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【QAあり】オートサーバー、外部環境悪化も、売上高は前年比12%増で着地 「ASNET」会員獲得・利用促進の営業施策が奏功

投稿:2024/08/19 19:00

2024年12月期第2四半期決算説明

上栁隆裕氏:本日は株式会社オートサーバー、2024年12月期第2四半期の決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。執行役員経営企画室長の上栁です。

本日は、第2四半期にかけての当社を取り巻く外部環境、当社の業績をご説明します。あわせて、事業概要や成長戦略、直近の取り組みをご説明します。

それでは説明会を始めます。よろしくお願いします。

2024年12月期 第2四半期決算ダイジェスト①

第2四半期の決算概要です。2024年上半期は、売上高32億4,800万円、経常利益13億7,300万円、純利益8億5,300万円となりました。

売上高については、外部環境が横ばいで推移する中でも、事業サービスポートフォリオがプラスに働いたことにより、前年比プラス12パーセントとなりました。計画比ではプラス4.1パーセント、通期計画に対する進捗率は53.7パーセントとなっています。

経常利益については、サービス構成がプラスに働いたと述べたとおり、主要2サービスのうち、収益性の高い「ASワンプラ」の需要が高かったことが大きな押し上げ要因となり、前年比プラス28.8パーセント、計画比でもプラス22.4パーセント、通期計画に対する進捗率は65パーセントとなっています。

この結果、今年度上期における利益高は、前年比プラス30パーセント近い結果となり、通期計画に対する進捗率は64.1パーセントとなっています。

2024年12月期 第2四半期決算ダイジェスト②

業績について振り返ります。「ASNET(エーエスネット)」全体の取引台数は、会員獲得が順調であったこと、EC化ニーズを取り込んだことにより、取引台数は12万1,072台、前年比5,084台アップとなりました。

サービスごとに見てみます。

「オークション代行」サービスについては、「ASNET」に掲載したオークション出品データが前年比で11.6パーセントダウン、つまりオークション会場で出品された中古車が11.6パーセント減少するなど、厳しい外部環境にありました。これにより価格が高騰し、仕入れも困難になっていたことが、影響を及ぼしたと思われます。この結果、「オークション代行」サービスの取引台数は6万7,633台、前年比8,153台ダウン、マイナス10.8パーセントとなりました。

「ASワンプラ」サービスについては、中古車価格が上昇した状況において利用意向が高まったこと、オークションでの仕入れが困難となった影響が波及し、取引台数は5万3,439台、前年比1万3,237台アップ、プラス32.9パーセントとなりました。

中古車流通がほぼ横ばいであったものの、当社の取引実績は順調に増加していることから、「中古車流通に対するASNET関与率」は、3.6パーセントに成長させることができています。

事業環境

続いて、当社を取り巻く外部環境や、今後の見通しです。ASNET事業を取り巻く外部環境について振り返ります。

中古車流通は、新車の販売台数と非常に密接な関係がありますので、まずは新車販売台数について振り返ります。スライドでは水色のラインで示しています。

2024年の新車供給は、昨年末に発生した一部のメーカーにおける不正事件や、生産停止の影響を受けて、1月から3月は大きく前年割れすることとなりました。生産が再開された4月以降は回復しましたが、6月には前年割れする等、不安定な状況となっています。

このような状況は、中古車流通にも影響を及ぼしています。スライドのブルーのラインをご覧ください。2023年は、中古車はアフターコロナの回復の動きが続いていましたが、2024年は、3月以降は一転して前年割れしていることがわかると思います。

そして、価格は台数の減少と相反して上昇していることがわかるかと思います。こちらはグレーの点線で示しています。

中古車価格は、2023年後半は安定的に推移していましたが、2024年に入ってからは再び価格が高騰しています。背景には、中古車の台数が不足していることに加え、旺盛な輸出需要により価格が押し上げられていることが理由として考えられます。

(参考)中古車業者間売買の直近の状況

中古車の業者間マーケットの状況をもう少し詳しく見てみます。スライドは、中古車のオークション出品台数を示したグラフです。2024年に入ってからは、前年割れが続いていることがわかると思います。

そして出品の減少と相反して、価格が上昇していることが、こちらのグラフでも読み取ることができます。

サービス別取引台数

このような環境下において、主要2サービスの取引台数がどのように推移したのかをグラフに示しています。グレーのラインは、「過去の平均値」です。薄いグリーン、オレンジのラインは、「2023年の台数」です。そして、濃いグリーン、レッドのラインは、「2024年の台数」です。

