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ファンケルのニュース
*15:12JST ファンペップ Research Memo(2):抗体誘導ペプチド技術を用いて抗体医薬品の代替医薬品の開発に取り組む
■会社概要
1. 技術概要
ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科にて確立された機能性ペプチド※1のデザイン、創製、最適化の技術を実用化する目的で2013年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーである。社名のファンペップの由来は、機能(function)を持つペプチド(peptide)の可能性を追求し、新たな医薬品等の開発によって社会に貢献する企業になるとの想いを込めて名付けられたものである。同社の機能性ペプチドはヒト由来の抗菌ペプチド「AG30」※2を起源としており、安定性や製造コストの最適化に取り組むなかで現在の主要パイプラインの1つである「SR-0379」や抗体誘導ペプチドのキャリアとなる「AJP001」※3、抗菌及び消毒剤分野での需要が見込まれる抗菌ペプチドが開発されている。また、「AJP001」に標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープを組み合わせることで標的タンパク質の働きを阻害する抗体誘導ペプチドを作製し、医薬品としての開発を進めているほか、「AJP001」を短くした機能性ショートペプチド「OSK9」※4を用いたビジネスを美容・アンチエイジング分野で展開していくことにしている。なお、抗体誘導ペプチドは同社の登録商標となっている。
※1 ペプチドとはアミノ酸が2~50個程度つながった化合物の総称で、アミノ酸がさらに多くつながった化合物をタンパク質と呼ぶ。ペプチドのなかにはインスリン、グルカゴンなど、ホルモンとして体内の器官の働きを調整する情報伝達を担う物質もあり、特定の機能があるペプチドを人工的に合成したものと機能性ペプチドと呼び、医薬品としても開発されている。
※2 「AG30」はアミノ酸を30個つなげたペプチドで、血管新生作用や抗菌活性の機能を持つ。
※3 「AJP001」は抗体誘導ペプチドを作るためのキャリア(自己タンパク質に対して抗体を産生させる役割を持つ)となり、標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープと組み合わせることで、多様な抗体誘導ペプチドを作ることが可能となる。
※4 「OSK9」は、繊維芽細胞の増殖を促進し、ヒアルロン酸やコラーゲンの産生を促進する作用が確認されている。
抗体誘導ペプチドと抗体医薬品の違いについては、抗体医薬品が「体外」で製造した抗体で高い薬効が見込めるものの、製造コストや薬価が高額となっているのに対して、抗体誘導ペプチドは化学合成による大量生産が可能なため製造コストを低く抑えることができるほか、「体内」で免疫細胞が一定期間持続的に抗体を産生するため、薬効が長期間(数ヶ月間)持続する可能性のあることが優位点となる。即効性はないものの患者にとっては安価に治療でき、投与回数も少なくて済むといったメリットを享受できる。特に、製造コストについては抗体医薬品より低い水準に抑えることが可能になると見られ、患者負担や医療財政負担の面からもメリットは大きい。
また、抗体誘導ペプチドの競合技術との比較では、既存の生物由来のキャリア(高分子)が抱えている課題点を解消できることも、「AJP001」の優位点として挙げられる。生物由来の既存キャリアについては、反復投与時に効果が減弱する可能性があること(標的タンパク質よりもキャリアに対して抗体が産生されるリスクがある)、製造上の品質確保の難易度が高いこと(生物由来で高分子のため品質管理が難しく、また、キャリアとエピトープの制御も難しい)、副作用リスクがあること(アレルギーやアナフィラキシー等が生じる可能性)などが挙げられる。
知財戦略も進めており、「SR-0379」については日米、欧州の主要国で特許を取得しているほか、「FPP003」等のその他のパイプラインについてもそれぞれ日米、欧州の主要国で特許が成立または出願中となっている。なお、「AJP001」に関する特許は大阪大学が保有し、独占的使用権を大阪大学発ベンチャーのAAPが有しており、同社はAAPからサブライセンスを受ける格好となっていた。このため、同社は2022年10月にAAPを株式交換により完全子会社化し、知財戦略を強化した。抗体誘導ペプチドの開発品については「AJP001」の特許が含まれるため、ライセンス契約交渉において、同特許がサブライセンス契約の形となっているのは契約交渉面で好ましくなく、今回子会社化したことで契約交渉についてもスムーズに進む効果が期待される。
AAPは科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業大学発新産業創出プログラムに基づき、大阪大学の中神教授の研究成果であるAJP001及び機能性ショートペプチド群の実用化を図るために2016年4月に設立され、現在は、大手化粧品会社の高級化粧品に採用された実績があるアンチエイジング機能を持つ機能性ショートペプチド「OSK9」により事業展開している。同社はAAPを子会社化したことで、従来同社で行っていた創薬以外のビジネス(機能性ペプチドの化粧品分野等への販売業務等)を2022年12月にAAPに移管して事業効率を高めると同時に、創薬以外の事業を拡大していくことで創薬事業の開発費の一部を賄っていくことを目指している。
