収したオルドット社は、20代女性向けのD2Cアパレル会社です。女子高校生の後の世代を対象としているため、ライフタイムバリューの最大化の一環として、戦略に基づき、eコマースの買収を行いました。
同じように、キャラクタ・マーチャンダイジング事業にも「世界に広げていきたい」「BtoCのeコマースで大きくしていきたい」という基本戦略があります。
この基本戦略に基づいて考えると、例えば海外企業の買収や、eコマースのサイト買収などは大きな戦略の中に含まれます。そのため、M&Aに関しては、大きな戦略の中で確実に合致するならば、機動的に実行していきたいと考えています。
荒井:そのあたりは、徐々に広げていくイメージでしょうか?
三嶋:おっしゃるとおり、どんどんと広がっていきます。
質疑応答:ガールズトレンドビジネスにおける施策のアイデアについて
増井:「ガールズトレンドビジネスで、高年齢層への訴求が課題だとお話しされていました。『ピクトリンク』で保存した画像をアバター化し、ゲーム内でバーチャルに活用したり、世界観ビジネス内のキャラクターと自分の画像をリンクさせるなど、施策のアイデアがあれば教えてください」というご質問です。
三嶋:私のアイデアよりもすごいアイデアをお伝えいただき、ありがとうございます。ぜひ当社の企画担当にも、そのアイデアを伝えたいと思います。
おっしゃるとおり、プリントシールの魅力や付加価値のみでは、中学校や高校卒業以降の方への訴求力は次第に薄まっていきます。現在、プリントシール機での撮影に来る女子大生やOLの方々は大勢いますが、年齢を重ねるにつれてどんどんと減っていく傾向があります。
したがって、新しい価値を加えていかなければなりません。その価値のベースは、やはり写真であると考えています。つまり、「写真をどのように提供するか」というところが、工夫のポイントです。
ご質問のとおり、生成AIを使えばアバターを作ることができます。実は、そのような研究も社内で進めています。例えば、生成AI「Stable Diffusion」を使うと、韓国メイク風の顔立ちや、中国のサイボーグメイク風に変えられます。
おそらくご存知かと思いますが、実は最新のトレンドに変えることは簡単です。それは、当社がAIという最新技術を使いこなしているからであり、この技術をアバターに展開することも可能だと考えています。
また、年齢層が上がっていくと、例えば20歳になると成人式の写真が、結婚式ではウェディングフォトがあります。当社はそれらのレタッチソフトにも進出していきます。
成人式の写真を少しかわいくしたり、ウェディングフォトの二の腕を少し細くしたり、そのようなところを工夫しながら、年齢層が上の方にも満足していただける写真ビジネスを展開していきたいと考えています。
荒井:終活において、遺影の写真などを綺麗に撮ることがトレンドとして増えていると思いますが、そのような層にまで伸ばしていくことは考えていますか?
三嶋:もちろんあります。先日、その領域の会社と面談している中では、遺影の写真などを事前に用意することはやはりなかなか難しいようでした。現時点である写真を、いかにかわいく写して出すのか、ということも課題になっていると思われます。
プリントシールで培った当社の技術を遺影の写真にも利用していただくことで、ビジネスを伸ばしていきたいと思っています。
質疑応答:ゲームアプリの製作体制について
増井:「ゲームアプリの製作は外注されていますか?」というご質問です。
三嶋:複数名のエンジニアを社内に確保しており、スマホ用のゲームアプリを内製しています。
なぜ内製できるかというと、まず、3Dを駆使した大きく開発費がかかる重たいゲームアプリではありません。女性向けの、以前は「乙女ゲーム」と呼ばれていたジャンルで、いわゆる紙芝居に近い内容のため、基本的には内製で作り上げています。
キャラクターデザインとシナリオがキーになるため、そちらは工夫を凝らしながら、推し活に対応できるように製作しています。
増井:『恋愛幕末カレシ』などですね。私も遊んでいますが、そこまで3Dではないものの非常に絵が綺麗で、世界観が表れているイメージがあります。
三嶋:ありがとうございます。
荒井:コスト面では、外注と内製のどちらが良いのでしょうか?
三嶋:それぞれにメリットとデメリットがあり、外注すると高くなる部分もあります。
今回の場合は、スピードを重視したソフトウェアの開発である上、当社の大きな強みであるキャラクターデザインやシナリオもあるため、内製を考えています。外注すれば一概に安くなるわけではないため、各ソフトが何を大事にするかによって選んでいる状況です。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業にご回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:3つのセグメントに変更された事による効能について詳しく教えてください。
回答:プリントシール関連事業とクレーンゲーム景品を含むキャラクタマーチャンダイジング事業の2軸とそれ以外とわけることで中期戦略を明確にしました。
<質問2>
質問:今後5年の売り上げ見込みについて教えてください。
回答:2028年3月期で600億円を目指しています。
<質問3>
質問:世界観ビジネスにおけるクレーンゲームは同業他社との競争が厳しいものとみていますが、なぜ御社はそこで勝ち組となれているのでしょうか? その背景や要因を教えてください。
回答:クレーンゲーム景品についてはカテゴリー戦略(エバーグリーン系やコア系、アーティスト系など)により多種多様なキャラクターを商品化しました。その中でも弊社の強みであるぬいぐるみと世間のヒットキャラの相性の良さが数字として貢献しました。
<質問4>
質問:海外と日本で人気のあるキャラクターなどに違いはあるのでしょうか?
回答:国によって大きく異なるのですが、中国では初音ミクが人気です。北米では週刊少年ジャンプの作品が人気です。
<質問5>
質問:海外では、中国とアメリカを重視しているとのことですが、アメリカは景気が強い一方で、中国は景気減速傾向にあると言われています。中国ビジネスの今後の見通しはどのように予測されていますか?
回答:中国の景気減速はあるものの、中国フィギュアビジネスの見通しとしては2極化すると判断しております。中国向けフィギュア等でまだ工夫や改善の余地がありますので弊社には伸びしろがあると判断しています。
<質問6>
質問:高価格帯の購入割合というのは国内と国外の割合はどのような状況でしょうか? またその売り上げの推移は従来の想定比より伸長しているイメージでしょうか?
回答:国内・海外は5:5になります。従来の想定とほぼ同水準で伸長しています。
<質問7>
質問:スタンダード会員とプレミアム会員の違いは何ですか?
回答:スタンダード会員はプリントシール機1回撮影時のプリがすべて画像取得できます。プレミアム会員はスタンダード会員の権利に加え、落書き前の画像を取得することができます。利用方法としてはSNS等に利用することが想定されています。
<質問8>
質問:利益の変動要因を教えてください。特に、2018年、2021年、2023年の減少要因を教えてください。
回答:2018年3月期はゲーム事業で15億円の赤字、2021年3月期はコロナショックによるプリントシール関連ビジネス赤字、2023年3月期は急激な円安による為替影響による業績低迷が要因です。
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