当社は、事業見通しを作成する際、過去の平均値を参照しながら計画を作成しています。したがって、グラフのグレーの線をベンチマークの1つとして見ていただきますと、当社の見通しに対する理解が深まるかと思います。

まず、「オークション代行」サービスについて見てみます。昨年は、コロナ禍からの回復の過程において、オークション取引が活況であったことから、通年で過去平均を上回っていました。2024年はオークション出品台数の減少に伴って取引台数は減少しています。ただし徐々に下落幅は縮小しており、6月度は平年を上回っていることがわかると思います。

次に「ASワンプラ」サービスです。2023年は、第1四半期はコロナ禍の影響が残っていたものの、第2四半期以降は過去平均を上回って推移しました。そして2024年に入ると、過去平均・前年を大きく上回って推移していることがわかると思います。

売上高・利益

財務成績についてご説明します。第1四半期から引き続いて、高収益サービスである「ASワンプラ」サービスが牽引したこともあり、売上高、利益ともに高い実績を達成することができています。

第1四半期、第2四半期の合計では、売上高は、前年同期比12パーセントアップの32億4,800万円、経常利益は28.8パーセントアップの13億7,300万円、売上高に対する経常利益率は42.3パーセントという結果となっています。

貸借対照表の概要

上半期時点での、貸借対照表(以下、BS)です。特段の変動要因はないため、収益がそのまま現金資産として加算されており、引き続き堅実な財務構成となっています。

BSにおいて、1点補足します。未収入金・未払金の金額が増えており、これによって資産合計や負債合計が大きく増えています。これは「立替金需要」により生じているものであり、財務的な影響はほとんどありません。

これについて、さらに補足します。「ASNET」会員が車両を落札した場合、当社は車両代金等をオークション会場や「ASワンプラ」サービスの出品者に立て替え払いした後、落札者から支払いを受けることがあり、その間、一時的な立て替えを行います。

中間期末においては、たまたま暦や曜日の影響や、取引台数、中古車価格が上昇している等の理由により、2023年末よりも立替金が多くなっていました。これが、未収入金・未払金の金額が増えている理由です。

なお立替金として必要と見込まれる金額については、取引台数の増加や、中古車価格の高騰により、年々増加する傾向にありますが、当社の財務状況は、引き続き、余裕をもって対応できる構成となっています。

2024年12月期 業績見通し

今期の業績見通しについてご説明します。今期の通期業績予想に対し、第2四半期終了時点では、売上高の進捗率は53.7パーセント、経常利益の進捗率は65パーセントであり、足元の業績は極めて順調です。ただし、現時点では、2024年2月13日に開示した「通期の見通し」は、変更していません。

これについて、補足します。まず、ご留意いただきたいのは、「下期にかけて業績が悪化する」あるいは「計画割れを起こす」といった見通しを立てているわけではない、という点です。「それでは、なぜ通期の見通しを変更しないのか?」というと、それは次の理由によります。

まず、外部環境のスライドでも述べたとおり、新車の供給や中古車流通には不安定さが増しています。上期の好業績の要因は、オークション取引の台数が減少した中で相場価格が上昇するなどして、「ASワンプラ」サービスの利用が増えたことによるものであり、年間を通じてこのような状況が続くかどうかは不透明です。そのため、外部環境についても、もう少し注視する必要がある、と考えています。

次に、足元の業績自体は極めて順調であるものの、着地見通しを試算すると、修正が必要な水準には達していません。

この2つの理由により、現時点では通期の見通しを据え置いています。もっとも、こういった外部環境の見通しが明らかになり、修正が必要となった場合には、速やかに公表する予定としています。

株主還元

当社の株主還元についてご説明します。当社は、配当性向30パーセントという基本方針のもと、安定的な配当の実施を目指すことを株主への還元施策としています。

2023年度の配当額は、通常配56円、上場記念配5円、あわせて61円の配当を実施しました。

今期は、現時点の業績見通しである「純利益13億3,000万円」をベースに、配当性向30パーセントの方針に基づいて、1株当たり57円の配当を実施する予定でいます。

なお、この予定額についても、業績見通しと同様に、今後、変更が生じた場合には、速やかに公表することとしています。

沿革・概要

ここからは、当社の会社概要、事業内容をご説明します。当社がどのような事業を行っているのか、その特徴はどのようなものなのか、といった点をあらためてご説明します。

当社の会社概要と沿革です。当社は、1997年に愛知県豊橋市にて創業しました。当時、普及が始まっていたインターネットにチャンスを見出し、「情報配信により中古車の流通をもっと円滑にし、在庫回転率を上げることにより、世の中の中古車販売業者に貢献したい」という想いで始めたのが創業時のストーリーです。

