220円
エスクロー・エージェント・ジャパンのニュース
■業績動向
1. 2021年12月期の業績概要
サイバーリンクス<3683>の2021年12月期の連結業績は、売上高13,241百万円(前期比3.6%増)、営業利益945百万円(同2.2%増)、経常利益958百万円(同0.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益645百万円(同0.1%増)となり、2期連続で過去最高益を達成した。
経常利益は前期比で微増であったが、トラスト分野における新サービス取得の研究開発費等を吸収しての増益であり、内容は好調であったと言える。セグメント別では、流通クラウド事業は、卸売業向けのEDIサービス「クラウドEDI-Platform」や、小売業向けEDIサービス「BXNOAH」、棚割システム「棚POWER」シリーズ等クラウドサービスの提供が拡大したことで定常収入が着実に増加したことに加え、ソフトウェア償却費も減少したことから利益率が向上し、増収増益となった。官公庁クラウド事業は、防災行政無線デジタル化工事等の特需が終了したことから減収減益となったが、想定の範囲内である。新たにセグメント分けされたトラスト事業は、事業化の加速を担い、新サービスの開発や取得など積極的な研究開発投資を実施したことから損失幅が拡大した。モバイルネットワーク事業は、前期にコロナ禍に伴う営業時間短縮等の影響で落ち込んだ端末販売台数が回復し、増収増益となった。
経常利益(前期比7百万円増)の増減要因を分析すると、流通クラウド事業は251百万円の増益と全体をけん引した。内訳は収入増(主に定常収入の拡大)による増益158百万円、ソフトウェア償却費減少による増益71百万円、販管費等の費用減による増益21百万円であった。官公庁クラウド事業は37百万円の減益であったが、防災行政無線デジタル化工事等の特需の反動による減益37百万円などによる。トラスト事業は271百万円の減益であったが、引き続き新サービス開発に注力したことで研究開発費が増加したことによる。このうち120百万円は新サービス取得費用であった。モバイルネットワーク事業は32百万円の増益であったが、コロナ禍の影響を受けた前期から端末販売台数が回復したことによる。また全社関連で31百万円の増益となったが、本部費用を含めた各種経費の減少が主要因となる。
2. セグメント別概要
各セグメントの状況は以下のとおりである。
(1) 流通クラウド事業
セグメント売上高は前期比6.9%増の4,021百万円、定常収入は同4.1%増の3,315百万円、セグメント利益は同80.1%増の565百万円となった。定常収入が着実に増加したこと及びソフトウェア償却費の減少により収益性が大きく改善し、セグメント利益率は前期の8.3%から14.1%へ大きく上昇した。
卸売業務向けEDIサービス「クラウドEDI-Platform」や小売業向けEDIサービス「BXNOAH」、棚割システム「棚POWER」シリーズ等の提供拡大により定常収入が伸長し、増収となった。費用面では、流通業界における商談のDXを実現する企業間プラットフォーム「C2Platform」の新機能開発等にかかる研究開発費が増加した一方、中大規模向け「@rms基幹」開発の一段落に伴いソフトウェア償却費が減少した結果、セグメント利益は増益となり、セグメント利益率も大きく改善した。
トピックとしては、凸版印刷<7911>と2021年5月に流通DX分野で業務提携した。凸版印刷が提供する販促支援システムと同社の「C2Platform」を連携させ、商談から営業企画・販促までをシームレスにつなぐことで小売業における業務効率化・データ利活用を加速させる。すぐに業績に直結するものではないが、2022年12月期以降に「C2Platform」の拡販に寄与すると思われる。
(2) 官公庁クラウド事業
セグメント売上高は前期比1.3%減の6,159百万円、セグメント利益は同5.9%減の596百万円となった。防災行政無線デジタル化工事やGIGAスクール関連案件などの特需が第1四半期(2021年1月~3月)でおおむね終了し、第2四半期以降は軟調となったことから通期では減収減益であったものの、想定内である。一方で、防災情報マルチメディア配信サービスのリリースに向けた取り組みや校務クラウドサービス(Clarinet)の新規受注獲得などに加え、今後の成長に向けた領域拡大に注力した。
トピックとしては、防災情報マルチメディア配信サービス「Open Link for まちあっぷ!」の実証実験を2021年4月より和歌山県広川町と開始し、12月に完了した。これまで防災行政無線放送のみで配信されていた防災情報を、メールやSNS等複数のメディアに情報配信するサービスで、実証結果に基づき拡販を図る計画だ。また、行政における窓口業務と電子申請の長所を持つ新たなオンライン行政手続きサービス「Web窓口サービス」の開発を始めた(詳細は後述)。