皮膚潰瘍治療薬で塩野義製薬とライセンス契約、乾癬治療薬で住友ファーマとオプション契約を締結
2. 会社沿革
同社は2013年に設立され、本格的に事業活動を始めたのは大阪大学との間で抗体誘導ペプチドの共同研究を開始した2015年に入ってからとなり、同年10月には塩野義製薬との間で機能性ペプチド「SR-0379」に関する全世界を対象としたライセンス契約を締結した。また、2016年9月から大日本住友製薬(現 住友ファーマ)と標的タンパク質IL-17Aに対する抗体誘導ペプチドの共同研究を開始したほか(2018年3月に開発コード「FPP003」としてオプション契約を締結)、2018年7月には塩野義製薬が「SR-0379」の皮膚潰瘍を適応症とする第2相臨床試験を国内で開始し、良好な結果を受けて同社が2021年6月より第3相臨床試験を開始した(2022年11月速報結果発表)。「FPP003」についても乾癬を適応症とする第1/2a相臨床試験を、2019年4月からオーストラリアで開始した(2023年2月速報結果発表)。直近では、2021年8月にメドレックスとマイクロニードル技術を用いた抗体誘導ペプチドの次世代製剤技術開発にかかる共同研究契約を締結したほか、2022年1月にはEPS創薬と中国での創薬事業の協業検討に合意したことを発表している。
また、創薬以外の分野として、化粧品や除菌スプレー等の成分の一部としてペプチド原薬の販売を行っている。具体例としては、2018年3月にファンケル<4921>が発売開始した「マイルドクレンジングシャンプー」で、特徴の1つとなっている「根活トリプル成分」の1つとして採用されたほか、2020年4月に(株)SMV JAPANが発売した「携帯アルコール除菌スプレー」等に採用されている。また、直近では2022年2月に次世代創傷用洗浄器の開発を目指し、ファインバブル技術のリーディングカンパニーである(株)サイエンスと共同開発契約を締結したほか、2022年12月にはAAPが(株)ASメディカルサポート及び(株)N3と幹細胞化粧品の共同開発で、また、2023年2月にはAAPが(株)サンルイ・インターナショナルとフェムテック化粧品の共同開発でそれぞれ契約を締結している。
なお、2020年12月に東京証券取引所マザーズ市場に株式上場を果たしており、2022年4月の市場区分見直しによりグロース市場に移行している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 技術概要
ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科にて確立された機能性ペプチド※1のデザイン、創製、最適化の技術を実用化する目的で2013年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーである。社名のファンペップの由来は、機能(function)を持つペプチド(peptide)の可能性を追求し、新たな医薬品等の開発によって社会に貢献する企業になるとの想いを込めて名付けられたものである。同社の機能性ペプチドはヒト由来の抗菌ペプチド「AG30」※2を起源としており、安定性や製造コストの最適化に取り組むなかで現在の主要パイプラインの1つである「SR-0379」や抗体誘導ペプチドのキャリアとなる「AJP001」※3、抗菌及び消毒剤分野での需要が見込まれる抗菌ペプチドが開発されている。また、「AJP001」に標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープを組み合わせることで標的タンパク質の働きを阻害する抗体誘導ペプチドを作製し、医薬品としての開発を進めているほか、「AJP001」を短くした機能性ショートペプチド「OSK9」※4を用いたビジネスを美容・アンチエイジング分野で展開していくことにしている。なお、抗体誘導ペプチドは同社の登録商標となっている。
※1 ペプチドとはアミノ酸が2~50個程度つながった化合物の総称で、アミノ酸がさらに多くつながった化合物をタンパク質と呼ぶ。ペプチドのなかにはインスリン、グルカゴンなど、ホルモンとして体内の器官の働きを調整する情報伝達を担う物質もあり、特定の機能があるペプチドを人工的に合成したものと機能性ペプチドと呼び、医薬品としても開発されている。
※2 「AG30」はアミノ酸を30個つなげたペプチドで、血管新生作用や抗菌活性の機能を持つ。
※3 「AJP001」は抗体誘導ペプチドを作るためのキャリア(自己タンパク質に対して抗体を産生させる役割を持つ)となり、標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープと組み合わせることで、多様な抗体誘導ペプチドを作ることが可能となる。
※4 「OSK9」は、繊維芽細胞の増殖を促進し、ヒアルロン酸やコラーゲンの産生を促進する作用が確認されている。