その後、プラットフォーム上に掲載する中古車情報を増やし、全国的にユーザー層を広げ、事業を成長させてきました。

一方で、より良いサービスづくりを行っていくためには、情報技術を発展させることが必要です。また、さまざまな中古車流通事業者との提携のためには営業活動が欠かせません。こういったことを実行していくため、「より多くの有能な人材を確保したい」「企業の知名度や信頼性を上げたい」、こういった狙いから昨年9月に上場しました。

現在は東京本社、愛知県豊橋市の本部を中心に、全国9営業拠点、1海外開発拠点、社員約120名で、事業を運営しています。

事業内容

当社の事業をご紹介します。当社は、BtoB中古車ECプラットフォーム「ASNET」を運営する、単一セグメント事業です。

「ASNET」を通じて、売りやすい、買いやすい、安心便利な中古車流通サービスを提供し、中古車の流通をスムーズに、もっと活発に行い、「ASNET」をご利用いただく会員さまや、社会全般に貢献することが、当社の使命と考えています。

「ASNET」には主に2つのサービスがあり、1つ目は「オークション代行」サービス、2つ目は「ASワンプラ」サービスとなっています。この他に、さまざまな付帯サービスを行っています。また、スマートフォンアプリも開発・提供しています。

オークション代行

「オークション代行」サービスの概要をご説明します。「オークション代行」サービスとは、日本国内146箇所の中古車オークション会場とデータ連携し、「ASNET」の会員になれば、オークション会場の会員にならなくても、オークション取引に参加できる、というサービスです。

2023年において、国内の中古車オークションに出品される情報のうち約96パーセントの情報を受信し、「ASNET」に掲載しています。つまり、当社の「オークション代行」サービスを使えば、国内の中古車オークションのほとんどすべてを落札することができます。

同様のサービスを行っている事業者は当社の他にも何社か存在しますが、当社の「オークション代行」サービスは、国内最大手オークション事業者である株式会社ユー・エス・エスと、唯一連携していることが特徴です。そのため、多くのオークション情報をカバーできていることがこのサービスの強みです。

ASワンプラ

次に、「ASワンプラ」サービスについてご説明します。「ASワンプラ」サービスとは、当社が主体となって「ASNET」上にて運営している中古車BtoBマーケットのことです。

こちらは、中古車オークション会場で一般的に行われている「セリ方式」による取引方法を採用せず、「『固定価格』=ワンプライスで取引」できる点が特徴となっています。

中古車のオークション取引は、オークションの前日に出品情報が公開され、オークション当日しか入札するチャンスがありません。つまり、車選びをする時間が限られています。また「セリ方式」でどんどん値段が競り上がっていきます。

そのため、どちらかというとプロ向けのマーケットであり、中古車の仕入れに慣れていない方、例えば整備板金業者やガソリンスタンド事業者にとっては、使いづらい面もあります。その他にも、仕入れ価格も事前に決めることができませんので、小売商談がしづらい点があります。

一方、「ASワンプラ」サービスは、あらかじめ取引価格が固定されています。また、出品情報も、長い時間、公開されていますので、じっくりと車を選ぶことができます。そのため、お客さまからオーダーをいただいた後に、仕入れをすることができます。つまり、中古車販売を行うにあたって、無在庫販売ができることになります。

また、売り手も、これまでは小売とオークションでの在庫処分だけだった販路に、小売をしながら同時並行で業販できる、という販路拡大ができることとなります。

このような中古車事業者のニーズと結びついたことで、「ASワンプラ」はユーザーの支持をいただいており、取引実績は、2007年から2023年にかけて約22倍にまで成長しています。

同業他社も数社がサービス参入しましたが、当社は、EC取引の特性にあわせ、出品車両の品質基準とクレーム制度を取引規約に規定するなど、安心して取引できるルールをいち早く確立し、業界内において最大規模のマーケットを築いています。