(3) トラスト事業
セグメント売上高は前期比556.6%増の95百万円、セグメント損失は349百万円(前期は78百万円の損失)となった。タイムスタンプ対応ワークフロー「TsunAG」の導入により増収となった。一方で、マイナンバーカードをベースとした新たなトラストサービス開発のため人員増強を図ったこと加え、ブロックチェーン技術を利用した証明書発行サービス「CloudCerts」※を2021年12月に取得するなど、大胆な研究開発投資を実行したことから、損失幅が拡大した。なお、セグメント損失349百万円のうち、120百万円は新サービス取得による研究開発費となる。
※証明書や書類をブロックチェーン上に記録することにより、信頼性が高く、低コスト、ペーパーレスに寄与する。
トピックとしては、不動産取引決済デジタル化に向けたエスクロー・エージェント・ジャパン<6093>との業務提携(2021年5月)に野村不動産ソリューションズ(株)が参画した。2022年4月実現に向け、共同研究は順調に推移しているようだ。このほか、同社の電子委任状サービス「マイナトラスト電子委任状」が、政府の電子調達ポータル及び政府電子調達(GEPS)に採用され、2021年8月から稼働開始している。
(4) モバイルネットワーク事業
セグメント売上高は前期比7.3%増の2,964百万円、セグメント利益は同9.4%増の381百万円となった。コロナ禍に伴う緊急事態宣言発出を受け、2020年4月から5月にかけてドコモショップの営業時間短縮及び業務縮小の措置を講じた前期と比較し端末販売台数が回復した結果、増収増益となった。ただし2021年12月期下期後半は、世界的な半導体不足の影響による端末在庫不足等により端末販売台数が低調に推移し、苦戦を強いられた。
トピックとしては、「やさしいドコモ」のコンセプトの下、地域の人々が快適に過ごせる店舗とすることを目的に、2021年9月にドコモショップ田辺店を新店舗に移転した。このほか、ドコモショップで低価格プラン「OCNモバイルONE」の取り扱いを2021年10月に開始した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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1. 2021年12月期の業績概要
サイバーリンクス<3683>の2021年12月期の連結業績は、売上高13,241百万円(前期比3.6%増)、営業利益945百万円(同2.2%増)、経常利益958百万円(同0.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益645百万円(同0.1%増)となり、2期連続で過去最高益を達成した。
経常利益は前期比で微増であったが、トラスト分野における新サービス取得の研究開発費等を吸収しての増益であり、内容は好調であったと言える。セグメント別では、流通クラウド事業は、卸売業向けのEDIサービス「クラウドEDI-Platform」や、小売業向けEDIサービス「BXNOAH」、棚割システム「棚POWER」シリーズ等クラウドサービスの提供が拡大したことで定常収入が着実に増加したことに加え、ソフトウェア償却費も減少したことから利益率が向上し、増収増益となった。官公庁クラウド事業は、防災行政無線デジタル化工事等の特需が終了したことから減収減益となったが、想定の範囲内である。新たにセグメント分けされたトラスト事業は、事業化の加速を担い、新サービスの開発や取得など積極的な研究開発投資を実施したことから損失幅が拡大した。モバイルネットワーク事業は、前期にコロナ禍に伴う営業時間短縮等の影響で落ち込んだ端末販売台数が回復し、増収増益となった。
経常利益(前期比7百万円増)の増減要因を分析すると、流通クラウド事業は251百万円の増益と全体をけん引した。内訳は収入増(主に定常収入の拡大)による増益158百万円、ソフトウェア償却費減少による増益71百万円、販管費等の費用減による増益21百万円であった。官公庁クラウド事業は37百万円の減益であったが、防災行政無線デジタル化工事等の特需の反動による減益37百万円などによる。トラスト事業は271百万円の減益であったが、引き続き新サービス開発に注力したことで研究開発費が増加したことによる。このうち120百万円は新サービス取得費用であった。モバイルネットワーク事業は32百万円の増益であったが、コロナ禍の影響を受けた前期から端末販売台数が回復したことによる。また全社関連で31百万円の増益となったが、本部費用を含めた各種経費の減少が主要因となる。
2. セグメント別概要
各セグメントの状況は以下のとおりである。