抗体誘導ペプチドと抗体医薬品の違いについては、抗体医薬品が「体外」で製造した抗体で高い薬効が見込めるものの、製造コストや薬価が高額となっているのに対して、抗体誘導ペプチドは化学合成による大量生産が可能なため製造コストを低く抑えることができるほか、「体内」で免疫細胞が一定期間持続的に抗体を産生するため、薬効が長期間(数ヶ月間)持続する可能性のあることが優位点となる。即効性はないものの患者にとっては安価に治療でき、投与回数も少なくて済むといったメリットを享受できる。特に、製造コストについては抗体医薬品より低い水準に抑えることが可能になると見られ、患者負担や医療財政負担の面からもメリットは大きい。
また、抗体誘導ペプチドの競合技術との比較では、既存の生物由来のキャリア(高分子)が抱えている課題点を解消できることも、「AJP001」の優位点として挙げられる。生物由来の既存キャリアについては、反復投与時に効果が減弱する可能性があること(標的タンパク質よりもキャリアに対して抗体が産生されるリスクがある)、製造上の品質確保の難易度が高いこと(生物由来で高分子のため品質管理が難しく、また、キャリアとエピトープの制御も難しい)、副作用リスクがあること(アレルギーやアナフィラキシー等が生じる可能性)などが挙げられる。
知財戦略も進めており、「SR-0379」については日米、欧州の主要国で特許を取得しているほか、「FPP003」等のその他のパイプラインについてもそれぞれ日米、欧州の主要国で特許が成立または出願中となっている。なお、「AJP001」に関する特許は大阪大学が保有し、独占的使用権を大阪大学発ベンチャーのAAPが有しており、同社はAAPからサブライセンスを受ける格好となっていた。このため、同社は2022年10月にAAPを株式交換により完全子会社化し、知財戦略を強化した。抗体誘導ペプチドの開発品については「AJP001」の特許が含まれるため、ライセンス契約交渉において、同特許がサブライセンス契約の形となっているのは契約交渉面で好ましくなく、今回子会社化したことで契約交渉についてもスムーズに進む効果が期待される。
AAPは科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業大学発新産業創出プログラムに基づき、大阪大学の中神教授の研究成果であるAJP001及び機能性ショートペプチド群の実用化を図るために2016年4月に設立され、現在は、大手化粧品会社の高級化粧品に採用された実績があるアンチエイジング機能を持つ機能性ショートペプチド「OSK9」により事業展開している。同社はAAPを子会社化したことで、従来同社で行っていた創薬以外のビジネス(機能性ペプチドの化粧品分野等への販売業務等)を2022年12月にAAPに移管して事業効率を高めると同時に、創薬以外の事業を拡大していくことで創薬事業の開発費の一部を賄っていくことを目指している。
皮膚潰瘍治療薬で塩野義製薬とライセンス契約、乾癬治療薬で住友ファーマとオプション契約を締結
2. 会社沿革
同社は2013年に設立され、本格的に事業活動を始めたのは大阪大学との間で抗体誘導ペプチドの共同研究を開始した2015年に入ってからとなり、同年10月には塩野義製薬との間で機能性ペプチド「SR-0379」に関する全世界を対象としたライセンス契約を締結した。また、2016年9月から大日本住友製薬(現 住友ファーマ)と標的タンパク質IL-17Aに対する抗体誘導ペプチドの共同研究を開始したほか(2018年3月に開発コード「FPP003」としてオプション契約を締結)、2018年7月には塩野義製薬が「SR-0379」の皮膚潰瘍を適応症とする第2相臨床試験を国内で開始し、良好な結果を受けて同社が2021年6月より第3相臨床試験を開始した(2022年11月速報結果発表)。「FPP003」についても乾癬を適応症とする第1/2a相臨床試験を、2019年4月からオーストラリアで開始した(2023年2月速報結果発表)。直近では、2021年8月にメドレックスとマイクロニードル技術を用いた抗体誘導ペプチドの次世代製剤技術開発にかかる共同研究契約を締結したほか、2022年1月にはEPS創薬と中国での創薬事業の協業検討に合意したことを発表している。
また、創薬以外の分野として、化粧品や除菌スプレー等の成分の一部としてペプチド原薬の販売を行っている。具体例としては、2018年3月にファンケル<4921>が発売開始した「マイルドクレンジングシャンプー」で、特徴の1つとなっている「根活トリプル成分」の1つとして採用されたほか、2020年4月に(株)SMV JAPANが発売した「携帯アルコール除菌スプレー」等に採用されている。また、直近では2022年2月に次世代創傷用洗浄器の開発を目指し、ファインバブル技術のリーディングカンパニーである(株)サイエンスと共同開発契約を締結したほか、2022年12月にはAAPが(株)ASメディカルサポート及び(株)N3と幹細胞化粧品の共同開発で、また、2023年2月にはAAPが(株)サンルイ・インターナショナルとフェムテック化粧品の共同開発でそれぞれ契約を締結している。
なお、2020年12月に東京証券取引所マザーズ市場に株式上場を果たしており、2022年4月の市場区分見直しによりグロース市場に移行している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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