ASNET収益構造

ASNET事業の主な収益源は、ご説明した2つのサービスにおいて、取引の都度、会員からいただく手数料です。それ以外のコスト、例えば入会金や月会費などは不要としています。

スライドにおいてモデルケースでの収益をご説明します。

「オークション代行」サービスにおいては、ASNET会員による落札の都度、1台当たり約2万円の手数料を受領し、このうち約1万円をオークション会場に支払います。したがって、1台当たりの利益は1万円となります。なお、この金額は、あるオークション会場を利用した場合のケースであり、実際の手数料額についてはオークション会場ごとに異なります。

一方、「ASワンプラ」サービスにおいては、ASNET会員間の売買の都度、買い手からは2万円、売り手からも1万5,000円の手数料を受領します。そのため、1台当たりの利益は3万5,000円となります。このように、「ASワンプラ」サービスは1台当たりの収益が非常に高いサービスとなっています。

サービス別売上単価

サービス別の手数料の状況についてご説明します。「オークション代行」サービスにおいては、2023年3月に手数料改定を実施しました。これは提携するオークション会場と当社との契約単価が引き上げられたことに伴い、当社も「ASNET」手数料を改定したものです。

その後も提携する別のオークション会場との契約単価変更に伴い、何度か「ASNET」手数料の改定を行っています。そのため、手数料単価は上昇傾向にあります。今期については、第1四半期の売上単価は「2万1,570円/台」、第2四半期は「2万1,544円/台」となっています。

次に、「ASワンプラ」サービスにおいては、売り手・買い手双方から手数料を受領する高収益サービスであり、高い手数料単価水準を維持しています。第1四半期の売上単価は「2万9,094円/台」、第2四半期は「2万9,372円/台」となっています。こちらについては、現時点では価格改定等の予定はありません。

ASNETの強み

「ASNET」には、さまざまな特徴や強みがありますが、ユーザー層から見た「強み」をご紹介します。「ASNET」には、非常に多くの事業者が加入しており、なおかつ、業種は多岐にわたっていることが、特徴であると共に「強み」を生み出しています。

1997年の創業以来、当社はコツコツと会員集めを続けてきました。国内には、15万強の中古車関連事業所が存在する、と言われていますが、そのうち8万近い会員を獲得できています。今後も、会員さまを集める努力を続けていきたいと考えています。

「ASNET」会員さまの業種は多種多様ですが、特に整備板金業者、ガソリンスタンド事業者や、月1台から2台程度の中古車を販売している小規模販売業者といった顧客を多数確保しています。

そして、その取引規模も、毎月10台以上の取引をする大手ユーザーもいれば、1年に1台しか買わない小口ユーザーなど、さまざまです。毎年入れ替わりはあるものの、平均して40パーセント近くのユーザーが、「稼働ユーザー」として、毎年1台以上の取引をしていただいています。

また、落札台数ごとのユーザー割合を見ると、スライドのとおり、月間取引台数が2台以下のライトユーザーが約80パーセントを占めている点も特徴です。ライトユーザーが多いということは、特定の大口ユーザーの利用状況に業績が左右されることなく、安定的な事業運営が可能であるとも言えます。

安定かつ持続的なASNET事業の成長

ユーザー数が安定的に増えてきたこと、小口ユーザーが多いことが、当社の業績が安定的に成長できている理由です。

スライドのとおり、当社の業績は、基本的に「ASNET」会員が増え、それら会員さまに利用していただくことで堅実に伸びています。そして取引台数が増えることで、手数料収入が増えることとなり、売上高も伸ばしていることがわかります。

外部環境の影響を受け、一時的には、成長トレンドよりもプラスに働くこともあれば、マイナスに働くこともありますが、あくまでも一時的なインパクトとなっています。

例えば、2020年から2021年にかけては、コロナ禍の影響がプラスに働きました。反対に2022年は取引台数や売上高が減少していますが、これはいずれもコロナ禍の影響により新車の生産が止まってしまったこと、中古車流通が一時的に変動したことが理由と思われます。

安定した業績の理由 = 2つのサービスが補完しあう

中古車流通や価格が変動する中で、当社の業績が安定的に成長できている理由の1つは、当社の「サービス構成」にあります。

こちらのスライドは、「オークション代行」と「ASワンプラ」の取引実績を、前年比で示したものです。ご覧のとおり、2つのグラフの増減は逆相関にあります。つまり、「オークション代行」が盛んな時は「ASワンプラ」が減少し、逆に「ASワンプラ」の取引が盛んな時は「オークション代行」が減少するということです。