(1) 流通クラウド事業
セグメント売上高は前期比6.9%増の4,021百万円、定常収入は同4.1%増の3,315百万円、セグメント利益は同80.1%増の565百万円となった。定常収入が着実に増加したこと及びソフトウェア償却費の減少により収益性が大きく改善し、セグメント利益率は前期の8.3%から14.1%へ大きく上昇した。
卸売業務向けEDIサービス「クラウドEDI-Platform」や小売業向けEDIサービス「BXNOAH」、棚割システム「棚POWER」シリーズ等の提供拡大により定常収入が伸長し、増収となった。費用面では、流通業界における商談のDXを実現する企業間プラットフォーム「C2Platform」の新機能開発等にかかる研究開発費が増加した一方、中大規模向け「@rms基幹」開発の一段落に伴いソフトウェア償却費が減少した結果、セグメント利益は増益となり、セグメント利益率も大きく改善した。
トピックとしては、凸版印刷<7911>と2021年5月に流通DX分野で業務提携した。凸版印刷が提供する販促支援システムと同社の「C2Platform」を連携させ、商談から営業企画・販促までをシームレスにつなぐことで小売業における業務効率化・データ利活用を加速させる。すぐに業績に直結するものではないが、2022年12月期以降に「C2Platform」の拡販に寄与すると思われる。
(2) 官公庁クラウド事業
セグメント売上高は前期比1.3%減の6,159百万円、セグメント利益は同5.9%減の596百万円となった。防災行政無線デジタル化工事やGIGAスクール関連案件などの特需が第1四半期(2021年1月~3月)でおおむね終了し、第2四半期以降は軟調となったことから通期では減収減益であったものの、想定内である。一方で、防災情報マルチメディア配信サービスのリリースに向けた取り組みや校務クラウドサービス(Clarinet)の新規受注獲得などに加え、今後の成長に向けた領域拡大に注力した。
トピックとしては、防災情報マルチメディア配信サービス「Open Link for まちあっぷ!」の実証実験を2021年4月より和歌山県広川町と開始し、12月に完了した。これまで防災行政無線放送のみで配信されていた防災情報を、メールやSNS等複数のメディアに情報配信するサービスで、実証結果に基づき拡販を図る計画だ。また、行政における窓口業務と電子申請の長所を持つ新たなオンライン行政手続きサービス「Web窓口サービス」の開発を始めた(詳細は後述)。
(3) トラスト事業
セグメント売上高は前期比556.6%増の95百万円、セグメント損失は349百万円(前期は78百万円の損失)となった。タイムスタンプ対応ワークフロー「TsunAG」の導入により増収となった。一方で、マイナンバーカードをベースとした新たなトラストサービス開発のため人員増強を図ったこと加え、ブロックチェーン技術を利用した証明書発行サービス「CloudCerts」※を2021年12月に取得するなど、大胆な研究開発投資を実行したことから、損失幅が拡大した。なお、セグメント損失349百万円のうち、120百万円は新サービス取得による研究開発費となる。
※証明書や書類をブロックチェーン上に記録することにより、信頼性が高く、低コスト、ペーパーレスに寄与する。
トピックとしては、不動産取引決済デジタル化に向けたエスクロー・エージェント・ジャパン<6093>との業務提携(2021年5月)に野村不動産ソリューションズ(株)が参画した。2022年4月実現に向け、共同研究は順調に推移しているようだ。このほか、同社の電子委任状サービス「マイナトラスト電子委任状」が、政府の電子調達ポータル及び政府電子調達(GEPS)に採用され、2021年8月から稼働開始している。
(4) モバイルネットワーク事業
セグメント売上高は前期比7.3%増の2,964百万円、セグメント利益は同9.4%増の381百万円となった。コロナ禍に伴う緊急事態宣言発出を受け、2020年4月から5月にかけてドコモショップの営業時間短縮及び業務縮小の措置を講じた前期と比較し端末販売台数が回復した結果、増収増益となった。ただし2021年12月期下期後半は、世界的な半導体不足の影響による端末在庫不足等により端末販売台数が低調に推移し、苦戦を強いられた。
トピックとしては、「やさしいドコモ」のコンセプトの下、地域の人々が快適に過ごせる店舗とすることを目的に、2021年9月にドコモショップ田辺店を新店舗に移転した。このほか、ドコモショップで低価格プラン「OCNモバイルONE」の取り扱いを2021年10月に開始した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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