「なぜこのようなことになるのか?」というと、その理由として考えられるのは、中古車販売店が車を仕入れる時は、その時の「オークション相場」が目安になるという背景です。

「ASワンプラ」の売り手は、その時のオークション相場で車を仕入れた後に、少し時間をおいて「ASワンプラ」に出品することがよくあります。この結果、中古車価格の動きによって2つのサービスの使い分けが起こります。

例えば、オークション価格が上昇している局面では、相対的に「ASワンプラ」の価格が安く見えます。なぜなら「ASワンプラ」に出品される車は、価格が安かった時のオークション相場で仕入れられた車だからです。そのため、「ASワンプラ」の取引が増えます。

反対に、オークション相場が下落している局面では、相対的に「ASワンプラ」の価格が高く見えます。そのため、「オークション代行」の取引が増えます。

このように、中古車相場が変動したとしても、2つのサービスのいずれかを使っていただける状況になっています。これにより安定的な業績を残せることが、当社の強みの1つとなっています。

当社のポジショニング

こちらのスライドには、当社が独自に作成した中古車関連マーケットのプレイヤーマップを記載しています。こちらを用いて、当社のポジションについてご説明します。なお、掲載しているプレイヤーは、上場企業に限定していますが、中古車マーケットにはこれ以外にも非常に多数のプレイヤーがいることをご承知おきください。

中古車関連マーケットには、小売業者や整備業者、ソフトウェア業者、輸送業者など、さまざまな分野の事業者が存在します。この中で当社は、BtoB取引におけるプラットフォームの提供者という分野に属しています。

この分野では、当社を含めた3事業者が上場しています。ただし、それぞれの会社を比較すると、当社のようなネット上でのEC取引プラットフォームを運営する会社、物理的なオークション会場を設置してオークションを運営する会社など、さまざまな立ち位置の企業が存在し、それぞれに行っている事業は大きく異なります。

また、当社が展開している2つのサービス、「オークション代行」サービスと「ASワンプラ」サービスについては、参入障壁は非常に高い、つまり新規参入が現れるリスクは低いと考えています。なぜなら、中古車のBtoBマーケットにおいて、プラットフォーマーとなるには、かなりの時間とコストを要するからです。

社会課題と成長可能性

続いて、成長戦略についてご説明します。まず、成長戦略を語る前に、中古車流通を取り巻く社会課題や、それを踏まえた当社の成長機会をご説明します。

今、世の中では「物流の2024年問題」と言われる、物流業界の働き方改革に伴って物流キャパ不足が発生しています。中古車流通においてもこれは例外ではありません。今後は、売り手から買い手へダイレクトに中古車を輸送する、シンプルな流通が求められるようになると思われます。

また、マーケット内でのプレイヤーの動きを見ると、例えばガソリンスタンド事業者が、これまでの燃料販売以外に収益を求めることがますます増えています。その他、中古車の個人リース販売や、カーシェアなどの新たな所有形態が増加していくことに伴って、中古車取扱事業に参入する新たなプレイヤーも一層増えることが予想されます。

一方、中古車業界内においても、2024年10月から始まるOBD車検により、「検査の高度化・情報化」が進むと見込まれています。これにより、中古車のEC取引の不安が解消され、EC化が進む可能性があるのではないかと考えています。

さらに、社会全体を見れば、国民の実質収入が伸び悩む中で、新車の価格が高騰しています。これに伴い、中古車マーケット自体が拡大する可能性もあります。このように、中古車をめぐるマーケット状況は、当社にとって、追い風になると期待しています。

成長戦略

成長戦略について、中短期戦略と長期戦略をご説明します。中短期においては、「取引台数の拡大」と「手数料単価のUP」による収益拡大を計画しています。

長期戦略においては、現在、国内の中古車流通における「ASNET」の関与率は3パーセント台ですので、これを伸ばす余地は非常に大きいと考えています。

また、さらに長期的な展望としては、新たな取引サービスの開発や、海外展開の検討も目指すことになるかと思います。

ASNETの存在感は着実に高まっている

先ほどご説明した「国内の中古車流通におけるASNETの関与率」について詳しく見てみます。国内では、およそ年間に600万台から700万台の中古車が流通していると見られています。この台数は小売だけではなく、業者間売買や海外への輸出等を含めて、国土交通省に「登録」が行われた台数をカウントしたものです。

スライドのグラフは、この台数において、「ASNET」がどの程度の関与をしているかを示したものです。中古車の流通は、自動車税の年度更新となる3月や4月に多くなる、といった変動はあります。

また、「ASNET」の利用実績も、「オークション代行」サービスが伸びる時もあれば、「ASワンプラ」サービスが伸びる時もありますが、「ASNET」全体を見れば、中古車流通において「ASNET」が関与した率は、一貫して伸びていることがわかります。

このように、中古車流通において、「ASNET」の存在感は着実に高まっています。

ASNET事業の成長余地

なぜ当社がASNET事業の成長に経営資源を投下するのかを、成長余地の点からご説明します。先ほどのスライドで、中古車流通において「ASNET」での取引が関与した率は着実に伸びており、2023年の年間割合は3.55パーセントという結果になりました。

一方、「国内におけるBtoB取引において、EC取引がどれくらい普及しているか?」という調査結果が、経済産業省からレポートされています。その内容は、2022年において、取引金額は420兆円以上、比率は37.5パーセントというものでした。

この調査結果などを参考にすると、国内の中古車市場において、BtoB取引のEC化は、まだまだ伸びると思っています。そして、そのEC化を担うものとして、当社のASNET事業の成長チャンスは大きいと考えています。

当社は、ASNET事業を成長させるために、さまざまな「新サービス」の展開や、新機能の開発を行っています。当社は「ASNET」単一セグメントの企業ではありますが、「ASNET」上に新機能を開発したり、新たなサービスを提供したりすることで、まだまだこのセグメントの拡大ができると考えています。

これが、当社が中短期戦略として、ASNET事業の拡大を掲げる理由となります。

ASNET事業成長デザイン

こちらのスライドは、「ASNET」の事業成長のイメージをまとめたものとなります。「ASNET」は中古車のプラットフォームであり、売り手と買い手を集めることが、事業成長の重要な手段となります。

売り手については、「ASワンプラ」での販売メリットを提案するといった営業活動に加え、出品ツールの提供を行って、もっとカンタンに業販マーケットに情報精度の高い出品をできるようにすることが重要です。

私たちの「ASワンプラ」の売り手プレイヤーの中にも、「在庫している車両はたくさんある」「『ASワンプラ』にもっと出品したい、だけど人手が足りない」「出品データを作成する時間が足りない」、こういった理由で在庫の半分くらいしか「ASワンプラ」に出品できない中古車販売店がたくさんあります。

こういった方々の期待に応えるために、出品ツールの提供といった「ASNET」の機能改良は継続して行っていくつもりです。

一方、買い手については、「ASワンプラ」を使った無在庫販売の提案だけでなく、業販マーケットにある中古車をより探しやすくするための「ASNET」の改良や、無在庫販売を支援するためのファイナンスサービスの提供などを手掛けていきたいと考えています。

このように、「ASNET」の機能改良や、小売支援サービスなど、周辺サービスの拡充により、会員の利便性を向上させ、新規会員を獲得すると同時に、既存会員に持続的に利用してもらうことが「事業成長のキーポイント」となります。

今期の営業施策 進捗状況

先ほどご説明した事業成長の考え方をベースとして、今期の重点施策のうち、直近の取り組みをご説明します。スライドには今期の重点施策を記載していますが、このうち、「ASNETの魅力向上」として3つの取り組みをご紹介します。

営業施策の状況

1つ目は、「ASNET会員の小売支援」を強化する取り組みです。7月18日に開示しましたが、大手信販会社であるアプラス社さまとの提携により、「ASNET」から中古車ローンの審査までをワンストップ化するシステムの提供を開始しました。

当社のファイナンスサービスは、従来、ローンの紹介や送客等に留まっていましたが、今回はローン審査までをシステム化することにより、「ASNET」会員さまの小売業務を効率化するだけでなく、取り扱いローンの拡充などの狙いもあります。

2つ目は、会員獲得状況です。昨年末に約7.7万会員であった会員数について、当社は「今期中に8万会員を超える」ことを目標に営業活動を展開してきました。これらの活動により、7月の段階で、計画よりも5ヶ月前倒しで8万会員を達成することができました。当社は、今後も会員獲得活動を展開することとしています。

3つ目は、「オークション代行」サービスにおける新たなオークション会場との提携です。これまで沖縄地域における提携オークション会場はありませんでしたが、今回、初の提携を実現することができました。これにより、「オークション代行」サービスの接続会場は145箇所から146箇所へと拡大することとなります。

当社は、引き続き「ASNET」への掲載台数の拡大を目指すこととしています。

質疑応答:為替による影響について

「円安の動向から足元では円高になっていますが、御社の事業は為替によってどのような影響を受けますか?」というご質問です。

当社の事業は中長期的には為替の影響をさほど受けず、ニュートラルであると考えています。

仮に円安に振れた場合は当然輸出が増えますので、中古車需要が増えるという意味では私どもの事業にとってプラスです。それにより価格も上がります。ちょうど今年の足元がその状況にありますが、「ASワンプラ」の利用が増え、収益性に貢献すると思います。

しかし、これが行き過ぎてしまうと、今度は価格が上がりすぎて国内の小売需要が減少するという悪影響も考えられます。

一方、円高になった場合は相対的に輸出が減ります。輸出需要は減るのですが、国内の流通量が回復します。これにより、例えばオークションの流通台数が増え、当社のオークション代行サービスが増えることも考えられます。

また、価格が下がるとオークション代行サービスの利用が増えるため、収益的にはマイナスですが、取引台数的にはプラスになりますので、売上高や利益高は一定的に確保できると考えています。

質疑応答:「ASNET」の中長期的な成長について

「『ASNET』の関与率が4パーセントを超えるという説明がありましたが、中長期的にはどこまで伸ばせると考えていますか?」というご質問です。

正直に言いますと、どこまでというゴールはないと考えています。先ほど「ASNET」の成長にこだわると述べましたが、まずは10パーセント程度までは伸ばせるだろうと見込んで、国内での事業運営に特化していきたいと考えています。

その10パーセントをどのぐらいの年数で達成するのかは、正直なところなかなかはっきりと言うことはできません。しかしASNET関与率が徐々に伸びていますので、このトレンドをなるべく加速させたいと思っています。

そのためにこれまでも「ASNET」の使い勝手を良くしたり、会員さまを増やしたりする活動を行ってきましたし、これからも行っていきたいと考えています。

質疑応答:金利上昇の影響について

「金利が上がることになっていますが、どのような影響がありますか?」というご質問です。

ゼロ金利政策が解除され、「金利が上がる」あるいは「上がった途端に株価が下がったのでやはり上げない」など、今、いろいろなことが言われています。

しかし、金利が上がったとしても、足元で大幅に上がることは見込まれていないことから、私どもとしては中古車の流通にはほとんど影響がないと見ています。

将来的に金利が2パーセントや3パーセントまで上がれば、それはまた別の世界になってくるとは思うのですが、今言われているような0コンマ何パーセントという上昇幅であれば、金利だけの影響はさほどないだろうと思います。

しかし、例えば金利の上昇によって景気の悪化などが起こってくると、これは当社を含め中古車流通全体に影響を及ぼすだろうと考えられます。

質疑応答:上場による採用活動の変化について

「上場によって、採用活動に何か変化はありましたか?」というご質問です。

上場の目的の一つに、人材採用を掲げています。そのため、上期もいろいろな採用活動を行っていますが、上場してよかったと感じられるほどの影響はまだ出ていません。こちらについては長期的な目で見ていきたいと思っています。

ただし上場したことにより、「日経IR・個人投資家フェア」出展など、社会の目に触れる機会は確実に増えていますので、それが巡り巡って採用活動にも良い影響を及ぼすと思っています。

例えば、新卒採用であれば、学生本人だけでなく、その親御さんにも良い印象を持っていただくことができます。中途採用においてもオートサーバーの情報がより入手しやすくなり、変な会社ではないなとわかってもらえます。

このように、上場はフィルタリングをすり抜けるようなプラスの効果につながると考えています。まだ目で見える効果は出ていませんが、今後に期待している状況です。

上栁氏からのご挨拶

個別の取材やご質問は随時承っていますので、IR窓口にご質問やご意見をお寄せいただければ、私が責任を持って対応します。

それでは、以上で2024年12月期第2四半期決算説明会を終了します。本日はご視聴いただき、ありがとうございました。またの機会にお会いできることを願っています。

配信元: ログミーファイナンス
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